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悠太はそのアイスを分けて、一つを沙紀に差し出した。
「え……?」
わけが分からない沙紀は戸惑うばかりだったが、悠太との長い付き合いゆえに、すんなりとそのアイスを受け取る。
「……どういうこと?」
頭の中にクエスチョンばかりが浮かぶ沙紀は、悠太と手元のアイスを交互に見ながら悠太を窺う。
「半分のアイスの相手は俺にして」
悠太は沙紀を真っ直ぐに見つめながら、そう答えた。
「悠ちゃん……?」
いつもと違う命令口調の悠太の顔は、少しばかり赤い。
そこでようやく沙紀は理解した。
「なんだ。悠ちゃんも半分にするアイスが食べたかったんだ」
「は?」
「これ美味しいよね。チューブ型アイスのコーヒー味」
チューブのフタを掴んでちぎり取り、沙紀はさっそくアイスに吸い付く。
「うーん! 最高!」
一大決心して伝えた気持ちが全く分かってもらえず唖然とする悠太は、ただ沙紀を眺めるしかなかった。
「これシャクシャクして、ふんわり感じるコーヒー味が美味しいのに、二本で売ってるから一人だとなかなか手が出せないんだよね。値段的には他のアイスと変わらないから二本食べられてお得感はあるんだけど、外にいる時に一人で食べるにはなんだか食いしん坊感が出ちゃって恥ずかしくてさ」
ニコニコと語りだす沙紀の勢いは止まらない。
「誰か誘うにしても相手にだって好みがあるから毎回お願いするのも気が引けるし、その点、悠ちゃんと私なら昔からチューペットを半分にして食べてた仲だし、そんなに気兼ねしないで半分に出来るよね。値段も半分になっておこづかい的にも優しいのが嬉しい。あ、このアイスのお金がまだだった」
財布から半分の金額を取り出した沙紀は、アイスを口にくわえながら悠太の手を掴んで渡した。
「はい半分」
悠太はそのお金を見つめたまま、ただ黙っている。
「どうしたの悠ちゃん? アイス溶けちゃうよ?」
きょとんとした顔の沙紀を見て、悠太はいきなり頭をかきむしり、盛大にため息を吐いた。
そして、沙紀に飽きれ顔を向けた。
「沙紀ちゃん……。いや、沙紀はまだまだ子供なんだ……」
「え?」
突然の呼び捨てに面食らうも、沙紀は子供呼ばわりされたことにムッとする。
「子供ってどういうことよ! まだ小学生の悠ちゃんの方が子供じゃない!」
先ほどまで、悠太が自分より早く大人へ進んでいることにショックを受けていたことはすっかり忘れ、沙紀は子供扱いされたことにご立腹だった。
「あ、その悠ちゃんってやめてくれる?」
「え?」
子供扱いしたことをさらっとスルーした悠太は、急に注文を付けてきた。
「悠太って呼んで」
「何で? ずっと悠ちゃんだったじゃない」
沙紀は首を傾げて、いきなりどうしたのかと悠太を窺う。
「いいから。悠太って呼んで」
悠太は笑顔で返すが、目は笑っていなかった。
「ゆ、悠ちゃん?」
「ゆ・う・た」
沙紀が困惑して悠太を呼ぶも、名前で呼べとばかりに強調して戻してくる。
どうしようもない沙紀は、口をつぐんで悠太の様子を見るが、その態度は変わりそうにない。
何で急にこんなことになっているのか分からなかったが、とりあえず沙紀には頷く以外の選択肢はなさそうだった。




