帰って来て5
「だいたい……俺とお前が一緒に共和国に行く理由がないだろうが」
こんな見た目からキテレツな格好の魔族なんか連れていたら間違いなく目立つ。
いや、逆に不気味がって盗賊避けとかになるかな?
まぁ、盗賊ごとき敵にはならんが。
「それなのだがな、我輩が使徒を裏切ったのはバレているからな。アビスが我輩を消しに来ると考えられるのだ。だが、貴様らと同行してればさしものヤツでも躊躇するだろうからな」
俺は護衛かよ。
「てか、お前よりアビスの方が強いのか?」
「まぁ、そう言うことだ」
「アビスって衣服を変化させる魔法を使う男ですよね? そんなに強いんですか?」
キャスパ諸島で戦った美海は意外だった。
魔族と人間の能力値は基礎値で大きな差があるのだ。
同じ使徒なのに与えられている力に差があるのだろうか?
それほどの強さは感じなかった。
魔龍となっていた煉獄のほうが遥かに強く感じれた。
「あれは我輩やヒルダとは違い、使徒としての成り立ちが違うのだ。絶対に裏切らない使徒だから、マトから与えられている力は煉獄に次いで大きいのだ。ただ、人間ゆえに使いこなせてはいない。貴様らに見せたのは力の一部に過ぎぬ」
捨て身になれば話は別だがな、とゲヘナは続けた。
自爆特効なら魔族よりも強くなるのか。
ゲヘナが警戒する程度には。
だが、俺はゲヘナの強さもアビスの強さもわかってない。
アビスと戦った時は本気ではなかったしな。
実はアビスの強さが桁違いで俺達三人纏めて倒せると思って攻めて来る可能性もあるくない?
「逆に一網打尽にしようと捨て身で襲ってこないか」
「うむ。それもありえるか……。ま、断られてしまった我輩はコソコソと気づかれないようについていくとしよう――――背後から」
「おまっ! ざけんな!」
「フハハハハ! その感情は美味である! さらば!」
堂々とストーキング宣言か!
やっぱり、ぶっ飛ばしてやろうか。
断った俺と美海にふざけた態度でお辞儀したゲヘナは窓から身を踊らせて姿を消した。
……相変わらず嵐みたいなヤツだな。
「凄い強烈な方ですね。キャラ濃すぎでしょう」
美海も唐突なゲヘナに呆れているが、まったく同感だ。
なんか疲れたし今日は休もう。
思い切りかき回されてペースが狂ったので、一旦話はやめて俺と美海はそれぞれ部屋から出ていった。




