キャスパ諸島
「浮かない顔だがどうしたんだよ?」
「もうしばらく神条様は魔物を流してもらえますか」
「そりゃ構わないぞ」
俺としては仕事が減るわけだし。
ケーティアは何か気にかかってるみたいだが、俺にはわからないな。
どうやらこの島はウガルムルが支配しているらしく、そこら中でウガルムルが襲いかかってくる。
しかも、狼と同じく群れで狩りをするので、一体ではなく必ず複数体で襲ってくるのだ。
その度に何体かは後ろに流していたが、二人は高威力の魔法で確実に倒していく――。
「はぁ、はぁ、数が減りませんわね」
「連戦、きつい」
なるほどな。
ケーティアがしばらく魔物を流させ続けた理由が見えてきたぞ。
「へばってるところ悪いがまだ二体行ったぞ!」
俺はわざと走ってきたウガルムルをかわし、後ろにいたベルベットとエレノアへと向かわせる。
ウガルムルも弱ってるのが目に見えてわかるので、先にそちらをとばかりに走っていった。
「この! ピアッシングファイア!」
「コールドラッシュ!」
慌てて魔法を放った二人だが、魔力を使いまくったらしく、しょぼい程の威力しかない。
当たって一瞬怯んだウガルムルだが、すぐに二人を襲おうと走り出そうとし――。
「戦技・扇空斬」
ケーティアの放った戦技に周りの木々もろとも上下に両断された。
「少し休みますか?」
「「お、お願いします」」
◆
「あなた達と私達の違いがわかりますか?」
近くに水場があったので、俺達はそこで休憩していた。
討伐数で言えば俺の方が圧倒的に勝っているのに、魔力はかなり残っている。
対して、討伐が少ないのに魔力切れになりかけたベルベットとエレノアにケーティアが質問していた。
「レベル、魔力の総量ですか?」
ベルベットが答えると、ケーティアは首を横に振り、
「それもありますが、仮に同じレベルだったとしても私も神条様も魔力切れは起こさなかったでしょう。その理由についてです」
「……魔力の配分ですか?」
「正解です」
エレノアの答えに今度は首を縦に振った。
「ウガルムルの能力なら魔法弓が二、三本あり、正確に急所を狙えれば簡単には倒せたでしょう。しかし、あなた達は何十本もの矢を一体倒すのにつかってしまっていた。相手と自分の力量を完全に見誤ったのです」
訓練なら別に問題なかったが、これは冒険者としては致命的だ。
ダンジョンなどで何も考えずに魔法をぶっぱなし過ぎて魔力切れになりました、では困る。
回復できない状況でそんなことになれば間違いなく魔物の餌にされてしまうだろう。
俺も相手が圧倒的に格下だから、その辺を気にする余裕があるのだ。
もし、ベルベットやエレノアと同じレベルでペース配分を考えれたかどうか――自信ない。




