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巨樹の森


 巨樹の森――。

 

 古より古代の魔物であるベヘモスの元で繁栄と衰退を繰り返すこの森は、ベヘモスが吐き出す豊潤な魔力によって恐るべき成長速度をもち、その大きさは我々人間が小人になったような印象を与えてくれる。

 

 その恵みは実の一つでも腹を満たすほどの巨大な恵みを与えくれる。

 

 反面、そこ地に住まう魔物はどれも大きく生きるには過酷であり、強さはより求められる。

 

 この地に住まう種族を決して怒らせてはいけない――。

 

 彼らは森と共に生き、森と共に死ぬ。

 

 彼らの地を汚せば、この木々のごとき巨大な怒りをもって、それらを滅ぼすだろう――。

 

 鬼人と獣人と蜥蜴人には敬意をもって接せよ――。

 

 さすれば森の加護を得られるよう――。

 

 ガリヴァー世界渡航記より――。

 

「ふむ……この地の魔物はどれも大きいそうだな」

 

「餌がそうなのだから仕方あるまい」

 

 地竜が牽く竜車の窓から俺とティアが目にしたのは一メートルはあろう蜘蛛とそれを襲う巨大な蛙だ。

 

 拳ほどもある六つの瞳に鉈のような分厚いハサミ、槍のように尖り毛むくじゃらな脚。

 

 それを食べる蛙はヤギでも丸飲みしそうなサイズで、鞭のような舌を揺らして仕留めた蜘蛛の脚を呑み込んでいた。

 

 地球ならばモンスター映画でしか拝めないサイズだろう。

 

 ただ、あのユグドラシルを見たあとだと小さく感じてしまう。

 

 ジャイアントトード――レベル35、ビッグスパイダー――レベル30。

 

 帝国内での魔物基準ならとんでもなく強いほうだろう。

 

 実際、この森付近では魔物がいない。

 

 森から出てきた魔物に捕食されるから大概の魔物は巨樹の森の近くに巣は作らないそうだ。

 

 一応、この森と帝国との間にはちょっとした壁が建てられているが、気休め程度にしか見えなかった。

 

 まぁ、ここから先が帝国領って示してるんだろうな。

 

 この森だけで一つの生態系ができているらしい。

 

 地竜などこの森なら小さいといえるものサイズなので獲物として襲われそうなものだが、ティアが乗ってるせいか魔物達は避けるように馬車から目をそらしていた。

 

「ティアが竜車で行けって行ったときは驚いたけど襲われない自信があったのかよ?」

 

「当然じゃろう? ベヘモス程ならば臆せんかもしれぬが、あの程度ならどうとでもな」

 

 しかし、亀裂の魔物はティアでも襲いかかった。

 

 あれらはこの世界の魔物とはやはり違うってことか。

 

「そう言えば、ユグドラシル撃破でかなり経験値が入ったんだよな。今はレベル55なんだが、この森だと通用するのか?」

 

「主の権能ならレベルは関係なさそうじゃが、通用するじゃろうな。この世界の人間の平均は40程度――全種族の成長限界ではないがの……。ただ主にはそれは当てはまらんじゃろ?」

 

 勇者にはレベルの頭打ちがない。

 

 それこそ999どころか1000でもいける。

 

 まぁ、そこまで上げるやつはいないだろう。

 

 この世界の強さでも100あれば敵なしと思う。

 

 まぁ、ティアみたいに???があるからそう考えるのも危険かもしれないけど、普通なら十分だ。

 

 そう言えば、ゲヘナのレベルを見忘れてた。

 

 今度は見とくか――。

 

 まぁ、あの変態とは二度と会いたくないが――。

 

 ゲヘナによって現在の帝国――帝都は騒がしくなっている。

 

 主にスキャンダルのせいだ。

 

 皇帝の下にいる四人の上級大臣の一人――新皇帝に属していたゲバルド上級大臣が下級貴族の娘を性奴隷にしていたことが発覚して失脚。

 

 派閥が解体され、反皇帝派が力を増している。

 

 反皇帝派は主戦派であり、王国との戦争ムードが高まる危険があるってアクトが話に来てくれた。

 

 勇者の鶴の一声で止めてもらうかもしれないって。

 

 そんな権力はないのだが、生きる神話並に信仰があるから怖い。

 

 増長して戦おうって言ったらそのまま戦争になりそうだし。

 

 反皇帝派としては帝国と王国を纏めてることで国力を増し、亀裂を斥ける、って謳ってた。

 

 まぁ、世界の危機が目の前なんだがら、そこで争う戦力はないのにアホだと思う。

 

 王国との帝国がまじで戦争したら、亀裂の魔物に対処するどころじゃない。

 

 もし戦争に勝って領土を併吞しても、疲弊し、国力を増すまでに何年かかるか――。

 

 その前に世界が滅ぶ。

 

 今ですら帝国の国力は落ちてるのだから――。

 

「進、そろそろ見えてくるぞ」

 

 などと嘆いているとティアが袖を引っ張って窓の外を指した。

 

 窓の外に広がるのは巨大な樹を利用した壁だ。

 

 

 

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