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消えかけの人々  作者: 蓮之都
一章 死線を越えて
13/22

剣狼の遠吠え

照弥VSガンリュー決着!!


今回を最後まで読んで頂ければ嬉しいです。

気力、体力共にガンリューの方が上かと思われるこの勝負において、一度ならず二度も立ち上がった照弥の精神力はガンリューを死んでも倒したいという確固たる覚悟からだった。また、ガンリューもクラリフォールとリンリアで既に三度剣を交えていた為、回数が重なるにつれ一撃一撃が重くなっているのに気付いていた。


「一撃だ。俺もお前も次の一撃を食らった方の命が尽きる。決闘みたいじゃねぇか!!ヒモトの人間が扱う抜刀術ってやつを俺がやってやる。俺が六武将に成れたのもこの抜刀術で這い上がって来たからだ。行くぞ」


ガンリューは剣を鞘に収め、直ぐに剣を抜き出せるように剣の柄と鞘を握り姿勢を低く構えた。


ガンリューは自分が出せる最高速度で間合いを積めた。


(今の俺に、ガンリューに拳を届けることはできない。ガブリエルあんたの力を俺に分けてくれ)


「暗闇に潜む一点の道筋、絶望に彷徨う希望、その心に眠る闘志は照され、理想を求む光と化す。神々《こうごう》と照らす光よ、我が言霊に呼応し叩け奪いし者のその心を!!」


勝負は一瞬だった。照弥は右腕を伸ばして手を広げた。すると眼にも止まらぬ速さでガンリューを射程内に入り込んだ。ガンリューはすぐ剣を抜こうとすると照弥は右手で剣の柄頭を抑えて瞬時に左の拳をガンリューの体にめり込ませた。その威力によってガンリューは体を吹き飛ばされ壁に押し付けた。


「勝っ......た。」


照弥はその場に倒れ込みみ意識を失った。すぐ華と響が近付き照弥の状態を確認していた。体の出血が多く呼吸も荒かった。


「照弥!!」


照弥を抱き上げるが出血が止まっていないため、容態が非常に悪いことを知り響に訊ねた。


「ねぇ響!!外には出られるの?」


「あぁ雲が東門を開けてくれたよ。直ぐに合流しよう。照弥は俺が背負うから」


照弥の傷口を華は氷で塞ぎ、響は背負って走り出した。

二人がその場を離れてからすぐに、華が創り出した氷塊に罅が入った。次第にその罅は広がり氷塊は砕けた。中にいたフェロニアはそのまま落下し、何もなかったかのように起き上がった。


「まったくいきなり凍結はマジ勘弁してよねぇ。一回死んじゃったじゃん」


起き上がったフェロニアは周りをよく見て眠りについている兵士に使えないと言い放った。その場にブレッグリアがゆっくりと歩いて来た。ブレッグリアの服はボロボロで、何回転んだのかよく判らないほど泥だらけだった。顔は赤みを帯びていて、その表情は怒りによって眉間に皺がよっていた。


「あの小娘め、許さん」


ブレッグリアは氷で潰れた木箱の中から無事な眼鏡を取り出して眼鏡を掛け変えた。


「よし、これでよく見えます」


「老眼鏡なんか掛けてるからそんな目に遭うんのよ」


眼鏡を右手の中指と薬指でクイッと上げた後フェロニアにキレるのを堪えながら言い返した。


「よく老眼鏡だと判りましたね。ですが早々に氷漬けに成って戦線離脱した貴女に言われたくはありません」


「私が居なければ戦闘にすら発展しなかったのよ。感謝すべきだと思うのだけれど。これは貸しということ忘れてないでね。それよりも困ったわね。ガンリューがあの出血だもの恐らく能力者は四人はいるでしょうね」


ブレッグリアは眠っている兵士達に近付き一人一人の胸ぐらを掴み持ち上げて一発ずつ殴って目を覚まさせた。全員を目を覚ましたのを確認してから近くにいた兵士の一人に剣先を突き付けた。


「貴方は何故兵士になったのですが」


剣先を突き付けられれば誰もが恐怖するだろう。兵士はその恐怖の余り、兵士として命を懸けて戦うことよりも本能的に自身が生きる方へと逃げてしまった。


「た、民を...護るためです」


兵士の言葉を聞いてブレッグリアは剣を下ろした。兵士は死なずに済んだと思い安堵の息を吐く。


しかし、刹那ブレッグリアは下ろした筈の剣で兵士の首を切り落とした。その兵士の微かな死からの逃走をブレッグリアの眼は見逃さず兵士としての恥と見受けた。再び他の兵士に剣を突き付けた。


「貴方は?」


「じ、じじじ人喰種から...生き抜くためでs」


二人目の兵士は、目の前で同士を殺された瞬間を目の当たりにした為。安直かつ死からの逃走を示すような言葉を選べば自身が死ぬことを実感した。故に自分が兵士としての道を選んだ理由、そして人間として生存の意思が見受けられる言葉を選んだ。


だがブレッグリアは兵士が言葉を言い終える前に首をはねた。彼の答えはあまりにも模範的で誰でも口にできる事だったからだ。それと同時に、兵士になれば必ず生き抜けるという誤解を招くような言動と、自分の身の安全を第一に考えた兵士としてはあり得ない思考が気に食わなかったからだ。そして三人目に剣を突き付けた。


「貴方は?」


「尊厳と...秩序を守り。...人々に向く悪意や牙を...こ、根絶させるためです」


「よろしいでしょう」


剣を収めたブレッグリアは深く息を吸い大声でその場に居る兵士達に喝を入れた。


「「「「何をしているだ!!お前達は!!。ガンリューが死んでしまったというのに易々敵を逃がすとはそれでも防壁省に関わる兵士の一人か!!民を護るための兵士だというのならば民だけでなく同士を助けるために動かんか!!お前達は寝る前にその剣を敵に対して向けたのか!!寝ていたお前達の剣は全て刃が足に向かって落ちていた。どう考えても戦意を喪失してるじゃないか!!」」」」


兵士達は、ブレッグリアの言葉に自分達がどれ程無力なのかを思い知らされたような感覚に陥った。ブレッグリアはもう一度深く息を吸い再び言葉を発した。


「「「「貴様らを生かすためにガンリューは死んだのではない!!ガンリューの意思を無駄にするぐらいならば今すぐ剣を置き俺に前に立て!!俺が引導を渡してやる!!民のために命をなくしたガンリューの意思を担うつもりならば!!命を削り刃を振るう覚悟があるならば!!即刻奴等を追撃しろ」」」」


ブレッグリアの言葉に立ち上がった兵士達は皆剣を握っていた。一人一人がガンリューの命が無駄ではなかったと証明するために雄叫びを上げながら三つある門へと走り出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


リンリアの東門に近付くにつれ、ドン、ガシャンッ、 ドシッといった音が増えていった。門は開いていたが防壁省の兵士や神魔教団の殲滅部隊や制裁部隊の兵士が門を塞いでいた。


「まさか街の外に兵士を待機させてたとはな。いやー予想外だわ」


「よく平然としていられるわね、囲まれてるようなものよ。これ」


兵士に包囲された状況で雲だけが武器を手に取らずに交戦していた。紅那はというと雲に気絶させられた兵士達の上に座って雲の戦いを観戦していた。


「三人は早く戻って来ないのか」


「難しいでしょうね。三人の内一人は、凍結することができたからよかったもの。避けられてたらどうするつもりだったのよ」


「人の発案にいちいち文句言ってる暇があるなら。こいつら倒すの手伝えよ!!」


「女の子に戦えって言うの?」


「高みの見物すんなって意味だよ」


「武器を使えば直ぐに終わるでしょう」


流石に100近い相手を武器なしで戦っていると疲労も積み重なっていき雲の息が上がり始めた。


「ったく!!何のプライドなんだ」


「どうやら来たみたいね」


紅那は、逸早く街の中から聞こえてくる二人の足音と声に気が付いた。

華が慌てた様子で、そのすぐ後ろで照弥を背負った響が走りながら向かってきた。


「紅那、雲、大変!!照弥の出血が酷くて意識が戻らないの」


「響!!門の先に沢山の兵士がいるから。雲を手伝って上げて」


「ってことは、もしかしてこれ全部雲一人でやったの!?紅那、二人を御願い」


響は、すぐに背負っていた照弥を降ろして、雲がいる門の前へと走って行くと二人がかりで兵士の相手をする。

二人は背中合わせになりこのままでは埒が明かないと判断した雲が響に小さな声で話しかけた。


「響、悪いが照弥を連れて西門側にある山道を下ってれ。門の兵達を一瞬だけ退かすから、その後真っ直ぐ走り抜けろ。華と紅那も一緒にな!!」


「え?」


雲は自分に立ち向かってきた兵の一人から武器を奪い取り、そのまま他の兵士達の方へと投げ飛ばした。


それと同時に街の方から多く兵が走って来た。


「「「「居たぞーー奴等だ!!逃がすなーー」」」」


兵士達の前に建物の上を跳び移りながら追跡してきたブレッグリアが五人の方へと向かってきた。


「生きては返さんぞ小娘ーー」


「凍える空気よ、我が言霊に呼応しその力を振るえ 氷撃嵐武ひょうげきらんぶ


華は後方からの追跡を振り切るために刃のように先端が鋭くとがった氷塊を踏み出した左足の下から突き刺すように出現させた。


その後、三人に響が近付き照弥を担ぎ上げて二人に逃げることを告げた。


「雲!!開けてくれ!!」


響の声に瞬時に反応した雲は、門を塞いでいる兵士達に向かって近くにいる兵士を投げ飛ばして道を開けた。


その一瞬を逃さないように門へと向かって兵士の包囲を全力で走り抜けた。しかし、そんな三人の後方から矢が飛んできた。矢先は華の脚を掠り華はバランスを崩し転んだ。


「イッタ!!」


「「華!!」」


響と紅那は逸早く門の外へと出たが、倒れた華に気が付いた。


「ったく。ちゃんと走りきれよ」


転んだ華に雲は近付き華の両手首掴んで振り回した。


「えっ..ちょ...ちょっと待って!!」


雲が何をしようとしているのか大体の予想がついた華は顔が青ざめていた。


「傷口は自分で塞げよ!!お゛ぉらー!!」


そんな華のことを気にも止めず門へと向かって遠心力を活かし、掴んでいた手を放した。瞳から涙を溢しながらも華は叫んだ。


「いぃぃやぁぁぁーーー」


「紅那ぁーちゃんと取れよ」


華を門へと投げ込んですぐに雲は門へと走り出した。落下してくる華を見事に受け止めた紅を含めた三人は雲が門を通過するのを待った。


門を通さんとする兵士達が門を閉ざし始めた。どんどん閉ざされる道を見て雲は微かに笑った。門の少し手前で雲は門へと跳んだ。兵士達は通過されると思い門を閉じる速さを上げた。しかし、雲は門を通過すると見せ掛けて左右の門の扉を押し込み門を閉じた。そのまま下に着地して枷を掛けた。


「こっから先へは行かせねぇよ」

雲が一人だけ街の中に!?


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