異常発生2
さらに猿の島から船で移動すること30分。
今度は平野の穏やかな島だ。
牛そっくりの中型の魔物がのんびりと草を食んでいる。
サイズは中型のトラック並の巨体なのだが。
メガホルスタイン
レベル37
普段は気性も穏やかで一部の地域では国運営で家畜化実験がされている。
何せ、一匹で俺の世界の牛の何十倍の食料になるらしいからな。
ただ、家畜扱いとはいえ、魔物だ。一度暴れれば死人がでるので、牛小屋で育てるのではなく、広大な空き地に放し飼いしてるらしいのだが。
オークが豚肉ならあれは牛肉だ。
意外とあっさりした味なのだが、しっかりとした牛!って感じ旨いのだ。
ちなみにこの世界で最も需要があるのは蛙肉だ。常に市場に多く出回っている。
低レベルで鉄を嫌う性質があるので、多少の装備を整えれば、簡単には討伐できる上に、繁殖力が強いので春と秋に至る場所で発生する。
ただ、蛙といっても山羊や人間の子供すら丸のみにできるサイズなので決して油断はできないのだが――。
食用魔物ですら、一般人が家畜にするには危険なのが世知辛い世の中だ。
それにしても、異常発生した魔物はここにはいないのか?
遠目で見るとただの穏やかな牧草地帯だ。
とてもじゃないが、冒険者を恐怖に陥れた魔物がいるとは思えない。
移動しながら探してみるか。
ここは密林とかないし、視界も開けているので見落としはなさそうだが――。
ステータス魔法でずっと見渡しているが、レベル40あるかないかの魔物しかいない。
どうなってるんだ?
一時間ほど歩き回っていた俺は思わず足を止めた。
「なんじゃこりゃ……」
丘を越えて下り坂になっていた場所で鉄臭い臭いが広がっていたのだ。
丁度窪地になっている所に横たわっているのはティラノサウルスに似た爬虫獣類の魔物でその回りには喰われたのかメガホルスタインの死体も転がっている。
死体にはすでに昆虫型の魔物が死肉に群がって食べていた。
彼らにはかなりの御馳走だろう。
見ている俺としては焼き払いたいグロさなのだが……。
こいつが異常発生した魔物だろうな。
この魔物だけ島で明らかに浮いているし。
鋭利刃物で首を一撃――いや、目が潰されてるから一撃ではないな。
それにこれって――。
「銃弾――か?」
しかも魔弾でもなんでもない9ミリ口径となると俺の世界でメジャーな銃かもしれない。
体内に残った弾も地球の物によく似ている。
この世界の銃は見ていないからわからないが、もしかして――。
(美海がいた?)
俺とともに飛ばされただろう面子で銃を使うのは彼女しかいない。
…………まさかな。
それなら顔を見せてもいいはずだし。
「ハッ! 俺たち以外にも凄腕がいるってことか?」
俺は妄想を笑い飛ばして次の島へと向かう。




