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旅道中8


 

「共和国は魔法技術は王国や帝国よりも優れてますね。科学技術と呼ばれる分野では法国に劣りますが」

 

 共和国はこの世界で一番ファンタジー要素が強い感じなのか?

 

 亜人主義の国だし、見た目からしてそうかも、とは思っていたが。

 

「法国は異世界人が歴史でも最も多く召喚されてますからね。彼等の知識は多くは私たちにとっては未来技術とも言えるほどのもの。それを利用して発展してきたんです」

 

 まぁ、この世界の文明水準って中世くらいだからなぁ。

 

 いくら魔法があるって言ってもそこまで発展してないのだ。

 

「法国ってのは俺達なら違和感ない国かもなぁ」

 

「逆に共和国は違和感を強く感じるかもしれませんね」

 

「俺も思った」

 

 美海の台詞に頷く。

 

「そ、そんなことはないと思いますよ。いたって普通の国ですから――」

 

 俺と美海の感想への反応に困ったアデルはなんとか否定しようとするのだったが、声は小さかった。

 

 

 アデルを乗せてからはや二日。

 

 共和国の話を聞いたり、地球のことを話したり互いに情報交換していた俺達だが、今はただ雑談をしていた。

 

 美海とアデルは馬車の中で呑気に服装やらアクセサリーやらについて話してる。

 

 俺?

 

 そんな女子の会話に入る能力はないから。

 

 外で御者台に座りながら雲見てるから。

 

 わたあめ、羊、牛、車――――。

 

 あれ?

 

 なんか雨雲みたいな黒い雲? 霧?が彼方に見えるぞ?

 

 雨でも降るのか?

 

 などと現実逃避してみたのだが――。

 

「あ、あんた達この先に行くのはやめなされ」

 

 向こうからきた老人が顔色を変えて忠告してきた。

 

 老人だけではない。

 

 女、子供、男――村一つの分くらいの人数がいるぞ。

 

 ずいぶんな大所帯だな。

 

 竜車を止めて俺は首を傾げる。

 

「どうしたのですか?」

 

 急に竜車が止まったので、驚いてでてきた美海も人数に驚きを隠せないらしい。

 

「実は西の村で蝗害が発生して慌てて避難てきたのです」

 

「蝗害ってあれだよな? バッタによる被害だよな?」

 

 イナゴとかでもあるが、作物だけでなく、草木や紙も全て食い荒らして進む災害だ。

 

 日本でも過去に起きているし、世界的な天災の一つだ。

 

 ちなみに日本のはイナゴとかで、蝗害は本来、サバクトビバッタなどを指すため、実は種類が違うそうだが。

 

 中国、エジプト、アフリカ、インドなどで起きたりしてるし、神格化されている話もあるほど太古から脅威とされている。

 

 え? あの黒い雲みたいなのってバッタなのかよ。

 

「そんな凄い災害なのか? 魔法でなんとかならんのか?」

 

 『裁き』やアトモスなら蹴散らせそうだけど。

 

「神条様、この世界のバッタは肉食でもあります。魔物は勿論、人間も餌と見なして襲ってきます。木造建築ですら食べられますね。湖の水飲み干されて、草は根まで食べられます。蝗害が過ぎた後は荒野しか残らないとされており、ちなみに儀式術で凌ぐことはできても、村にそんな魔法が扱える組織は普通にいません。あと、あれだけの数を殲滅しきるほどの儀式魔法を放ち、維持する魔力は普通はないです」

 

 アデルは俺が地球の災害と同じと考えていたので、説明してくれたのだが――。

 

 !! こわっ!?

 

 なにそのバッタ。

 

 もう魔物だよな、それ!!

 

 魔物も餌にするって逞しすぎるわ!

 

 俺は何千と言う肉食バッタの群れを想像して身体を震わせた。

 

 美海も同じような想像をしたらしく顔色が悪い。

 

「でも、あれは50年周期のはずですよ? まだ、前回から10年。早すぎてはありませんか?」

 

「我々もそう思いましたが、発生したものは仕方ないのです」

「私達だって家財全ておいて逃げてきたのよ」

「きっとこれも災厄の一つなんだ――」

「なんでこんなことに――」


 村人は悔し泣きしながら、呪詛を吐いていた。

 

 いきなり周期を無視した大災害か……。

 

 亀裂がただの災害と見なされてるなら、これもその影響と思うわな。

 

 俺も亀裂の魔物のせいで生態系が変わったからか? とも思わなくもないし。

 

「蝗害が発生したなら、進むのは無理ですよ。私達も引き返さないと――」

 

「そうだなぁ」

 

 太陽神の槍の全開なら滅ぼせるかもしれないが、たぶん一帯が溶岩地帯になるだろうから、やっぱり進めない。

 

 それに定期的な災害ならちゃんと抑え込む対策もノウハウもあるだろう。

 

 うん、引き返してレティシアに投げよう。

 

 え? 勇者なら挑戦しろって?

 

 挑戦して失敗したら虫に生きたまま食われるんだぞ?

 

 冗談じゃない!!


「引き返すか、別ルートを探したほうがいいかもしれません――ね!?」

 

「!?」

 

 美海も同意しようとしたが、途中で慌てて空を見上げた。

 

 俺も同じだ。

 

「どうしたのですか? お二人とも?」

 

 アデルは気づけなかったのか?

 

 あの全身を貫いた悪寒。

 

 滅獣――いや、魔王種すら凌ぐ圧倒的な気配と魔力が蝗害がある方角から感じられたのだ。

 

 

  

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