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旅道中5


「ん?」

 

 反転して適当なルートへ行こうと迂回路の分岐点で竜車を停めると、一人の子供がテントを張ってたむろっていた。


 外に出てないのかマントから覗く手はかなり白い。それに俺達よりも小柄な身体つきは子供か?

 

 こんな場所にいたら盗賊に拐われるぞ?

 

「あら? もしかして、あなた達は冒険者? あの野菜畑を見てきたの?」

 

「あぁ、そうだよ。俺達はその野菜畑をどうにかしてくれって依頼を受けたんだ。まぁ、ちょっと解決法が浮かばなかったから、種子を作った錬金術師を探そうかとな」

 

「おぉ! なんと言う神の巡り合わせ! 私がその錬金術師よ!」

 

 バサッとマントを脱ぎ捨てた少女は

小柄ながら胸を張って俺達を見上げた。

 

 ……誰かを彷彿とさせるぞ。

 

 細い身体、まな板のような胸、整った顔立ち、そして何より驚いたのは――。

 

「耳が尖ってる?」

 

 髪から横にピンと伸びた耳は人間のではない。

 

「亜人か?」

 

「そうよ! 私はエルフの錬金術師アデル!」

 

 初めて俺と美海が出会ったのはどうみても子供のエルフだった。

 

「「エルフ!!」」

 

 アデルの自己紹介に俺と美海は揃って驚いた。

 

 いくら亜人の奴隷制がなくなったとは言え、亜人がこんな場所にいるとは――。

 

 ますます盗賊に襲われそうだ。

 

「アデルちゃん、こんなところに一人でいるのは危ないですよ? 誰かと待ち合わせでいたんですか?」

 

「ちゃん付けしないでよ! あと、子供扱いもしないで! これでもあなた達の倍以上生きてるわ! 私一人よ!」

 

 アデルは美海の子供扱いがお気に召さなかったらしく眦を吊り上げて怒っていた。

 

 態度はどうみても子供のそれだが。

 

 見た目が子供だから大袈裟に振る舞おうとしてるっぽいな。

 

「す、すいません。見た目で判断してしまって」

 

「気を付けてね! これでも研究者として博士号も取得してるんだから!」

 

「やっぱエルフって見た目と中身が合わないのが定番なのな」

 

 つーか、博士号なんかこの世界にあるのか。

 

「んで、アデルがこの植物を造ったのか?」

 

「会っていきなり呼び捨て? 年上に礼儀がなってないわね……。」

 

 ぶん殴ってやろうか?

 

 いや見た目は子供なんだ落ち着け……。

 

「はは、博士号なんて持ってて、そんな偉そうなのに、いや、偉いんでしだっけ? なのに、自分が暴走させた魔物の始末はしないのかぁ。年上はやることがセコいわ」

 

「煩いわね! 失敗は研究にはつきものなのよ! それに共和国ではちゃんと育ってたわ!」

 

「いえいえ、開き直られても現実は変わりませんから」

 

「う、うぅぅぅぅ!!」

 

 年下に論破されてアデルは顔を赤くして地団駄踏んでいる。

 

 ざまぁみろ。

 

「進君……端から見てると子供を苛めるヤバい学生ですよ?」

 

 口擊に参加しなかった美海に突っ込まれて俺ははっ、とした。

 

 うん、見た目的には俺が悪だよな。

 

 でも、反省はしないがな!


 

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