表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/196

別世界2


「それにしても、終末世界だな。あの空から伸びてる柱――いや、塔にいるのか?」

 

「そうだ。奴が出現した最初の都市――レラーズ。世界の中心と言われた都市だ」

 

 山々の向こうで煌々と輝く柱に見えたのは、空に届くほどの巨大な塔だ。

 

 雲に隠れて先が見えない巨大なそれは何キロ離れているかわからないのにも関わらず、圧倒的な存在感があった。

 

 見渡す限りの闇で一ヶ所だけ明かりがあるような。

 

「でも、彼処までどうやっていくんだ? まさか歩いてか?」

 

「そんなはずがあるか。瞬間移動で行く」

 

「しゃ――トキエは瞬間移動なんかできるのかよ?」

 

「当然だ。失われた魔法だが、なんとか復元できた。ただ、使えるのは1日一回だがな」

 

 使い勝手が悪い瞬間移動だな。

 

 だが、キロ単位で移動できるのは、異能力ならありえない。

 

 転移は移動距離が遠ければ遠いほど、対象が重ければ重いほど演算が難しくなる。

 

 手元一ミリ狂えばで狙撃が何十センチもずれるように、長距離移動をすれば空の上や地中に飛ぶ可能性も低くないのだ。

 

「それ、ちゃんと目的地に行けるよな」

 

 出たとこ勝負とか言い出したら俺は歩いていく。

 

「当たり前だろ。でなければ使えないからな」

 

 なら安心か。

 

「んじゃ、さっそく飛ぼうぜ」

 

「せっかちな奴だが、構わないぞ。つかまれ」


 トキエは俺が手を握ったのを確認すると、魔方陣を展開。

 

 直後に景色が変わり、見上げれば途方もなく高い塔の下に飛んできていた。

 

「やっぱ魔法か。覚えられないな」

 

 これだけ長距離移動可能な転移なら覚えても損わないと思ったがら異能じゃないから覚えられなかった。

 

 それにしても――。

 

「でかすぎだろ」

 

 巨人が落とした柱のような直径もどれほどあるかわからない。

 

 最低でも都市一つ呑み込めるサイズはありそうだ。

 

 ぼんやりと輝く謎の材質。

 

 石を繋げたわけではなく、一繋がりの物質でできている。

 

 だが、こんな巨大な材質があるか?

 

 俺達の世界でもまずないな。

 

 科学技術で栄えた俺達の世界でも造れるレベルじゃない。

 

 まさに神が造った神造物と言える。

 

「これ……なんで出来てるんだ?」

 

「私にもわからん。と言うか、ここまでこれだけのが私だけだからな。調べた人間なんていないだろうし」

 

 本来ならこの塔は台風の目のように少し離れて塔を囲むように滅獣に護られているらしく、正攻法で突破するのは不可能らしい。

 

 まぁ、二人でこの巨大な塔を囲めるほどの滅獣と戦うのはゴメンだ。

 

 魔王種なしでも何千体もの滅獣と戦えば消耗は必死だからな。

 

 て、ちょっと待てよ……。

 

「初めて来たって言ったな? じゃ、入り口もわかる――」

 

「わけがないだろう」


 マジかよ。

 

 そんなあっさり言われても困るのだが。

  

「ここから、どうするつもりだったんだよ?」

 

「なに、地道に一周回って探すとするつもりさ」


 すっげー地道。

 

 確かに普通に破壊したら音でばれるか……いや、待てよ?

 

「そんな悠長にしなくても大丈夫かもしれんぞ?」


「ん?」

 

 首を傾げるトキエを無視して俺はぼんやり光る壁に手を当てた。

 

 発光しているのに冷たい。

 

 それに石というよりタイルに近い材質だ。

 

 ツルツルとしている。

 

「試してみるか。炎神の息吹」

 

 分子振動――。

 

 あっちの世界でわかったが、分子振動は魔力があると抵抗されるらしい。

 

 だから、滅獣に対してダメージが浅かったのだ。

 

 地球の生物はほとんど魔力なんてないから必殺になり得たんだが、あっちだと威力が散らされる。

 

 これは物質にも当てはまるので、これが魔力をまったく帯びてなければ阻害されることなく溶かしきれるが……。

 

「ダメか」

 

 数cm溶けたところで振動が止められた。

 

 この材質は魔力も帯びてるらしい。

 

(地球よりよりも、あっちよりの異世界なのか……)

 

 なら――。

 

「深淵よりも深き虚無の闇よ!万象を喰らう祖は暴食の闇。原初に還す力にて敵を打ち倒せ!」

 

 生み出される闇は光を侵食する様に広がり、壁を溶かす様に抉っていく。

 

 SPを使わなくて済むのが嬉しいな。

 

 あれの消費はバカにならんから。

 

 ただ、見えない何かが削られていくのは感じられる。

 

 数秒で人一人通れる程の穴が空いた。

 

「空いたぞ」

 

「なんの魔術だ? さっきのといい妙な魔術ばかり使うな」

 

 削り取られた様に綺麗に空いた穴にトキエは目を丸くしていた。

 

「魔術じゃなくて権能なんだが、なんでもいい。いくぞ」

 

 俺とトキエは敵の居城へと足を踏み入れたのだった。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ