集う勇者
「すまないな、急に呼び出して」
朝一番に俺とケーティアはアンジェラの部下を名乗る戦士に呼び出されていた。
案内されたのは島一番の宿で、部屋も地球のスイートルームと大差ない豪華な部屋だ。
いきなり何事かと驚く所だが、今回の呼び出しは想像がついた。
朝から噂で食堂ももちきりだったからな。
「いや、呼び出された内容に察しがいくから大丈夫だ。昨日から噂になってる高レベルの魔物の出現の件だろ?」
「話が早いな。聞いた話では最低でもレベル60で最大でレベル80までの魔物も確認された。死傷者も多数だ」
美味しいはずのレベル上げが一転して地獄のハードモードに変わったな。
せっかく冒険者の戦力増加のためのイベントなのにこれじゃまた戦力が減るぞ。
「この島の魔物って活性化でもレベル50がいいとこって聞いてたんだが……」
「だから異常事態なのだ」
アンジェラは重々しい表情で地図を眺めている。
キャスパ諸島の島々が記された地図で、高レベルの魔物が現れた島にピンが打たれている。
十二ある内の半分以上だ。
俺たちがレベリングした島はピンから外れている。
運がいいのか悪いのか。
「レベル80ってなると、対抗できるのは俺とケーティア達『白の百合』とアンジェラくらいだろ。ベルベットとエレノアだと荷が重いな」
「だから君達を呼んだのだ」
ケーティアはすでに武装していて、ユグドラシル戦でいた他のパーティーメンバーも勢揃いしている。
「朝から別の宿にいたラディアス、ヘレス、ハンナも集めました。こちらは討伐にいつでも参加できます」
「うむ。協力感謝する。これは勇者、英雄レベルでなければ対処できない問題だ。故に神条にも協力願いたいのだ」
「俺も構わない。他の冒険者もこれじゃレベル上げにならないからな」
「うむ。それでは私と神条が島を五つづつ、『白の百合』には二つを頼もう」
「いや、比率がおかしいんだけど!?」
「何を言うのだ。龍をも殺した勇者がこの程度で驚いてどうするのだ。私と君はレベル100を越えてるのだから多く倒すのは当然だろう?」
何を言ってるんだ、と言いたげな顔で言われた。
くそ、正論だけに反論しずらい。
確かにそうなんだが――。
島五つって範囲すぎだろ!?
「大丈夫だ! やる気があればこの程度すぐに片付くさ」
「俺は根性とか気合いとかやる気で、どうにかする論は嫌いだなぁ」
「私は大好きだぞ! 分かりやすくていいからな! ハッハッハッ!」
爽やかなアンジェラなんだが、実は脳キンだったのかよ!
知りたくなかった事実にショックを受けながらも俺達はそれぞれどの島の異常発生した魔物を討伐するか決めていく。
勿論、レベル80代のは俺とアンジェラが、レベル60代の島をケーティア達が倒すことになった。
幸いにも担当の島は小さいのでまだ移動はましそうだな。




