煉獄8
「おお! 無事だったか!! 無傷――とは言い難いが」
港に戻った俺たちを迎えてくれたのはアンジェラ筆頭に完全武装した冒険者達だ。
「さすが神条様です!遠目でもその力を拝見することができましたわ!」
「あれはまさに神代の力ですね」
「無事で何よりです。皆、戦闘に備えてましたが、必要なかったようです。魔族の艦隊も余波で壊滅して、残りは引き返しましたし」
ベルベットとエレノア、ケーティアも迎えてくれる。
「そうだな。煉獄が倒されても攻めと来てたら厄介だったが、退いてくれてよかったな」
「どうした? 元気がないな?」
「いや、そんなことはないぞ?」
俺は態度が顔に出てたのかと、慌てて笑顔を取り繕った。
せっかくの祝勝ムードに水を差したくはない。
「ふむ……それならいいが」
アンジェラは納得してないって感じだが、深く突っ込まずに流してくれた。
「神条様、祝勝会を領主様が開いてくださるそうですよ」
「ドレスも貸してくれますし、冒険者も招いて盛大に行われるそうですよ!」
「神条様と新しい勇者である月島様には勲章が授与されると思います!」
「帝都では帰ったらパレードとかありそうですね!」
ケーティア、エレノア、ベルベットは姦しいと言うか、その辺の女の子みたいに騒いでいるが、パレードって……。
「進君、勇者ってなんだか疲れそうですね」
権力や貴族なんてファンタジーの産物と思える現代世界の俺達はアイドルみたいな扱いはまだまだハードルが高いのだ。
「その内慣れるよ。帝都じゃ、外出も気を使うしな」
「慣れたくないですね」
俺の言葉に美海は引きつった顔を浮かべるのだった。
「それでもご馳走はすごいぞ!」
「それは楽しみですね!」
キラキラと目を輝かせる美海に俺は苦笑して、こんな食いしん坊キャラだったかな、と思いながら俺達は宿に戻って祝勝会の準備をするのだった。




