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大連合


 巨樹の森に棲む亜人の総数は凡そ二万前後。

 

 ただし、老人や子供、赤子などの戦力外を除くと、一万近い数に減る。

 

 対しての滅竜教会の討伐軍は五万。

 

 数の差は三倍を優に越えている。

 

 ただ、地の利と亜人の身体能力。ベヘモス戦での消耗があると考えれば、それほど脅威にならないはずだ。

 

 さらに防衛戦での戦闘時は攻める方が基本的に三倍の戦力がいるというのを考えれば、数が少なくても防衛戦なら有利だろう。

 

 のだが、あくまで、後者の話は戦国、中世の城攻めだのがあった時代だ。

 

 異能力において、それは関係ない。

 

 空間跳躍での奇襲。個で数百の敵を倒す身体能力保有者、怪物へと姿を変える者だっている。

 

 この世界も魔法という超常があり、マーリン級の魔法なら城ひとつ一人で落とせるだろう。

 

 俺の権能の最大火力なら五万でも一撃で倒せるだろうし――。

 

 まぁ、要は兵の数は関係ないって話なのだ。

 

 レベルなんて概念があり、ステータスなんてふざけたものが数値としてある以上は個人の強さの方が重要になってくる。

 

 それに長引けば帝国へ助けを求められる点も有利だろう。

 

 最悪の手段は主戦派を焚き付けて、王国を挟撃するとかだな。

 

 亜人軍は強い。

 

 マジックアイテムや魔法は王国、帝国が発達していて、こちらは原始的なものが多いが、レベル、基礎ステータス、亜人の固有能力などは圧倒的に強いのだ。

 

 だが、ゲームだとレベル差が大きければ個で群を倒せることもある。

 

 まぁ、ステータス差が大きすぎれば、こっちは一撃必殺で、ダメージを受けないみたいな理不尽もありえそうだし。

 

 ソーマがクラスが聖騎士ならまぁ、問題はあるまい。

 

 なんとかなる、と思う。てか、思いたい。

 

「こんなことになるならマーリンを引っ張ってくるんだったなぁ」

 

 着々と整う戦場を眺めながら俺はティアの隣でぼやいた。

 

「それもそうじゃが、いないものは仕方あるまい。今からでは間に合わんじゃろうしな」

 

 ティアは泰然自若だ。

 

 人生の経験値が違うからな。

 

 大量の木の杭や落とし穴。沼地を作りながら戦の準備を整えていく。

 

 迎え撃つのは崩れかけていた砦を補修したものだ。

 

 巨樹の森は王国と幾度も戦いがあったので、森の中にはいくつか巨大な砦跡があるのだ。

 

 その一つ――敵の進路にありえるだろう砦を補修して戦に備えているのだ。

 

 食料や武器を運び込んだり、投石器も用意されている。

 

 見た目はファンタジー種族だが、武器は原始的だ。

 

 ユグドラシル戦の様な超位魔法とか使えるのか聞いたが、そんな使い手はいないと返された。

 

 せいぜいが、裁きと同じくらいの集団魔法が限界らしい。

 

 猫人、犬人、蜥蜴人、鬼人だけでなく二足歩行の土竜っぽい土竜人やウサミミの兎人が斬り倒した木々や石を運び、上空から斥候と見張りを兼ねる鳥人が飛び交う様は異世界だとまざまざと見せ付けてくれる。

 

 純粋な人間が俺しかいない。

 

 ティアはこんな幼女っぽい見た目だが、龍だし。

 

 準備を手伝おうかと申し出たが、英気を養ってほしいと言われて断られた。

 

 鬼徹達の族長達は作戦会議をしている。

 

「そろそろ滅竜教会とベヘモスがぶつかる頃か? さてさて、どれくらい兵力を削ってくれるかな?」

 

「お主しれっ恐ろしいことをと言うのう」

 

「しょうがないだろう?もう始まってんだし。ベヘモスも魔物だしな。俺たちは、全部を救えるほど万能じゃないんだ。できることに全力を注ぐだけだよ」

 

 もう戦争となるなら割りきろう。

 

 生き残ることが重要なのだ。

 

「作戦が決まるまでは俺たちは待機だし……」

 

「ベヘモスをやつらが何の損害もなく倒せるものか。龍の血はそこまで甘くない」

 

「 ベヘモスは龍の血が濃いって聞いたが、そうなのか?」

 

「ん~、あれは地龍の系譜ゆえ詳しくないが、何百年前からいるならそこらの種族よりも濃いじゃろうな」

 

 純粋な龍はほとんどいないため、交配するとどうしても他種族との混血になる。

 

 さらに混血同士が交わり、さらに血が薄くなる、と言ったものが繰り返されてきているのだ。

 

 故に寿命が長く古い個体ほど、龍の血が濃いのだ。

 

 ただ、話から天空龍のティアの血筋ではないらしい。

 

「ティアの眷属ってのはいないのか?」

 

「おらぬな。戦争末期に生まれた一番若い個体なのでな」

 

 でも、龍同士の戦争って神話並の話だよな。

 

 って突っ込んだらまた殴りにきそうなので突っ込まないけど。

 

「へぇー」

 

「何か言いたげじゃな」

 

 眦をつりあげたティアと俺は目線を合わせずに遠くに目をやり――。

 

「何もないぞ。それよりも始まってるみたいだな」

 

 俺は煙の上がった空をさした。

 

 森の切れ目らしき場所から黒煙が上がっており、雲に墨を垂らすようにそこだけ黒々とした空が広がっている。

 

 落雷の様な轟音は魔法が放たれた音だろうか。黒煙の奥で様々な色が輝き、戦場の凄まじさを感じさせた。

 

 

 

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