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煉獄


 鯨竜の骨をベースに黒樺の木で造られた漆黒のガレオン船。

 

 十隻。

 

 艦隊とも呼べる船は全てが闇色でまるで黄泉から来た死兵の軍勢を思わせる。

 

 魔法で生み出した風を帆に受けて通常ではありえない進行速度で艦隊はキャスパ諸島へと向かっていた。

 

 一隻600近い戦闘員――と魔大陸産の強力な魔物だ。

 

 オーガと呼ばれる鬼人とは別の進化を遂げた鬼やナーガと呼ばれる半身半蛇の亜人やデーモンと呼ばれるコウモリに似た翼を生やした悪魔族とされる亜人など、魔物が混ざったような存在が乗り込んでいた。

 

 船はゴブリン達が水夫として奴隷のように走り回っていた。

 

「カカカカ、ついに俺達が大陸の人間どもを血祭りにあげる日がきたかぁ」

 

「俺達の先祖をあんな大陸に閉じ込めたことを後悔させてやろうぞ」

 

「人間は餌に、亜人どもは奴隷として使ってくれようぞ。祖先が同じでももはや奴等は別種よ」

 

 各々が得物を手にし、人間や亜人を蹂躙する光景を想像して凶悪な笑みを浮かべていた。

 

 貧弱な魔物しかいない大陸、レベルの低い脆弱な人種と亜人が蔓延る大地など敵にもなるまい。

 

 魔大陸の戦力と威を知らしめんと広がった大艦隊だが、それを上空で見下ろす人影があった。

 

「魔皇軍の威光をしらしめる艦隊だな。確かに壮観だが、爆撃でもされれば一溜まりもないぞ」

 

「爆撃って……ファンタジー感ぶち壊しですよ? それに対抗魔法くらいは準備してるでしょう?」

 

「いやいや、RPGとか隕石落とす魔法とかあるじゃんかよ。対抗魔法の程は知らんがな……」

 

「そう言えば、他にも流星群とかありますよね。この世界にあるかわかりませんが……。それに進君、そんな大魔法使えるんですか?」

 

 重力、風の異能で飛翔する俺と、飛翔の魔法で飛んでる美海は空中でそんなやり取りをしていた。

 

 艦隊が上陸前に俺と美海で先制攻撃をかけることにしたのだ。

 

 美海は俺と違ってこの世界の魔法もちゃんと使えている。

 

 …………羨ましい。

 

 ま、それはさておき……。

 

「隕石は無理だが、爆撃に近いものならあるぞ? ちなみに修得魔法は一つだけだからなないぞ。だがな……」

 

 ちゃんとSPは回復してる。

 

「アナザーコスモロジー解放!」

 

 全身を滾るような高揚感と気力が満ちていく。

 

 アドレナリンが溢れて獰猛な闘志に身体が熱くなる。

 

 俺は天空へと掌を掲げ――。

 

「開幕の一撃だ。防げるもんなら防いで見ろ! 我が下に来たれ勝利のために! 神光よ、天よりの降り注ぐ裁きの槍となりて罪人に裁きを与えよ!」

 

 燦々と輝く太陽とは別の太陽が中空に召喚される。

 

 白き太陽から伸びたフレアが白焔の槍となって艦隊めがけて降り注いだ。

 

「こ、これが権能ですか。初めて見ました。まさに神話級の異能ですね」

 

 『隔界』ならともかく、都市でこんなもの使えば、テロリスト扱いされるっての……。

 

「これでも魔王種は倒せないんだからあいつらはまじの化け物だよ。ま、ただの魔物なら倒せるんだが――」

 

 海面一面を焔の海に変えるほどの火力のはずなのだが、何故か半円の焔の壁に阻まれていた。

 

 白い焔が青白い焔に阻まれているのだ。

 

「地獄の業火である煉獄を冠した私に対して焔の攻撃とは――甘く見られたものですね」

 

 腹の奥まで響く様な重々しい声。

  

 地球のどんな温度よりも高い太陽の焔の中から、ゆらりと姿を見せたのは巨大な紅蓮の悪魔。

 

「まさか生きてくるとは……まったくしぶとい」

 

 口調が初めて会ったときよりも流暢になっている。

 

「煉獄――」

 

「権能が通用していないのですか?」

 

 名前から炎系統には耐性がありそうだと思ったんだが、権能が通じないのかよ。

 

「私が防がなければ今ので艦隊が滅ぼされていたぞ。人間風情がこれほどの力を得るとは――勇者とはつくづく目障りな奴等よ」

 

 憎らしげに俺たちを見上げた煉獄は牙を剥き出して唸った。

 

 

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