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勇者対勇者


 だが、進の目はユーリの動きを追っていた。

 

「こっちも先日より強くなってんだよ!」

 

 直後、進の身体は陽炎のようにユラリと揺らいだ。

 

 揺らぐ炎のようなオーラが身体を包んでいる。

 

 雷龍の羽衣よりも遥かに高密度で力強い。

 

 魔力――だが、人間のモノとは質が違うことにユーリは戦慄した。

 

 これはまるで――。

 

「滅龍奥義――神龍力――ドラゴンフォース」

 

 圧倒的な力が全身から漲っていく。

 

 世界の広がりを知覚できるような感覚の広がりとあらゆる能力での身体能力強化を遥かに越えた恩恵に少なからず高揚感が沸きだしてきた。

 

 これが神龍力かッ!

 

 振り向き様に放った拳とアスカロン。

 

 破壊の力を纏った二つがぶつかりあった瞬間、空間そのものが軋みをあげて二人を弾き飛ばす。

 

 ガリガリと靴底で大地を削りながら踏ん張った二人は即座に前に出た。

 

「雹牙!」

 

「戦技・風の太刀散華!」

 

 連続で放たれる風の刃が氷の礫を砕き散らし、まるでダイヤモンド出すとが舞うような幻想的な世界を描き出す。

 

「戦技・風の太刀突!」

 

 虚空をついたユーリの突きは弾丸のように離れた俺めがけて迫ってきた。

 

「滅龍の鉄槌!」

 

 俺は破壊の魔力を纏った拳で粉砕する。

 

「まだ……だぁ!」

 

 ユーリはアスカロンを大きく振りかぶった。

 

 また遠距離の斬擊か!

 

「滅龍の咆哮!」

 

「神技・神千切り咆!」

 

 ズドォォォォォォォォォ!


 轟音とともに土砂が舞い上がり、技のぶつかりあった場所にクレーターが生まれた。

 

「くそっ! クソッ!」

 

 切り札までもが相殺されたユーリの顔には焦燥と驚愕の色がありありと浮かび上がっていた。

 

「この魔力は――いったいッ!」

 

「これが龍の魔力だ!」

 

 そのまま大地を蹴って肉薄して接近戦へ持ち込む。

 

 それを嫌ったユーリは距離をとろうとバックステップしながら斬擊を放つが――。

 

「効かねぇよ!」

 

 それら全てを魔力を纏った拳で弾き飛ばす。

 

「このチート野郎がぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 圧倒的な差があった。

 

 数日で埋められないはずの差が。

 

 レベル150と言う普通の人間なら到達不可能な領域にいた。

 

 なのに――。

 

 目の前の男はそれの領域に易々と踏み込んできたのだ。

 

 土足で絶対不可侵の領域にズカズカとっ!!

 

 あってはならない!

 

 許すものかっ!

 

「ふざけるな! アスカロン!」

 

 激昂したユーリに呼応し、アスカロンから禍々しい魔力が吹き出していく。


「どれだけ魔力をあげようが、無駄だ。神龍力は全てを破壊する」

 

 もし、進が純血の龍種ならばアスカロンと特性の龍殺しで為すすべもなかったかもしれない。

 

 人間が龍の力を得たからこそ、ユーリの立つ土俵に立てたのだ。

 

「だまれぇぇぇ! 神技・聖天速!」

 

 直後にユーリの姿が俺の目の前から消えた。

 

 瞬間移動にも匹敵する速度。

 

 まず目視では捕らえられない。

 

 高速を超えた神速の領域だ。

 

 だが、進は異能力世界から来た存在。

 

 超速、瞬間移動の類いとの戦闘は慣れている。

 

 予知発動――。

 

 僅か一秒以下の先の未来を予測できる異能力だが、コンマ数秒で空間を渡る相手には極めて有効だ。

 

 だが、やはり演算の複雑さとさらにこの世界特有のSPの消費は割にあわんが。

 

「捕らえてるぞ!」

 

 進のカウンターが背後から斬りかかろうとしたユーリの顔面に突き刺さる。

 

「ふごっ!」

 

 無様な声をあげて吹き飛ばされたユーリだったが、転がりなから受け身をとってすぐに立ち上がった。

 

 その目は憎悪の炎で爛々とし、親の仇のように俺を睨んでいる。

 

「なんで……なんでだよ!! 俺は最強のはずなんだよぉぉぉ!」

 

 怒り狂いながら斬擊を飛ばしてくるが、軽く身体を揺らすだけでかわせる。

 

「俺はレベル150なんだぞ!! お前らなんかに敗けるはずがないんだよ!」

 

「はっ! どれだけレベルが高くてもそれだけだな。実力が伴っちゃいねぇよ」

 

 実際、ユーリのステータスは高いのだろう。

 

 レベルは俺の三倍近くある。

 

 だが、付いていける。

 

 ユーリ自身がその力を使いこなせていないのだろうかと、疑うほどだ。

 

「くそがぁぁぁぁ! 神技・聖天――」

 

 怒り狂って突っ込んでくるユーリだが、またあの神技は食らうつもりはない。

 

「泥沼!」

 

 ドクン、と大地が波打ち、ユーリの踏もうとしていた地面が液状へと変わった。

 

 ドボン! と盛大な音を立てて、ユーリは思い切り泥沼を踏み抜く。

 

「小細工をっ!」

 

「小細工でもないぞ? 面性操作、重力制御、土壌操作の三つの合わせ技だ。それなりの細工だ!」

 

 粘土の高い泥がユーリの足を絡めとり、一気に膝近くまで沈めた。

 

 しかも、重力を強めて逃げられないようにしている。

 

 普通ならこんな落とし穴にかかる相手じゃないだろうが、頭に血が昇れば、視野も狭くなるからな。

 

「畜生! 畜生ォォォォォ!」

 

 虚しく剣をふって鎖のように絡み付く泥を払っていたが、圧倒的な数に払いきれない。

 

「権能を使う必要はなさそうだな」

 

「殺す! 殺す! 殺してやるぅぅぅぅ!」

 

 呪詛の言葉を吐きながら、ユーリの身体はズボズボと底なし沼に沈んでいったのだった。

 


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