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マーリン


 ゴゴゴゴゴゴ……。

 

 重い音を立てながらリッチーの背後の扉がゆっくりと左右に開いていく。

 

 大量の埃や苔が落ちている扉はどれほど長く閉まっていたのだろうか?


 やがて、扉が開ききり、奥から一人の男性が姿を現した。

 

 青白い肌をした二十歳後半を越えたくらいの青年だろう。

 

 イケメンだ。

 

 優男って感じだが、身長も高くスラリとしており、穏和な雰囲気をしている。

 

 リッチーと同じような魔法使いっぽい格好で、なぜか時おり、半透明になっているのは目の錯覚か?

 

 あの扉が閉まっていた期間を考えるた普通の人間じゃないよな。リッチーが恭しく脇に避けたし……。

 

 あの青年が実はこのダンジョンの主なのか?

 

「驚いた。とんでもない魔力を感じて起きてみれば、こんなところで純血種の龍に会えるとは――。それに君はずいぶん変わった魂をもってるね。何者だい?」

 

 青年は俺とティアを興味深げに眺めていた。

 

 こいつ――俺がこの世界の人間じゃないと見抜いたのか?

 

「妾こそ驚きじゃ。エルダーリッチーとはこんな場所に引きこもっておるとはな。妾はご承知の通りの純血種――唯一の龍魔神であるティア・ドラグニエルじゃ」

 

 ティアも青年を興味深そうに眺めている。

 

 エルダーリッチー?

 

 リッチーの上位種族なのか?

 

 ステータス魔法を向けてみると、何故かレベルが表示されず???になっている。

 

 こんなのはじめてだな。

 

 いや、ティアも同じ様に表示されている。

 

 ティアと同レベルなのか?

 

 ティアが自己紹介したし、俺もした方がいいか。


「俺は神条進。一応、異世界から召喚された勇者だ。今は絶賛指名手配中だがな」

 

「私はマーリンだ。たぶん国の歴史を紐解けばでてくる賢者だよ。あぁ、こな国だと悪い魔法使いかな?それにしても異世界召喚が行われるとは――ずいぶん世界は危機的状況なんだね」

 

 マーリンた名乗ったエルダーリッチーは困った表情を浮かべている。

 

 それすら絵になるのは悔しいな。

 

 にして、異世界召喚ってそんなやばい時にしかできない魔法なのか?

 

 その割には舐めた真似をしてくれたわけだが――。

 

「まぁ、世界存亡の危機だとか言われたな。もう救うつもりはないが」

 

 勝手に召喚したと思ったら、嵌めた上に指名手配と敵対した以上は容赦しない。

 

 ティアの事は気がかりだが、とっとと元の世界にも帰りたい。

 

 てか、すでに勇者がいるだからそいつに頼れよ、とすら思う。

 

「それは――非常に困るな。しかし、どうして指名手配に? 勇者を指名手配なんて狂気の沙汰だと思うね」

 

「それはな――」

 

 俺はここに来るまでの経緯を全部話した。

 

 自称とは言え、賢者なのだがら何かしらわかるかもしれないし。俺の推測も伝えた。

 

「まったく……滅竜教会と王国は本当にどうしようもないな。ドラゴンはともかく龍にまで手を出すとは――」

 

 呆れながら呟いたマーリンの言葉に俺はまた違和感を覚えた。

 

 ん?

 

「竜――ドラゴンと龍は違うのか?」

 

「そうか。君はこの世界にはまったく疎いんだったね。龍とは世界の原初――創造神によりこの世界の均衡を保つために遣わされた存在だ。竜=ドラゴンはただの魔物だね。龍の血が悠久の時代の中で薄れ、力を失って魔物となった存在や混血の混血を重ねた種族だよ。ちなみに龍が一柱失われるたびに世界の崩壊が進むと言われている」

 

「おいおい……」

 

 そんな存在を倒すべきと言ってるのか滅竜教会は?

 

 正気か?

 

 思い切り世界の崩壊を助長させてるんじゃないのかよ。

 

「よくもそんな宗教が台頭できたな。普通なら異端として滅ぼされそうなもんだが」

 

 世界の崩壊を助長する教義なのに……。

 

「自分達に都合のいい教えを信じてる連中がそんな伝承を信じるわけがないさ。それに龍同士の戦争で人類の多くが滅んだのも事実だからね。龍を邪悪な存在、人類の敵とする者もいる。特に王国は龍殺しの英雄の伝説もあったから」

 

 かつて龍同士で戦争があり、その余波で人間達にも相当な被害が出たらしい。

 

 そこで立ち上がった人間が、龍を退け、英雄と讃えられた戦士とその時代の人々が作ったのが滅竜教会らしい。

 

 まぁ、あとは人間が弱い種族なので、団結力を束ねるために人間至上主義を謳ったのだった。

 

 共通の敵がいればまとまらやすいので、当時の最大の脅威だった龍を敵にしたのか――。

 

「そのために敵にされる側はたまったもんじゃねぇぞ。それに他の種族まで敵対してんだろ?」

 

 過去はどうあれ今はそんなことがないのに、敵視されてやられる方はたまったもんじゃないぞ。

 

「そうだね。だから、あの教会は王国以外だと衰退してるよ。それで君はこれからどうするつもりなんだい?」

 

「そりゃ、元の世界に帰れるのが一番だが、今はそれはまったく目処が立ってない。とりあえずは帝国に亡命かな?」

 

 亡命先で勇者としての待遇が期待できるなら異世界から帰る魔法についても調べられるかもしれない。

 

 マーリンは帰られたら困るって言ってたから教えてくれない可能性があるしな。

 

「ほぅ……共和国にではなくかい?」

 

「向こうもそう考えて警備をそっちに向けるなら逆方向へ逃げるのがいいんだとよ」

 

「いい策だね。強行突破してもいいがリスクも高い。とりあえずの国外逃亡なら手薄な方が成功率は高いだろうね」

 

 マーリンもティアの案に納得したのかうんうんと頷いていた。

 

「それでは早く発つべきだろうね。時間は有限。滅竜教会はブルースフィア王国の中では権力が強いが国外ならそうはいかない早くいくことをお薦めしよう」

 

「わかってるよ」

 

「起こして悪かったの。妾らはとく行くとしよう」

 

 ティアは優雅に挨拶を述べた。

 

 宝は諦めたのか。

 

 まぁ、マーリンからはまったく敵意がないし、普通に話してるから、倒すのは気が引けるからよかった。

 

 もしかしたら、エルダーリッチーがティアでも脅威だったかもしれない。ステータスの欄が???だし。明らかにボスキャラクラスの力はあるだろう。

 

 …………ここまではよかった。

 

 だが、次のマーリンの言葉に俺達の目が丸くなった。

 

「それなら急ぐとしよう。私もせっかくだし、外の世界を見たいからね?」

 

「「はい!?」」

 

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