お嬢様は軍師様! 番外編
某アニメを見ていたら、思い付きました。
タイトルでわかるかも・・・。
「これから鬼ごっこをします!!」
ここはヴィクトリア領土にある訓練所。
本日の天気は晴天。
空は雲1つない、青い空が広がっている。
そんな中、ヴィクトリア領の軍師であるアメリアが、朝早くから兵士達を訓練所に集め、高々と宣言をした。
「「「・・・は??」」」
兵士達のほとんどが顔をぽかんとし、何を言っているのか理解していないようだ。
(まぁ、そんな顔をするわね・・・。)
アメリアは兵士達に気付かれないように、平常心でいようとしたが、口元のニヤニヤが止まらず思わず羽扇で隠した。
「あの~鬼ごっこと言うのは、子供の遊びだと思いますが・・・。」
兵士の1人が、右手を恐る恐る上げて質問をした。
確かにそうだろう。
朝早くから訓練所に集まって来てみれば、鬼ごっこを行うと言われた。
鬼ごっこを知らない訳でもない。
むしろ、全員が知っている。
誰もが幼い頃、近所の子供と集まって遊んだものだ。
それなのに何故、大人になってからも鬼ごっこをしなければならないのか。
他の兵士達をだってそう思っているはずだ。
「鬼は3人。練習用の武器も使用可。逃げてもいいし、戦ってもいいわ。複数で鬼に立ち向かってもいい。」
「なんだ、その決まり事?」
「簡単じゃね?」
「鬼はたったの3人だろ?直ぐに倒せるんじゃね?」
あまりにも、兵士達に有利なルールを聞いて、やる気が出てき始めている。
1人で鬼に立ち向かおうと考えている兵士もいるし、他には周りの兵士達を相談して作戦を立てている者までいた。
さっきまで、バカにしていたのが嘘みたいだ。
しかし、その余裕も次で一瞬にして消えるだろう。
「では、私が羽扇を降ろしたら始めるからね。因みに鬼はバエイ・ロン・フェイだから、頑張ってね!」
(((え・・・・。)))
「じゃあ、始め!!」
「「「「逃げろーーー!!!!!」」」」
アメリアが羽扇を降りおろした瞬間、一斉に兵士達が逃げ始めた。
「ちくしょー!最初から怪しいと思ったはずだぜ!!」
「隊長達を相手に出来るかっ!」
「騙された!!」
兵士達は如何に早くバエイ達から遠くに逃げようと走り出したが、ここは訓練所である。
隠れる障害物もない。
広いが、高い壁で遮られている。
当然、端に逃げようとしても、まる見えなので隠れる ことなど出来ないし、逃げきれる事さえも出来ない。
後は、バエイ達に倒されるか立ち向かうしかないのだ。
でも、相手は隊長達。
勝てる自信などは、全くない。
「どうするよ・・・。このままだと隊長達に倒されるぞ・・・。」
「待てよ?お嬢様は複数で立ち向かってもいいって言ったよな・・・。」
「あぁ、確かに。」
「全員で立ち向かってもいいはずだよな。」
確かに隊長達は強い。
バエイ将軍はスキがない強さ。
ロン隊長は攻撃の手数と速さ。
フェイ隊長は不意討ちや死角からくる攻撃。
1人で立ち向かおうとしたら圧倒的な差で瞬殺されるだろう。
少人数もまたしかり。
しかし、兵士達全員で迫ったら・・・。
いくら相手が強くとも体力が続くわけもないだろう。
もしかしたら、1人位はどうにかなるかもしれない。
そう、思った。
「なんだ。来ないのか?」
(((やっぱり恐いです!!!)))
前言撤回。
ちらりと後ろにいるバエイ達を見た瞬間、さっきまでの希望が一気になくなった。
「では・・・。」
「こちらから・・・。」
「行くッスね!!」
「「「「ぎゃあああぁぁぁぁ~~~!!」」」」
******
数時間後ーーー
「どう?今回の訓練は?」
「兵士の鍛えがいのある訓練でしたな。不定期に取り入れた方が良いかと思いますな。」
「そうですね。いい経験になると思うかと・・・。」
「ハハハ・・・。」
アメリアが全体を見回すと地面には倒れた兵士達で一杯となっていた。
時々「う~」とか「あ~」とか兵士達の唸り声が聞こえるが、少ししたら回復はするだろうし、念のため医療部隊を要請したから、そのままにしておこう。
「今回は兵士達の基礎戦力をあげつつ、戦場なでの場馴れを目的で行ったの。」
「そんな事を考えていたとは・・・。」
「おじょー、すげ。」
そのアメリアの思惑通りに兵士達は、強い敵に対して最も最善の行動に走り、剣を交えても致命傷になる攻撃を必死になって防いでいた。
「これからも鬼ごっこやりましょう!!」
(((((じ・・・地獄・・・・。)))))
ヴィクトリア領では、後にこの訓練の事を地獄の鬼ごっこと呼ばれるようになった。