顔合わせ4
「…………うぅ」
「はぁ…………」
「…………」
船室は分けられている。
さすがに女子三人の部屋にいたいと思わなかったし、一人部屋なので気楽なのだったが、様子見にいったら三人とも船酔いでダウンしてた。
この世界の船は揺れる。
まぁ、木造で帆船だからな。
地球の船と比べるまでもない。
俺は――状態異常耐性のおかげか、船酔いはない。
屈強な冒険者も結構伸びているし、デッキで海へ吐いてる奴等もいた。
「時間潰し……どうしようか?」
交流を深めようにも三人ともダウンしてるから話すのもな。
暇なので船内を歩いていたが、ぼんやりしてたので他の冒険者とぶつかりかけてしまう。
フードでスッポリ顔を隠しているが身のこなしにまったく隙がない。
かなりの高ランクだな。
「失礼」
ぶつかりかけた冒険者はすんなりと俺を避けたが、瞬間目に入った槍に目を奪われた。
細い銀色の槍。
手入れはされているが、それほどの得物でもない様に見える。
だが、あの槍――ユーリの持っていたアスカロンと同じ気配を感じたのだ。
まさか――。
「神器?」
思わず漏れてしまった言葉に冒険者は足を止めてこちらを見つめた。
「ほぅ……神器を知ってるのかい? 見た目は偽装してたんだが」
「何者だ? 神器持ちって勇者かよ」
「あぁ、名乗ってなかったな。私はアンジェラ。槍の神器勇者だ」
フードを脱いで素顔を見せたアンジェラはど偉い美人だった。
金髪紫眼の美人で、輝く金糸のような長髪がフードをとった瞬間に揺れた。
「参考までになんでこれが神器だとわかったんだ?」
「あぁ、前に見た神器と似た感じがしたからもしかしてと思ってな」
「なるほど……。神器を知っている人間には独特の気配が感じられるのか。それでは見た目で偽装する意味がなきな」
アンジェラはやれやれと首を振って呟いた。
まぁ、気配と言うか雰囲気は隠すのが難しいだろうな。剣と違って鞘とかないし。
布でも巻いておくしかないんじゃないのか?
「君も冒険者なのかい? 見たところ武器も持ってないようだが……。魔法使いにも見えないし」
「俺の武器は拳だからな。も、ってことはアンジェラも冒険者なんだな。やっぱりキャスパ諸島でレベル上げか?」
「いや、レベリングだな。私にはもうキャスパ諸島の活性化は大して意味がない」
「まさか俺と同じ立場の冒険者がいるとは驚いた」
いや、神器持ちなかありえるのな。和国、法国の勇者は越えてるらしいから、どっちかの勇者なのだろう。
「同じと言うと君もそうなのかい? 失礼……」
ステータス魔法で俺の能力を見たのかアンジェラは驚いて口を開けて呆けていた。
「レベル135……。驚いたのはこちらだな。神器もないのにその強さ――もしかして、噂の異世界勇者なのかい?」
レベルだけでわかるのか。神器は――『聖杯』はあるけど魔法の袋に入れてるし、得物じゃないからわからないわな。
「当たりだ。俺は神条進。異世界勇者なんてのをしてる」
「ほぅ!私以外の勇者は始めてみたよ! よろしくな! 進!」
竹を割ったような性格のアンジェラは敵意とか悪意とかは全くない。
めっちゃ爽やか系のお姉さんだな。
「あぁ、よろしく!」
俺とアンジェラは握手して笑いあった。




