目覚めた先で――
「あっぶなー、ギリギリでキャッチできたわ。まじでセーフ。危うく狭間に呑まれて消えるとこだったわぁ! ナイス私!」
騒がしい少女の声が頭に響く。
「うっく……」
頭いてぇ……。
二日酔いでもしたような頭痛に呻きながら目を開けると、見慣れた灰色の世界が広がっていた。
ジャバウォックに喰われた時は権能で甦れたんだが、今回は死んでないよな?
太陽と空も地平線もない空虚な世界に佇むのはたった一人だけだ。
「今回はなんでここにいるんだ?」
「いや、あなたが勝手に飛んできたのよ。しかも、そのまま別の次元まで飛んでいきそうだったから私がキャッチしてあげたのよ!」
俺はボールか何かかよ。
異空間を飛ばされてのを掴まえてくれたらしい。
「ありがとうございます?」
「なんで疑問系なのよ。感謝してよね。もし私がスルーしてたら別の異世界か次元の狭間に入り込んで消滅だってありえたんだから」
「本当にありがとうございました!」
まじで洒落にならん。
他の異世界も勘弁だし、消滅とか権能が発動するかもわからなんからそのまま死んでたかもしれん。
いつもふざける女神様も真剣な表情だし。
「それにしても魔皇ね。あの子の血まで持ち出して何してんだか」
女神様は話すまでもなくこちらの事情を知ってるらしい。
下界を覗いていたのかな?
「相変わらず物知りですね。てか、あの子って、もしかして慈母って奴を知ってるんですか?」
「まぁね」
伊達に三千世界を見通す女神様。ラスボスのことも知ってるのか!
「で、誰なんです? あの子って!」
「前にも言ったけど的確な助言は女神のルールに抵触するから教えられないわ。あなたをキャッチしたのは偶然だからまだしも。教えられるわけないでしょ」
「ケチだなぁ。世界存亡の危機なんだからそれくらい教えてくれよ。世界を護るのも神様の仕事じゃね?」
「誰がケチよ!もう帰りなさいよ! 神罰下すわよ!」
思わず漏れた本音に女神様は青筋を立てる。
「だいたい世界を創るまでが神様の仕事よ!護るのは勇者の仕事!でなければ、神が自分で創った世界を滅ぼそうとしたりしないわよ!」
「神が自分で創った世界を滅ぼそうとする?」
「あ……」
女神様は思わず口が滑ったって顔になったな。
だが、今のってかなり重要な話だぞ。
俺は女神様に顔を近づけ、
「もしかして、ラスボスの正体って――」
「あー聞こえない聞こえない!ほら、大サービスで進ちゃんがいた世界にちゃんと戻してあげるから!」
女神様は耳を塞ぎ、子供のように蹲り出したのだ。
いや、幼児みたいなことしないで話を――!
そう思って耳を塞いだ手を退けようたしたが、背中を何かに捕まれて足が浮いた。
「ちょっ!」
これって前と同じ……。嫌な予感が……。
「バイバイ! もう来ちゃダメよー!」
「待てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
止める間もなく俺は見えざる手によって前と同じように灰色の世界からぶん投げられることになった。




