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消えかけの人々  作者: 蓮之都
序章 出会いと別れ、決意
3/22

遭遇

前回の長文を反省して少し短めにしてみました。

それでも

読んでくれると有り難いです。

クラリフォール内に入ることができた俺達は別行動にすることで、より早くMIRACLEに関わる情報を集めることにした。

見つかったら大変なんじゃないかって。

幸運にも俺たちの見た目は一般人と大してそれ程差はない、エルフやドワーフのように身体に特徴的な部分があるなら、ローブで身を隠していただろう。

そのため、人だかりの中からヒモトの民を見つけることは雲をつかむような話だ。

つまり潜り込んでしまえば此方のものというもので、幾ら防壁省や神魔教団がヒモトの民の対策をしようと元も子もないのである。

人ごみに紛れ込んで周りの人たちの会話を聞く、それだけでも意外と多くの情報を知ることができる。

そのために、俺はあるところに向かった。

狩猟会(ハンターズ)の建物だ。

凶暴な獣を狩りそれを収入源に生活する猟師たちが、世界各国の村や町からの依頼・要請によって各地を行き来するため、数少ない情報が集まりやすい場所だといえる。


狩猟会の建物に入ると俺はカウンター席に座った。

猟師たちが依頼を終えてすぐに休めるように、宿舎や飲食店、武具・防具を取り扱う店などと一体化しているようだ。


しかし、相変わらずむさ苦しいところだ。

周りを見ると自分の武器を手入れしているものや、酒の飲みあいをしている奴らがいる。


「何かご注文はございますか」


カウンターで料理や飲料を提供していた女性定員が一通りの仕事を終えたのか、席に座って何一つ注文していなかった俺に尋ねてきた。


「依頼書一覧と何か早く食べられて腹持ちのよさそうなものを」

「畏まりました。少々を待ちください」


手渡しされた各国からの依頼書の束を受け取り、ゆっくりと眺め読みしながら周囲の猟師たちの会話に聞き耳を立てる。


暫くするとテーブル席で会話する猟師たちが現れた。

ザリエ大陸の南端にあるブリュルグと南のモーレス大陸の帝国の貿易や、メルド運河を巡るブリュルグの西に位置するラー・ストリアとの交戦の危惧、神魔教団が本部を置くエルロー教皇国と一年中厳しい環境下にある工業国家ベルハイトが技術協定を結んだなど、この街に訪れていないと知り得なかった情報が手に入った。


(有益な情報をどうもありがとう)


店員から食事を受け取り依頼書を捲りながら食べ進めた。

すると隣の席に座ってきた二十代の男が話しかけてきた。黒のコートに黒のハット帽、ガタイが良いというわけではないが、この場にいる会員とは違う、徒ならぬ存在感がにじみ出ている。歴戦の覇者とは別の嫌な気迫、狩猟会の人間ではないのだろう。


「仕事探しかい兄ちゃん」

「まぁ、そんなところかな。ところでどちら様」

「悪い悪いマナーがなってなかったな。俺の名はゴレアだ。よろしく」

「クモと言います。で、一体何の御用でしょうか」

「なぁに大したことじゃない、俺の仕事はある一定の物事について調べてその内容を教えることなんだ。所謂情報屋だな、この街は情報収集がしやすいから情報屋にとっては砂漠の中のオアシスみたいなもんさ。だが分け合って滞在中でな、仕事にならないんだよ」


なるほど、確かにこの街は情報収集()()最適だ。

しかし、その分情報屋にとって情報提供を行う上では都合が悪い、住民にとっては最新情報なんて周知の事実みたいなものだろう。

国家間の機密事項などではない限り、情報屋に仕事など頼まずとも自ずと知りたい情報なんて耳に入る。

そのためクラリフォールで長期間に及ぶ滞在をする情報屋はいないと聞く。


国の大臣や宰相のような位置にいる人物がいるなら別だが、なにせ情報保管管理都市と呼ばれているクラリフォールはたった一つの街で国が成り立っている共和国なのだ。

国と名乗っているから共和国とはいえ君主は居なくとも君主のような位置に立つ者はいる。

だが居るには居るのだが、その立ち位置に居るのはこの建物を管理する人物。

つまり、狩猟会会長のことだ。

クラリフォールは情報が集まりやすく、そのため狩猟会への依頼や要請なども集めやすいという意味で狩猟会会長がクラリフォールの国家間での代表を務めることを各国の代表が満場一致で賛成したのだそうだ。


狩猟会が各国に支部を置いている為、各国は凶暴な獣に対処ができない場合などに狩猟会から救援がもらえ、その対価としてクラリフォールは不可侵を守られている。

クラリフォールに進行するような国があったとしたら、その国は近いうちに他国によって滅亡への道を辿ることとなるだろう。

それ程までに各国からの信頼が機密情報という形の存在を握っていることが、クラリフォールという一つの国の存在が認められている証明ともいえる。

そのため情報を手にしてクラリフォールを離れる情報屋は少なくない。


「成程、で自分に何か用ですか」

「そうそう、仕方なくこの街を離れることはできないから、違う仕事をやることにしたんだ。黒髪とその閉ざしたままの左目、灰色の瞳、そして先程確認させてもらったクモという名でこの人だと理解できたよ」

「「繰り返しの誤り事」」


ゴレアと俺の息がぴったりと合い同じ言葉を告げていた。

それもそうだ、彼はおそらくMIRACLEが俺たちに伝言を伝えるときに、仕事としてを受け取った使者は皆この言葉を合言葉として用いるように言われている。

そして、MIRACLEが俺に使者を送るときに皆同じ特徴を教えてもらうのだろうな、お陰で直ぐにMIRACLEからの伝言だと理解できる。


「伝言を聞きますよ」

「話が早くて助かるよ」

「慣れているので」

「『動き出した。いずれ始まるだろう。リンリアに迎え。集うとき近々訪れる。』以上だ」

「なるほど、助かりました。どうぞ」


俺は情報料として十日分の宿泊金を渡し狩猟会を後にした。今回は漸く手に入れた情報を元に同志達との合流を終えて、如何に打撃を与えるかを思考し実行に移せるかが今後の問題になるな。


情報が意外とすぐに手に入ったので、早くヨカと合流して今晩の宿を探しをしておきたいところだが、約10m後方から何者かが尾行してきている気配を感じた。追跡されていることに気づいてしまった以上、このままヨカと合流するわけにもいかない、仕方なく人気のない脇道へと進むことにした。

勿論、走って撒くことができるのであれば、それに越したことはない。 

だが、当然、進む先がどこに繋がっているかなど俺が知っているわけもなく、案の定行き止まりになってしまった。

ご丁寧に後ろをついてくる輩を歓迎するしかないようだ。

踵を返して待ち伏せすることとなった。

追手が暫くして到着したので、取り敢えず用件を聞いてみることにした。相手の息も上がっているみたいだし。


「何か用か」


「あんた何者だ、脇道に姿を消したから追跡してみたら、尾行したときよりの2,3倍近い距離を取られてて追いつかねぇかと思ったぞ」


少し早すぎただろうか、一割も本気を出していなかったんだが。


「なぁ。あんたなんで人目のつかない道を選んだ」そんだけ足が速けりゃ別に脇道に逃げる必要なんてなかっただろう」


少し落ち着いたのか、追手の一人が口を開いた。


「そんだけ足が速けりゃ別に脇道に逃げる必要なんてなかっただろう」


「確かに脇道じゃないほうが逃げるという点においては得策だろうな」


「じゃあ」

「あんたらが兵士だったならそうしてたよ。でも、あんたらはどう見てもへいしっていうよりは、ごろつきや盗賊ってほうがしっくりくる身なりだ」


唖然としている追手たちを見て、実際に休暇の兵士だったとしたら集団では行動しないだろう。と思ったがこの人たちの目的が分からない以上、口数を減らすことに越したことはない。


「で一体何の用なんだ」


無用な争いごとはできれば避けておきたい。

最後まで読んでいただき有難う御座います。

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