帝都に戻って3
「クサリクについては?」
「クサリクは法国で現れて、都市一つを壊滅させそうだ。その後はまた亀裂に姿を消したらしい」
「神出鬼没かよ。厄介だなぁ」
あの時と同じで適当に暴れまわったら、次元の亀裂に姿を消して行ったってことか。
「あれは本当に厄介だよ。普通なら何せ、いつ何処に来るかわからないからね。ただし――」
マーリンは何故か明るい表情で、
「あれほどの災害をもたらす存在だと、的中率が良くない予言者でもこぞって予言できる規模の脅威らしい。おかげで、次の出現先は予知できてるよ」
的中率はいまいちでも数が揃えば予測は立つってわけかよ。
「待ち伏せ可能か――。なら、あとは倒すだけか」
「それが相当困難だろうけどね」
同感だな。
たぶん、今までの滅獣よりも厄介な怪物なのは間違いない。
煉獄だって、もし悪魔龍化した煉獄とまともに戦ってたら勝てた自信もない。
てか、敗けてただろうな。
あれは相性と偶然がこちらについていただけだ。
「相手は山ほどもある巨体に、無数の雷を操り、尚且つバフも解除と厄介極まりないよ」
「前みたいに大規模魔法でどうにかならんのかよ?」
「ユグドラシルはかなり弱ってたから通用したけど、クサリクは常に体力、魔力が満タンで出てくるから無理だろう。しかも、あの巨大……。それに冒険者の戦力低下も深刻だし」
ショロトルのせいで、両国の対魔物、魔獣への戦力は減少の一途を辿っているのだ。
「キャスパ諸島の冒険者はそれなりにレベル上げは進んだんだが、回せる手がないってことか。戦力については、ティアが帰ってから考えるべきかな」
「残念ながら亀裂のボスは倒しきってるものの、溢れた魔物は駆逐しきれてないからね」
未だに被害は出てるので、冒険者は仕事に事欠かない状況なのだ。
加えて、暴れたら魔物の被害を受けた村だって一朝一夕に復興できるものでもない。
現状はジリジリとこちらの戦力が削られつつある日々。
亀裂もいつまでも戦えばいいかわからないしな――。
次か、その次か、十回か、はたまた百回か?
終わりが見えなければ、希望が見えなければ、それだけ不安は蔓延する。
まだ勇者として呼ばれた俺が負けてないから耐えてるが、これで負けたら一気に暴動とか起きそう。
早くラスボスについて調べてこっちから攻勢に出たいものだな。
「んで、次にクサリクが出るのは?」
「三ヶ月後に法国首都――メギドになるよ」
今度は法国での戦いか――。




