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結界2


 姫であるレティシアと騎士団、騎士団長のスティファノと合流した俺達は一番大きな建物である王都ギルド本部に避難していた。

 

「バリケードを構築せよ!」

 

「はっ!」

 

 入ると同時に閂をかけると、さらにマッチョな騎士の皆さんが机やら椅子を窓や扉前に積み重ねて即席のバリケードを造る。

 

 ウァウゥゥゥゥ……。

 

 獲物に逃げられて悔しげなグールの呻き声が風に乗って聞こえてきたが、とりあえず一安心か。

 

 騎士達も疲労が噴き出したのか、床や適当な椅子に座って休ませている。

 

 現在、ギルドマスターの部屋をかりて話しているのは、スティファノとレティシアだ。

 

 レティシアはこの国の姫様だし、そのお付きでスティファノがいる形。

 

 俺とティアがテーブルを挟んでレティシアと向かい合っている。

 

 スティファノは窓の外を見やりながらアンデットの動きを警戒をしていた。

 

「それにしても、また助けられるとは本当に感謝する。勇者殿、ティア殿……マーリン殿はどちらに?」

 

「マーリンは帝国で留守番だ。今回はいないぞ」

 

「そ、そうですか……。いえ、あなた達が来てくださっただけでも千人――いや、万人力です! あの魔龍もアンデットも解決です!」

 

 いや、そんな万人の働きはしねぇよ? 期待されても困るよ?

 

 ジャバウォックを倒したら帰るよ?

 

 などと口が裂けても言えないので、俺は仕方なく話を進めた。

 

「その魔龍ってのは三頭龍だよな?」

 

「その通りです。帝国――空白地帯の方角から観測された莫大な魔力と亀裂。この二つと龍の出現のタイミングが同じ事からあれを我が国は滅獣と捉えております。勇者様」

 

 レティシアの話によれば、滅竜教会の突然な大規模な動きによって王国は混乱しており、突然現れたジャバウォックへの対応はまったくできなかった。

 

 ジャバウォックは王国へ近づきながら毒と思われる霧を撒き散らし、それを浴びたせいか、突然墓地に埋葬されていた人間がアンデットとして現れ、王都の一部を占拠。

 

 城壁に合わせて張られた結界内では大量のアンデットに強力なブラッドナイトなどが徘徊し、避難し損ねた民は全てアンデットと化したそうだ。

 

 霧の中で死ぬとアンデットして操られるらしい。

 

 さらにジャバウォックの復活と同時に王都にいる滅竜教会の信者の多くが昏睡状態や、まるで干からびたような不審死が大発生し、さらに彼らもアンデットとして王都で暴れているのだ。

 

 国王も、大臣や、城にいた多くの人間も同じアンデットと化しスティファノ達、滅竜教会に不信感を持つものや教徒ではない者だけ生き延びれたのでなんとか城を出てここまできたのだと。

 

 王都を逃げる内に運悪くブラッドナイトに見つかり、戦っている間にグールに囲まれてピンチだった時に俺達が来たそうだ。

 

 ジャバウォックは現在は滅竜教会の大聖堂におり、そこにはブラッドナイトやソウルイーターにリッチなど高位のアンデットが巣食っているらしいので手出しできない。

 

 よしんばできても今の戦力では返り討ち必至だ。

 

 ステファノはレベル38だが、他の兵士はレベル30。

 

 これでは、ブラッドナイト一体でも苦戦するだろう。

 

 そもそも、この世界でレベル差が10もあると、一対一で勝つのはかなり厳しいし。

 

「……これが私の知る情報です」

 

「なるほどな……。ジャバウォックの居場所がわかるのは助かったが、上位アンデットのおまけがあるのか」

 

 とんだおまけだ。

 

 過剰で不要なサービスはご遠慮願いたいもんだな。

 

 ジャバウォックだけでもとんでもないのに、そこに行くまでにどれだけ戦力が削られるのか考えなくない。

 

 太陽神の槍なら何百いようが一撃だが、あそこで使ってしまったしな……。

 

 権能無しでブラッドナイトと同格のアンデットの群れの突破とジャバウォックの討伐――――できるか?

 

「…………」

 

 俺の考えが顔に出ていたのか、レティシアとスティファノも苦々しい表情になっていく。

 

「なぁ、ティア。神龍力ならアンデットの群れを突破してジャバウォックを倒せるか?」

 

「それは可能じゃが、そうなるとお主一人で妾が来るまでジャバウォックと戦わなければならぬぞ?」

 

 なんだその不安そうな顔は……。

 

「俺一人じゃ無理ってか?」

 

 これでもユグドラシルだって倒してるんだ。

 

 対龍の奥義も使えるならそこそこ戦えると思うのだが……。

 

「傲るな。主は真の龍の力を侮っておるぞ。ジャバウォックが信者の生気を吸って肉体を取り戻した以上、かつての脅威と同等と見るべきじゃ」

 

 こいつ……見た目は幼女のくせに超常者みたいな眼差しで睨んできた。

 

「神の眷属の力か……。それほどかよ?」

 

「神代の力。常識で計れぬぞ?」

 

 神代の力か……俺の世界では都市三つを滅ぼしたり、島ひとつを水没させたり、7日7晩消えぬ火で平野を焼け野原にしたり、とどれも異能力でできる芸当ではなかった。

 

「………………」

 

 普段なら神殺し舐めんな!って啖呵を切るが、今はその神殺しの権能が使えない。

 

 SPはもう一割を切ってるのだ。通常の異能力で押せる生易しい相手でもない……。

 

 さて、どうするか……。


 

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