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今日から学校と仕事、始まります。②莞

家族に配達員が加わります

作者: 孤独

「桑田さん、荷物でーす」


そーいう事は突然に起こる。

4年、5年。何事もなく、いつも通り、間違いなくやっている時の事だ。


「コラーーー」

「はい?」


住所は合っていて、苗字名前共にその家に違いないのだが。


「息子はもう引っ越しとるんじゃ!それぐらい分からないのか!?」


いや、一昨日。荷物渡した時、何も言わなかったやん。

ってツッコミ。

相手は軽く言っているんだろうが、なにやら読めん怒声調。大方、家族内で上手くいっておらず、何かできないモノ、コトがあると怒り出してしまうんだろう。

そーいう原因の1つに家族内の変化がある。


「息子さん越したんですか」


感慨深い事である。12年前からこの地域を配達し、息子さんがまだ中学生ぐらいかな。そんな子がもう立派な大人になって、独り立ちしているのを知ると時間の流れは早いなぁと思い。荷物を渡す時ぐらいしか声をかけないが、頑張れよーって応援したくなる。

やってて良かったって思う仕事だ。この一瞬だけは……。


「今度から息子の荷物、息子の方に届けてくれぇ」

「へいへい。まー、住所を直すの伝えてくださいよ。これじゃあ、こっちの方に来ちゃいますから」



そんなわけで息子さんの荷物は新住所に届けるわけなのだが……。


「おーい!住所変わってねぇぞ。同じ地域だから良いけどよ」

「どーします。山口さん」

「……親父の奴が息子の荷物は、息子の家に届けろって言うしな。そっちに行くしかねぇだろ」

「でもあそこ、宅配BOXないし。不在になるんじゃないっすか?」

「かもなー、ま。怒られるよりか良いだろ」


とはいえ、息子さんは独り立ち。つまりは配達員と同じ働いている者。当然、昼間にいるわけもない。夜の再配達でよーやく会った時、息子は言う。住所を指差しながら。


「あー。親父がなんか言ってたみたいですけど、実家でいいんすよ。そーしてくれ」

「はい?」

「再配達って大変じゃないですか。親父、退職してずーっと家にいるから荷物の受け取りぐらいやって欲しいんだよね。分かるじゃん、自転車で3分くらいの距離なんだぜ」

「………ごもっともですね。感謝します。じゃあ、住所通りに配達しますね」


仕事をする身だからこそ、分かるものだ。仕事の苦労を知ってくれているから、息子さんは荷物を実家に送っている。独り立ちという形で両親と近くで別々の暮らしをするのは、珍しい事でもない。

そんな息子さんのご好意と、配達の基準に沿って、実家の方に配達しに行けば。


「だから息子の荷物は、息子の家に届けんかーーい!!」


こうなるのである。


「どーいう仕事をしてるんだ!お前は!!ここには住んでないって言ってるだろうが!!ポンコツかテメェ等!!」


俺達が悪いのかよ。なんだよ、この無限ループ。

こんな家族騒動に振り回されるのが、我等が配達員である。


「お前等みたいな小学生以下にも分かるようにしてやる!”桑田の息子の荷物は、息子の家に届けろ”ってポストに書いておいたからな!!読めるよな!?」


字を読めるかどうかは聞いてないんだよ。あんた等の関係がどーなってんだよ!!

そもそも住所はこっちなんだぞ。息子が住所直すか、親父が受け取るか。が問題なんだろうが!住所違うから荷物を返してもいいんだぞ。いないって言うから、荷物を返してもいいんだぞ!

そんな憤りを心に留めながら


「ワ・カ・リ・マ・シ・タ」


カタコトで承諾する山口兵多であった。


「分かるわけねぇーーだろうが!!こっちは荷物届けに行くだけなんだよ!!家族構成以上の事なんか分かるわけねぇーだろうが!!」


客の前ではとてもとてもキレられない。

こんな荷物のやり取りを気に、家族の仲はさらに悪くなったという。息子さんはとりあえず、荷物を受け取りたいので宅配BOXを買ったそうだが。この購入は親父のせいだという事で親父と喧嘩をしたらしい。親父は親父で息子がちゃんと受け取らないのと、配達員の不手際があると言う。

そして、両方から配達員の悪さを指摘される。まぁ


「なんでどっちも配達員が悪いとか、関わっているとか言うわけ!?関係ねぇーだろ!!どー考えても関係ねぇ!むしろ、被害者だわ!!」


理不尽なものである。ある一定の家族からすると、家族の状況は周りも知っていると思われているんだろうか。そんなこんなで息子の荷物は、住所が実家だとしても、息子の家に行く事で解決した。ただ訪れる箇所が違うだけなのだが、ちょっとした労力が掛かるものだ。

そんなこんな事件から約2年後。



「およ?」

「どーした」


一度起こった、妙なクレームは消せないものである。まーた、桑田さんの家に荷物なのであるが。


「奥さんの名前ってこれでしたっけ?」

「あー?いや、この名前は聞かねぇな。なんだろな。とりあえず、しょうがないけど。親父さんに聞いてみるか」

「えー」

「奥さんが出てくるかもしれねぇよ」


とは言っても、そー上手くいかないもの。

頑固親父は知らないのかと相変わらず、怒鳴り気味。あの頃よりもさらに息子との仲は悪化しているらしく、


「これは息子の奥さんのだ!!名前の載せねぇーっとわかんねぇのか!!このバカ共は!!」


2年経っても、住所を代えない息子と似てるんだよな。

そして、また。そんなミスなのか、ミスでもないのか。クレームを挙げられ、挙句の果てにさらなる家族の仲の溝ができ、配達員が怒られるという始末。いやもうなんなんだ。


「今度から知らない桑田の荷物は、息子の家に届けよう。もうコリゴリだぜ」

「そーっすね」


そこから1年後。

まーた、知らない名前の桑田さん宛の荷物。迷うことなく、息子さんのお宅に届けに行くか。あいにくのご不在。そして、荷物は


「生ものか。宅配BOXに入れるわけにもいかねぇな」


しょうがなく、不在票を入れてその場を去る山口。どうせ夜の再配達でまた訪れるだろうと、思っていたが……珍しく来なかった。奥さん共々、帰宅できなかったのだろうか。

だが、翌日。


「儂の孫宛の荷物が、なんで息子の家に届いておるんじゃーー!住所見てんのかーーー!!」

「いや、知らねぇーーよ!」


ご丁寧にクレームが入る。

どうやら息子さんの子供。つまりは孫の荷物だったようだ。中身が出産祝いの商品だったのは分かるが、


「ポストに名前書いてないのは、息子の家に届けてくれって……」

「そんなもん付けとらんわ!!桑田と書いてあったら、桑田の家に届けるのが当然だろ!!住所も読めんのか!?それでプロなのか!?恥ずかしくないのか!?」


こいつ、外しやがったな。そもそも毎日、見てるわけねぇーだろ。


「これからは息子達と孫と一緒に暮らすんじゃ!!いつまでもロクな仕事ができん奴等が地域におっては、その地域の子供達に示しがつかんじゃろうが!!分かってんのか!!」


それから桑田さんの家は、親父と奥さん、息子さん、その奥さん、そのお孫さん。仲良く5人暮らしで生活している。あれこれあったけれど、息子の成長と結婚、孫の誕生を気に息子さんから和解の挨拶をし、穏やかに暮らすようになったとさ。親父さんもこの電話を最後に、優しい性格に戻ったという。

家族が増えるとは、それだけ人を変えて、幸せにするものなのである。


「おーーーい!ここに不幸しか背負ってない連中がいるんですけどーーー!!」


人は人に振り回されながらも、幸福のために集まり、許し合うものなのであった。

家族の絆とは誰が想う以上に、光り輝いて強いのだった。


「全然許されてねぇーから!!いい感じに〆ようとしても、俺!不幸だから!!なんでこいつ等が救われてんだよ!」


それもまた人生なのである。他人を悲願でばかりじゃ、幸せはやってこない。


「理不尽こそが人生だろうがーー!」


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