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ドラキュリアン6


「社長はあなた達にはずいぶん特別な存在なのですね」

 

「えぇ、神様と言って過言ではありませんよ?」

 

 眩しいものを見るように羨ましそうにカーミラは俺を見ている。

 

 同時に嫉妬心と思える暗い色が一瞬目を走っていた。

 

「神様……?」

 

「そうです。私達、ドラキュリアンはトキエ様によって創られたのですから」

 

「創られた? じゃあ、人造種族ってことなんですか?」

 

 ギョッ、とする言葉にカーミラは誇らしく頷いている。

 

「解釈は正しいと思いますよ。私はトキエ様の血を元に、龍の因子などを足して創られたのです。あなた達の世界でドラキュラの語源はドラクル――龍の子と言う意味なのでしょう? ドラキュリアンとはそれを少し変えたものなのです。与えられたこの名もあなた達の世界の勇者にとって馴染みがあり、接触しやすくするための名前なのですよ?」

 

「だが、ヒルダは日光下でも普通に活動してましたけど、俺達の世界のドラキュラとは全然違う種族なんですか?」

 

 地球のドラキュラは日下で灰になるとか言われてるんだが、彼女は平然としていた。

 

 名前だけ似せたのか?

 

「どうでしょう? ドラキュリアンは吸血によって優れた遺伝子を取り込み、自らを進化させる種族なのです。血を吸い自らの糧である僕を作るのがドラキュラと似てるのではないのですか?」

 

 ……一番の特徴は似てたよ。

 

 笑ってるカーミラの口元から鋭い牙が覗いている。

 

 犬歯にしては鋭く長すぎるそれを見ると、吸血鬼の単語が嫌でも頭を過る。

 

「美味しそうですね……。勇者様……トキエ様の存在を強く感じます。その血……本当に美味しそう……。その血、いただきたいですね。……少しだけ、飲ませていただけませんか?」

 

 うっとりと俺を眺めて呟くカーミラの言葉は不自然に俺の心に染み込んでくる。

 

 はい、少しよかったら吸いますか、と言ってしまいそうな、そう思ってしまいそうな不思議な力があったが、俺は逆に警戒心が強まった。

 

 俺が美海に視線を向けると、小さく頷く。

 

 すぐに同じように気を引きしめ、眦を吊り上げたのだ。

 

「会話中に精神操作の異能を使うのは感心しないぞ? 地球なら逮捕ものだ」

 

 俺の言葉にカーミラは悪びれた様子もなく残念そうに肩をすくめ、

 

「残念です。本当に……。なぜ、私の精神操作が効かなかったか参考までに聞かせてもらえますか?」

 

 誰が教えるか。

 

 『覚える』異能が反応してから、わかったが、美海だけ危なかったかもしれない。

 

 まぁ、権能でその程度は通じないけど。

 

「なるほどのう。魔法なら妾でも関知できたが、異世界の力ならわからぬな。魔力なしで術を扱えるとは実に便利よな」

 

 ティアは不快げに目を細めてカーミラを睨んだ。

 

 ティアも龍だから通じてない。伊達に最強種を名乗ってないな。

 

 確かに、魔力なしで魔法は使えないから魔力を感じなければ普通は警戒しないか。

 

「フフフ、セイレーンの魔法も得意でしたが、龍魔人様がいたら関知されると思ったので控えたのです。まさかこちらでも見破られるのは想定外でしたが」

 

 こいつ、やっぱり信用するのは危険だな。

 

 伊達に最高権力者じゃない。

 

 とんでもない狸かもしれないぞ。

 

 俺はカーミラに対する警戒心を引き上げながら彼女を見据える。

 

 しかし、俺の視線に対してカーミラは特に警戒の色は浮かべているように見えない。

 

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