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戦場での休暇2


 戦士達の準備が着々と整いつつあるため、砦の方は慌ただしい雰囲気をしていて近づきずらい。

 

 なので、今日も俺とティアは敷地にいた。

 

「勇者様! 今日はなにするのー?」

 

「のー?」

 

「またクレープつくってよー!」

 

「美味しかったね!」

 

「うん!」

 

 昨日のクレープパーティーですっかり懐いた獣人と鬼人、蜥蜴人の子供がキャッキャッと集まってきた。

 

「今日はクレープは作らないぞ?」

 

 そんな戦場で食材をバンバン貰うわけにもいかないからな。

 

 あれから他の大人の亜人もクレープを食べに来て大行列になった。

 

 幸い、材料は快く提供してくれたので全員に振る舞えたが、とても疲れたのだ。

 

 てか、大人気だったなクレープ。

 

 いい息抜きを提供できたと思うからよしとしよう。

 

「さてさて今日はどうするか――ん?」

 

 カンカンカン!

 

 歩いている聞こえてきたのは金属がぶつかり合う音。

 

 音のほうへいくと、蜥蜴人の戦士と犬人の戦士が戦っているぞ。

 

 組手? 模擬戦か?

 

 簡易的な柵のリングの中央で二人の戦士が戦っていた。

 

「さすが、蜥蜴人の戦士。パワーでは太刀打ちできぬか」

 

「ふっ! だが、速度はそちらが上。捕らえるのは容易ではないぞ!」

 

 互いに誉め合いながら武器を打ち合っている。

 

 犬人は時に四つん這いで、時には腕だけで身体を支えて自在に攻撃してくる。

 

 変則型だな。

 

 対して、蜥蜴人は生まれもった鱗の硬さによる防御力と膂力によるごり押し。

 

 シンプルなパワー型か。

 

 まさに対局だ。

 

 しかも実力も拮抗している。勝敗がわからないぞ。

 

 故に見てて面白い。

 

 しばらく武器を打ち合っている音が響いたが、犬人が武器を弾かれて勝負がついた。

 

 互いに健闘を讃え、熱い握手をして終了。

 

 スポ根かよ。

 

「勇者様もしないのー?」

 

「え?」

 

 無邪気な獣人の子供が俺の服の袖を引っ張って訊ねてきた。

 

 いや、武器の心得とかないけど。

 

「ほう! それはすばらしい! かの異世界の勇者様の力、ぜひ拝見したいものです!」

 

 戦いに買った蜥蜴人が名案とばかりに手を叩く。

 

 他の亜人の戦士も熱い眼差しをしていた。

 

 戦士として勇者の力に興味津々ってことか?

 

 ユーリの騎士を倒した話は砦で広まってるから余計だ。

 

 ふむ……断れる雰囲気でもない。

 

「安心せい。骨は拾ってやろう」

 

「ちょっと待て! 俺が負ける前提なのかよ!?」

 

 これでも滅獣の王だって倒してんだけど!?

 

 ティアの言葉に思わず突っ込んだがら、笑っていた。

 

 どうやら、俺が負けるとは思ってないみたいだ。

 

 お約束のセリフってこの世界でも同じなのな……。

 

「いざ、手合わせ願いましょう」

 

「…………お手柔らかに」

 

「勇者様がんばってねー!」

 

「まけないでよー!」

 

「フレーフレー!」

 

 大柄な蜥蜴人と向かい合うように進み出た俺をティアや亜人の子供達、戦士が見ている。

 

 俺は柵を潜ってリングに入った。

 

「得物は使われないのですか?」

 

「生憎、俺の武器はこれ――拳だ」

 

「なるほど、では私も素手で戦わせていただきましょう――蜥蜴人戦士・ナッツネス。小隊長の地位を与えられております」

 

「神条進。異世界の勇者だ」

 

 互いに名乗りをあげると、拳を構えた。

 

 対格差は子供と大人。

 

 地球ならまず勝負にもなるまい。

 

「参る!」

 

 ………………。

 

 うん。まったく驚いた。

 

 俺は自分の拳を見て驚いていた。

 

 他の観客もあまりの事に言葉が出てない。

 

 二発でKOしてしまった。

 

 地面には気絶したナッツネスが大の字に倒されていた。

 

 しかも、滅龍魔法も超能力も使っていない。

 

 奇襲後に得た経験値を解放してさらにレベルアップしたが、あまりにも差があったのだ……。

 

 これで五番目の強さって言われると決戦が不安になってくる――。

 

「うむ。さすが勇者たる進じゃ。さらに強くなっておるわ。もう普通の領域の相手では勝負にもならんな!」

 

 ティアは当たり前のように頷いていたが。

 


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