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クサリク4


 天空から放たれたのは槍とも思える太さの雷の鞭。

 

 縦横無尽に放たれる無数の雷鞭は空を、木々を、大地を、容赦なく打ち据えて、切り裂いていく。

 

 破壊的な嵐が襲ったのは俺達だけではない。

 

 ビシャァァァァァァァ!!

 

 亀裂から溢れた魔物も悉く雷鞭に切り裂かれ、黒炭へと姿を変えていた。

 

「敵味方関係なしかよ!!」

 

「あれに知性らしきものはなかったからね。恐らく無差別に魔法を撒き散らしているんだろう。というか、あれにとっては味方の区別もないんだよ」

 

 魔法って言うか、権能レベルだな。

 

 都市の真ん中で撃てばそれだけで1つの都市を瞬く間に灰塵にできるぞ。

 

 ドドドドドドドドドドドン!!

 

 落雷の落ちた森は本来なら山火事になりそうだが、威力が高すぎるのか魔法的な雷のせいなのか、燃えることなく炭になってしまっている。

 

 舞い上がる土砂が背中を容赦なく叩き、轟音が鼓膜を震わせるがマーリンの背中を押して、なんとか耐えている。

 

「リッチーの魔力じゃなかったら魔力切れでとっくにお陀仏だったね」

 

「そんときは、俺があの雷を喰らってやるよ!」

 

「今はできないのかい!?」

 

「滅龍魔法の魔力が解除されてんだよ!」

 

 あのクサリクの咆哮で俺の強化状態が無理矢理解除されてしまったのだ。

 

 もう一度かけ直せばいいが、解除された瞬間にあの落雷を受けたら――。

 

 考えたくもない。

 

 なので、今は凌ぐしかないのだ。

 

 空間までも軋ませているらしく、転移で逃げるのも無理。

 

 てか、この世界は転移の制限や条件が多くて不便だぞ。

 

 そうこう現実逃避している内に雷鞭の雨が徐々に弱まっていく。

 

「もう少し――」


 バリバリバリィ!

 

 止めとばかりに一際大きな雷が轟き終えると、空に張られた魔方陣が消えていく。

 

「収まったようだね。あと少しで魔力切れだったよ」

 

「クサリクは!? っ!!」

 

 マーリンの盾から顔を出した俺は絶句した。

 

 山が浮かんでいたのだ。

 

 いや、クサリクが浮かんでいたのだが、あの巨体で、しかも牛なのに空に浮かぼうなどと誰が考えられようか。

 

 まるで飛び立つ飛行機の様に四肢が折り畳まれ、重力を無視してどんどん高く浮かび上がっていく。

 

「くそっ!」

 

 クサリクはこちらに見向きもしない。

 

 今なら――。

 

「ユグドラシルを焼いた魔法はやめてくれよ。あれが墜ちてきて下敷きになっても、魔力がないからどうしようもない」

 

「わかってるっての!」

 

 マーリンに釘を刺された俺は堂々と空へ――亀裂へと吸い込まれるクサリクを睨むことしかできなかった。

 

 唯一の救いは空の亀裂もクサリクが姿を消したのと共に閉じたことだろうか。

 

 だが、残された巨大なクレーターと見渡す限り焼け焦げた森はまったく笑えない話だった。

 

 

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