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別世界


「つまり、私と同じ名前で私そっくりの女性が君の主君と言うのだな」

 

「主君って今日日聞かねえけど、トキエの解釈ならそうだわな」

 

 会社と言うシステムがないので、社長と言っても通じなかったが、俺を雇っている組織の上役と言ったらなんとか理解してくれた。

 

「しかし、私は君など知らないし、他人の空似だろう。それにしても、あの獣をあっさり滅ぼすとは君は何者だ?」

 

 空似ってレベルじゃねぇんだが……。

 

「何者って言われてもなぁ。地球じゃ、会社員で、異世界なら勇者かな?」

 

 二つの世界で役割が違いすぎるだろうと自分で突っ込んだのだが、間違ってはない。

 

「勇者か……。おとぎ話なら世界を救える希望だな。私達にはまさに待ち望んだ存在とも言える。それに、確かに君ならあの獣どもの王も倒すことができるかもしれん」

 

「滅獣の王? 魔王種のことか?」

 

「魔王種とやらが何かはわからぬが、あの獣どもを操っている存在だ。自らを慈母の子だと言っていた男だぞ?」

 

 慈母――。

 

 またその単語だ。

 

 この変な世界でも出てくるのかよ。

 

「そいつについて教えてくれるか?」

 

「あの男は自らをマトと言っていてな。突然空から無数の獣を率いて現れ、瞬く間に国々を滅ぼしていったのだ」

 

 国が滅んだだけではなく、大地は枯れ、空からは青さが失われ、海は乾上がり、あらゆる生命がマトの率いた獣に滅ぼされていた。

 

 ……人型の滅獣?

 

 今まで確認された中には存在しない個体だ。

 

 それに滅獣を操るなんて聞いたことがない。

 

 未知の滅獣――ラスボスと関係があるのだろうか?

 

「一握りの生き残りは地下に潜っていたがら、見つかるのも時間の問題だろう。先日、大地を潜る獣も確認されたからな」

 

 生き残りで最大戦力のトキエはマトを討つべく、行動していた最中らしい。

 

「単身で挑むってのはバカか勇敢なのか……」

 

「残念だが、マトにダメージを与えられるのは私くらいなのだ。あれは特殊な防御によって低級の力は無力化するからな。他の戦闘員では戦いにもならならいから置いてきた」

 

 それに単身なら獣にも見つかり難い分、奇襲も可能だと付け加えた。

 

 ただ、それは嘘も混じっているのだろう。

 

(仲間を死なれたくないから置いてきたった顔に出てるぞ)

 

 お人好しと言うか、なんと言うか。

 

 ただ、見知らぬ俺を助けようもしてくれたし、悪い人ではない。

 

 それにやっぱりトキエが社長とまったくの別人とは思えないのだ。

 

 根拠はないが、勘と言ってもいいのだが、そんな気がするのだった。

 

「なら、俺も連れてけよ」

 

「なに?」

 

「滅獣は俺の敵でもあるんだ。それを操るボスなら俺の敵でもある。マトに対抗できる戦力なら戦いになるだろ?」

 

 トキエは一人でもいくだろうし、俺も一人でもむかうつもりだ。

 

 目的地と敵が同じならば、二人のほうが勝率も上がる。

 

 トキエもそれがわかっているだろう。それでも、会ったばかりの俺を連れていくのは気がひけるらしく、首を縦には振らなった。

 

「危険だぞ? マトは強いし、人間に容赦もない。それに向かう先はさっきのような獣の徘徊する領域だぞ? それでも――」

 

「あぁ、行くね。断るなら一人でも行くぞ? なんせ、滅獣は俺の敵だからな」

 

 危険についた羅列するトキエの言葉を遮って俺ははっきりと言った。

 

 何を言われても方針を変えるつもりはないからな。

 

 俺とトキエは互いに睨むように視線をぶつけあったが、数秒して折れたのはトキエだった。

 

「わかった。だが、無茶はしないでくれよ」


「お互いにだ」

 

 トキエに同意を得た俺はなんとか謎の世界での同行者を得ることに成功した。

 

 

 

 

 

 

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