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VSソーマ&レミーラ

 

「「フュンフスフルブースト!」」

 

 身体能力向上か――。

 

 前使っていた魔法の上位版だな。

 

「レベル――隠してやがるのかよ」

 

 ステータス魔法を使ったが、???で表示されてる。

 

「はんっ! ステータス隠蔽なんて初歩の初歩だし!」

 

 レミーラが心臓めがけて一直線の突きを放つ。

 

 いきなり急所狙いとは容赦がない。

 

「はっ! ソーマは出来てなかったがな!」

 

「あの時の同じと思っているならその首、即座にもらうぞ!」

 

 からかう俺にソーマが犬歯を剥いて唸ってきた。

 

 さらに身長差を生かして、レミーラの頭上からソーマが横薙ぎの一閃。

 

 狙いは言葉通りの首。

 

 後ろに避けても横に避けても貰いそうだな。

 

「それほど現実は甘くないだろうな! 雷龍の強鱗!」

 

 俺は両腕に魔力の密度を集め、それぞれの剣の軌道を逸らした。

 

 左手で突きを斜め下へいなし、左手で横薙ぎの軌道を上へとかちあげる。

 

「「なっ!?」」

 

 態勢の崩れた二人めがけて、俺は至近距離でブレスを吐く。

 

「雷龍の咆哮!」

 

 バリバリバリィ!

 

 麻痺と雷の一撃がソーマとレミーラの二人を容赦なく吹き飛ばした。

 

 余波で信者や騎士も飛ばされていたが構うまい。

 

 だが、さすが神器勇者直属の聖騎士とでもいうべきか、受け身をとって即座に立ち上がりやがった。

 

 麻痺も無効になっているし、ダメージも浅そうだ。

 

 装備のお陰か? それとも事前に防御の魔法をかけてたか?

 

「なんなのよ! 変な魔法使ってぇぇぇ!!」

 

 レミーラが縦ロールを逆立てんばかりの怒気をあげた。

 

 フリフリの服が一部焦げている。

 

「奇妙な魔法を――」

 

 ロストマジックとは気づいてないのか?

 

 アビスは即座に見抜いていたが。

 

「お前ら、その程度で勝てると思うなよ。とっとと神器勇者を呼んできたらどうだ?」

 

「一撃防いだ程度でいい気ならないことね! 本気でいくからぁ!」

 

 レミーラの回りにいつの間にか盾が四枚浮かんでいる。

 

 さらに手にしていた盾と剣をしまうと、虚空から十字架に似た大盾を召喚した。

 

「わかった。こちらも全力でいくとしよう」

 

 ソーマもさっきは違う剣を握っている。

 

 波打つ刃はフランベルジュだったか?

 

 漆黒の禍々しい色の剣だ。

 

 明らかにその辺の武器とは違う。

 

 魔力を感じるし、何かしらの魔法の道具だろう。

 

「聖騎士の力を思い知るといい」

 

 ソーマは整った顔に凶悪な笑みを浮かべると、フランベルジュを大地に突き刺した。

 

「フレイムピラー!」

 

 ドォォォォォォォ!

 

 俺の足元から突如黒炎が勢いよく吹き上がる。

 

「なっ!?」

 

 咄嗟に避けれたが、前髪から

焦げた臭いがした。

 

「その程度で!」

 

「その程度と思うなよ?」

 

 ゾッとした悪寒が走り、俺はすぐに真横に跳んだ。

 

 コンマ数秒遅れてそこにまた黒炎が吹き出してきた。

 

 さらにその先も。

 

 追いかけるように連続で火柱が吹き出してきたのだ。

 

 追尾性能もありかよ!

 

 踏んだ地面にわずかに魔方陣が浮かんでから火柱があがるようだな。


 ならば――。

 

「しゃらくせぇ!!」

 

 力任せに地面を殴り、地面もろとも魔方陣を砕く。

 

「野蛮人らしい発想ねぇ!」

 

「だが、拳で私の剣は防げまい!」

 

 地面から剣を引き抜いたソーマは波打ったような魔剣を斜めに切り下ろした。

 

 それを横に避けた瞬間、剣の軌道にあった巨木に斜めの傷が刻まれる。

 

 しかも、それだけではない。

 

 巨木の傷口から毒みたいな黒い染みが広がったかと思うと、直後に黒い炎が吹き上がったのだ。

 

「追加で炎つきかよ」

 

「フッ! 我が魔炎は鉄すら溶かすのだ! 覚悟するがいい!」

 

 聖騎士が魔炎っていいのか?普通なら聖炎だろうに。

 

「言ってろ! 雷龍の鉤爪!」

 

「あまぁいよ! 昊盾!」

 

 俺は得意気な顔を浮かべたソーマへ手刀を叩き込もうとしたが、レミーラの回りに滞空していた盾が俺の手刀を防いだ。

 

 ドラを叩いたような轟音が響き渡り、手にわずかに痛みが走る。

 

 堅いな……。

 

 連続で攻めてみたが、それらを盾が高速で動いて受け止めた。

 

「勇者とか言うわりにはたいしたことなぁいね! ユーリ様の足元にも及ばないわねぇ」

 

 レミーラの勝ち誇った笑いに俺は思わず凶悪な笑みを浮かべてしまった。

 

「ははっ! 何せ本気もまったく出してないからな。なら、こっちもカードを切らせてもらうぞ」

 

「へ?」

 

「身体能力向上が自分だけのものとでも思ったのか? 雷龍の羽衣!!」

 

 俺の身体を青白いオーラが包み込む。

 

 バチバチと雷がうねり、全身に力が漲っていく。

 

「真の滅龍を思い知らせてやろう」

 

 ドンッ、と大気を震わせて地面を蹴った。

 

 昊盾の動きも、ソーマとレミーラが驚く顔も遅く感じる。

 

 神速の領域にはほど遠いが高速世界では二人はついてこれていない。

 

 蹴り飛ばした砂が爆発したような勢いで、俺はレミーラめがけて走る。

 

「雷龍の鉄槌!」

 

「!!」

 

 レミーラが慌てて盾を展開しようとしたが、遅い。

 

 踏み込みの速度のまま音速の拳を叩き込む。

 

 バチィ、と大気のはぜる音と鈍い音が重なり、レミーラの両足が宙に浮いた。

 

 そのままワイヤーにでも吊られたかのように吹き飛ばされたレミーラは大木に身体を強かに叩きつけられて沈む。

 

「レミーラ!?」

 

「他人を心配してる場合か?」

 

 もう一度重い音が響き、ソーマの膝がおれる。

 

 俺の拳を腹部に受けたソーマはそのまま俺にもたれかかるように倒れ、意識を失ったのだった。

 

「他の奇襲部隊はどうなったんだ?」

 

 信者が余波で気絶してしまって周囲は静かに感じられるが、霧ごしにまだ戦闘の音は聞こえている。

 

 だが、所詮は奇襲。

 

 時間が経てば経つほど敵も冷静になってくるし、不利になる。

 

 転移で引くか?

 

 ユーリと闘いたかったが、敵陣真っ只中で探すわけにもいかない――!?

 

 俺は思考を止めて思わず振り向いた。

 

 ソーマが晴らした霧の空間に不自然なほどの存在感がある青年が立っていた。

 

 金髪碧眼の西洋風の顔立ちと人を小バカにした目付き。

 

 そして、鞘に納められていると言うのに、その剣はどんな武器よりも存在感がある。

 

 聖剣アスカロン。

 

 そして、それに選ばれた神器勇者――トーガ・ユーリだ。

 

「まさか、私のソーマとレミーラを倒すとは。やってくれましたね。異端者」

 

 ユーリの口調は丁寧だが、ゴリッ、とするものが潜んでいる。

 

「聖騎士のわりには大したことはなかったがなぁ」

 

「そうでしたか。よくもやってくれましたね」

 

 挑発した俺に対してユーリはわずかに目を細めると、アスカロンを抜き放ち――。

 

「敵討ちと参りましょう」

 

 殺してないがな!

 


 

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