クリアリッド族
少し長めにしました。
暗くて狭く足場も悪い洞穴の中、その先から微かに聞こえる声。その特徴的な声の主を雲は知っている。それはクリアリッド族以外にはあり得ない。
クリアリッド族の姿は視認できず、声を聞くこともできないと言われている為、存在を知られていない。
彼らはいわゆる小人と呼ばれる存在であり、彼らの声を聞くことができないのは、彼らが語りかけていることに気付かないことが多いからだ。
「クルナココヘクルナ」
「まさか本当に実在するとはな」
雲は閉じていた目を開き、歩きにくい道を再び歩みはじめた。
「ナゼチカヅイテクル」
「なんであんたたちがこんなところに居るんだ。クリアリッド族は草本層の植物が多い地域に棲息するんじゃないのか?」
「クワシイナ、シカシ、ワレワレヲ、ココニオイコンダノハ、コノヤマニツドウ、キサマ、ラニンゲンドモノセイダ」
「悪いが、俺はこの山に来たばかりだ。だが、あんたたちの事情を詳しく知りたい」
「シンヨウナランナ」
「この山には、本来街なんて存在しないそうだろう。俺は何故街ができたのかが知りたい」
「キサマラ、ニンゲンニ、ハナスコトナドナイ」
「ワレワレガ、シンジルノハ、イマハナキ、ヒモトノタミダケダ」
「俺はヒモトの生き残りだ。他にもいるヒモトの人間は潰えちゃいない」
「カレラハ、モウドコニモイナイ」
「ワレワレガ、シンライシ、トモニイキテキタ。カレラハ、ナクナッタ」
「スグニデテイケ」
気が付くと雲は洞穴の奥にある壁の前まで来ていた。洞穴はずっと一本道だったために迷ったという可能性はない。
「また、来る」
そう言い残して、雲は来た道を戻っていった。
───────暫くすると入口の方から凄い悲鳴が聞こえた。雲は、少し驚きすぐに走っていった。
雲が華たちの到着した時に目の前にあったのは、洞穴の壁に氷で固定された照弥と何やら眼に涙を浮かべて頬が赤みがかっている華がいた。華は腰を掛けるのに丁度いい石の上に座りながら、自分の両肩を抱くような体制をしていた。
その現状を見て雲は(なにしてんだこいつら)と思った。
「取り敢えず何があったのかを聞きたいんだが、その前にこの氷溶かしてやってくれ」
今にもこぼれ落ちそうなき涙に恥じらいの赤みがかった頬、睨み付けるような眼光をした華は、間髪入れずに拒否した。
「絶対に嫌」
華の態度を見て雲は一体何があったのか大体の検討がついた。
(照弥の奴なにかしたな)
雲は氷で固定された照弥を見て念のためにある確認を一つした。
「照弥生きてるかー?」
「ギ、ギリギリ、でも、たづけて、さ、寒い」
照弥の反応を見た雲は、「よし」と言い助けるかと思いきや何故かその場に座りはじめた。
「寒さを感じてるなら、多分まだ死にはしないだろう。何をしたのか聞くから正直に答えろ」
この瞬間、照弥は雲の事を改めて認識した。
(鬼かお前は!!)
「黙秘した場合は、華が強制的にその氷の温度を更に下げるから」
(恐っ!!)
「因みに、嘘ついたら氷の温度を絶対零度まで急降下させるから」
(悪魔!!!)
雲はニッコリ笑った表情で照弥を見たが、照弥にはそれが、悪魔微笑みにしか見えなかった。
「まず、華に何をした?」
「め、目が覚めて、寒かった、から、暖めて、ほしいと、言った、ら、、毛布の、お、お、温度を、上げて、暖めて、くれた、ときに、華も寒そうだな、って思って、毛布広げて、抱きつこうと、しました」
半分泣きながら言っていたので真実味は帯びていたが、念のために華に確認しようと雲は後ろを向いた。しかし彼女の表情がまだ途中までしか言っていないと主張しているようだったのでもう一度確認することにした。
「そして、そのあと何をした?」
「体の、至るどころを」
「触られた」
深く溜め息を吐き、雲は軽蔑を表すような眼差しを照弥に向けた。
「それは、女性なら誰でも怒るわ」
「本当にずみまぜんでしぃだぁぁぁぁ」
これを期に、照弥には軽はずみな行動をやめてほしいなと願ってやまない二人だった。
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