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消えかけの人々  作者: 蓮之都
一章 死線を越えて
12/22

照弥の覚悟

11話


今回はなんとあの御方が登場します。


最後まで読んで頂ければ有り難いことこの上ありません。

「な、一体何が」


突如現れた氷塊に、その場にいた兵士達はおろかガンリューやブレッグリアですら驚きを隠せていなかった。

氷塊に閉じ込められたフェロニアを見た神魔教団の殲滅部隊がおろおろと慌てふためいていた。


「スッゲーな」


フェロニアを襲った氷が現れた道から、見るからに不機嫌な華と氷塊を見てその迫力に感心している照弥が出てきた。


「君達か?怪しい子どもと言うのは」


「ん、おいお前ら真っ黒野郎は何処にいる」


二人を見たガンリューは、雲と同行していた二人だと気付き雲の姿が見つからなかった為訊ねた。


そのガンリューの姿を眼にした照弥は、リンリアで起きた一件を思い出した。


「防壁省の六武将・ガンリュー。あんたに会えて良かったよ」


照弥はガンリューに向かって拳を構えた。

見開いた眼はガンリューの事を補食者が獲物を睨むように視界に捉え、眉間には皺ができていた。


「おいおい小僧、俺に負けたこと忘れた訳じゃねぇだろう」


拳を構えた照弥を見てガンリューは鞘から剣を抜き、手を伸ばして『掛かってこい』と手で煽り挑発をした。


そんな中、兵士に囲まれた状況で構えている照弥を見てフッとブレッグリアは笑った。


「おい君達!状況を理解できてるのか。この数を相手に二人だけで相手ができるのか」


「いや女の方は、実力がわからねぇからな」


華を見て、ガンリューはこの状況で相手の実力を見くびるような奴には見えない、ブレッグリアの油断が戦況を替える事にも繋がると考えた。

二人はいつでも刃を交えれる体勢を整えた。


「声がでかくて頭に響くから止めてよ黒縁眼鏡」


不機嫌な華の相手の外見を容赦なく否定するこの一言でブレッグリアは自分の半分以下の年齢の子どもを相手に怒りが芽生えた。


「人は第一印象が大切だと言うだろう。いいか!これは伊達眼鏡だ!!!私の本来の視力は人並みだぞ!!」


ブレッグリアの反応を無視して、照弥はガンリューヘと突き進んだ。


「うらぁぁぁ」


カギィン


照弥の拳をガンリューの前に出たブレッグリアが剣の表面で受けた。

照弥の拳は剣にぶつかりその衝撃で音を出した。


「ガンリュー。貴方はまだ完全ではないのでしょう。ここは私が相手をしますので、真っ黒野郎とやらを探してはいかがですか」


そう言い放つブレッグリアに照弥は殴りかかった。その拳をブレッグリアは素早く二本目の剣を鞘から抜き両方の刃を交差させた部分で受け止めた。


「気を使ってんじゃねぇよ。それにこいつは俺に用があるんだ俺がやる」


「休むことを学んではどうですか」


「日々の鍛練が俺をここまで育て上げたんだよ」


「変わりませんね貴方は。あの頃と」


ブレッグリアは交差させた剣で照弥の拳を押し飛ばした。


「軽いですね。貴方の拳は軽すぎる」


照弥はブレッグリアに押し飛ばされたものの地面に手を着き屈んだ状態で体勢を立て直した。


「この程度で俺達を相手にするってか。舐められたものだなぁ」


ガンリューがブレッグリアの前にでて剣を構えた。


ガンリューとブレッグリアを切り離すように、二人を隔てる氷の壁が突如出現した。


「「何!?」」


「盛り上がってるところ悪いんですけど。私のことを忘れてませんか?」


「どうやら、私の相手は貴女がしてくれるようですね。剣狼の名を甘く見すぎではありませんか。私は女一人に殺られるほど弱くはないのですよ」


ブレッグリアは華に向かって走り出し剣を振りだした。


「凍える空気よ、我が言霊に呼応し傷みを返せ 返刃氷壁へんじんひょうへき


華は氷の壁を作るがブレッグリアの剣が力強く砕くように氷壁を斬り付ける。


氷壁が壊れることはなかったものの斬り付けた痕が残った。しかし、それを見た華はニヤリと笑った。ブレッグリアはその反応を見て素早く後ろへと下がったが華はポツリと呟いた。


「遅いよ」


傷を残した氷壁の斬り傷から、とてつもなく速い白い何かがブレッグリアを目掛けて飛んできた。


ブレッグリアは直感的に後方から建物の壁を蹴り上がり屋根のある上空へと避けた。しかし、その後を追うように白い物体はブレッグリアを追尾して飛んでくる。それを見て回避は不可能と判断したのか剣で斬り付けようと白い物体に刃を振り下ろす。


「な、んだと」


刃が物体に触れた瞬間ブレッグリアは衝撃で吹き飛ばされた。しかし、白い物体は一つ減ったもののまだ幾つか追尾して来るのを確認し、屋根から屋根へと跳び移り距離を取り始めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おっらぁぁぁ」


おせえよ」


照弥の拳を悉く躱しては剣を振るう。

照弥も剣の軌道を読み躱すが、距離を詰めても躱す度に距離を取る形になってしまっている。


「うおぉぉぉぉ」


「遅いつっんてんだよ」


再び距離を詰めて殴りに行く寸前でガンリューが先程よりも早く剣を振り下ろした。


咄嗟に身を後ろに戻すも間に合わず腹部を剣先が切りつけた。


「くっそ!!」


「おぉ、えげつない技使うな嬢ちゃん。真っ黒と似たような技かと思ったが違うな」


ブレッグリアと華の交戦を見ているガンリューに照弥は隙を突くように殴り込もうとするも、いとも容易く躱され柄頭を腹にぶつけられた。


「ぶっぐはぁっ」


膝をつき屈んでいる照弥にガンリューが剣を振るう


すぐさまガンリューの剣撃が横から来るのを照弥はそれを籠手で受け止めようと試みるも、凄まじい威力に押し負けて街道方ヘと吹き飛ばされた。


「さぁて、お互い一人ずつになったことだし決着をつけるか」


「貴方の相手は私ではありませんので気を引き締めた方がいいかと」


「からかい上手だね。流石はTWINSツインズの相方だ!億の賞金首は違うねぇ。でもENDLIFEエンドライフの奴は億の賞金が懸かってないからな俺の一撃で生きてたら奇跡だ」


「...解っていませんね。貴方は雲にられた傷が残っているでしょう。その上で照弥はあの一夜で貴方の策略のお陰で成長しました」


「は?」


「貴方は彼には勝てない」


華の言葉が腑に落ちないガンリューは照弥を吹き飛ばした方へ体を向けた。


「...なにせ彼は死線の境地に入り込んだ暴獣ですので」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


華とガンリューが対峙している時、照弥はガンリューのたった一振りの威力で遠くの建物に衝突した上に、建物が崩壊し瓦礫の山にするほどの威力だった。


「いってぇ~」


「(俺は吹き飛ばされた、たった一振りでだ。あの日、リンリアでは雲助けられた...だから生きていられた。でも今回は俺がやらなきゃいけない)」


瓦礫に埋もれた体を起こした。しかし、それでも体は悲鳴を上げていた。頭部からは血が流れ体の節々に痛みが持続し、立つことがやっとの状態だった。それほど迄にガンリューの一振りの一撃の重さに体が耐えきれなかった。


「(くっそ体が言うこと聞かねぇ無理矢理動かすか。傷が悪化したら怒られるだろうな。でも、もういいや。動くということはまだ戦える筈だ)」


一歩一歩痛みに耐えながら照弥は地面を踏みしめた。次第に体は傷つく前のように痛みを感じなくなった。


(なんだろう、死ぬかもしれないのに何かをやり遂げようとすると体が痛みを忘れてくれる。

この間もこんな感じになったことがあったな。いつだったっけ?)


そんな事を考えながらも照弥は少しずつ速度を上げて前へ前へと歩みを続けた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「来ねぇなぁ。本当にアイツが俺に勝てるとでも思っ───」


「思っていませんよ」


ガンリューの言葉を遮り放つ言葉にガンリュー自信は耳を疑う。


「おい!矛盾してるぞ」


「思う必要性なんてありません。彼は確実にもう一度死線の境地に足を踏み入れる。そして、そのとき貴方を越えることで彼は真の力に目覚めるはず」


自信ありげにいう華に、それほど迄に強くなるなら照弥を待とうとガンリューは思いその場にある丁度良い木箱に腰を掛けた。兵士達は徐々に集まりはするものの、氷漬けのフェロニアと白い物体に追われ距離を取るブレッグリアのどちらかを確実に目に入れるため。怖気づいて立ち向かおうとすらしなかった。


「心の音よ、我が言霊に呼応し 汝の耳に安らぎを与え給え 幸眠曲こうみんきょく


何処からか聞こえる眠りを誘う音色に兵士達は皆眠りに着いた。ただ8人を除いて。その後に建物の上から響が飛び降りてきた。


「眠ってもらった。武器を持っていても立ち向かう意思のない者を傷付ける気は無いから」


「好きにしろ、兵士としての恥そのものだ。」


ガンリューは響を見てから眠りについた兵士達に視線をずらし、照弥を吹き飛ばした方向へと視線を戻す。


「遅かったじゃねぇーの、死んだかと思ったぜ」


兵士達が全員眠りに落ちたことでガンリューは堂々と歩いてくる照弥に気付き立ち上がった。


「終わらせよう。俺から奪ったもののために俺はあんたを越える」


「よく言うぜ、二度もやられたくせに」


「確かに一度目は雲に助けられた。負けたも同然だ。けどまだ二度目は終わってねぇよ」


二人は一斉に構えた。先に動き出したのは照弥でガンリューの懐に素早く入り込んだ。それを狙っていたかのようにガンリューは、剣の刃が下を向くように瞬時に持ち替え照弥に向かって振り下ろした。


懐に入るも攻撃の隙を与えないガンリューとガンリューの攻撃を避け直ぐに攻撃へと移る照弥。それはまるで、どちらかの攻撃を食らった方が負けと認めるような交戦だった。しかし、そんな事もお互いに傷を負っているため長く続くわけもなく。ガンリューが突然剣を少しだけ放した。それを照弥は見逃さずに再び懐に入るた照弥の拳はガンリューに当たるかのように見えた。次の瞬間ガンリューは放した剣を逆の左手で掴みそのまま素早く振り下ろした。照弥は自分の拳より先に刃が来ることを悟り、腕を交差して刃を拳で受け止めたがガンリューが全体重を剣に乗せた。ボロボロの体はその力に耐えられずそのまま押し倒され、仰向けの上体で地面に叩きつけられた。


「勝負あったな」


「(リドラス、皆すまない...)」


照弥の意識は遠退いて、目の前は真っ暗になった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いいのかい、それで」


何処からとなく聞こえた声今まで聞いたことのない声だった。瞼を開けてみるとそこには知らない空間と名前も知らない羽の生えた女性がいた。


「誰だよ。何処だよここ。俺は負けたんだ。体はもう限界なんだよ。動かないし勝てなかった。他にどうしろっていうんだよ」


「ここは、死線の境地と呼ばれる場所さ、君が本当に望んだことなら何も言わないよ。だが、君は完全に放棄したことになるだけ」


「何が言いたいんだよ」


「君は誰かに何かを分け与えて来たじゃない、それは誰にでもできる訳じゃないんだよ。奪うこと、盗むこと、それらをやめられないのは、周りが分け与えることを知らないからだよ。君は命を、希望を、夢を、心を多くのことを分け与えて来た。だから君が望むのなら私は、君に決して奪われることのない世界を実現させるための力を与えるよ。代価を払う代わりにね」


「代価はなんだ?」


「君がこの先、理想の世界を実現させるまで無関係の他者から奪うこと盗むことを禁止すること」


「あぁそうか俺は、ヒモトの民の街を奪われ、ヒモトの民の命を奪われ、ヒモトの世界の行き場を奪われたのか。

『無いならどうするか』なら分け与えてもらう。ヒモトが生きれる世界のために。決めた...代価を払う」


「照弥、汝に救恤を与え強欲を禁ずる。その証として小悪呪印を肉体に刻む」


「最後に一ついいか?」


「なんだい」


「貴方は誰だ」


「私はガブリエル...天使と呼ばれる存在だよ。

さぁもう一度立ち上がって。選ばれし十二人目の抗神者よ」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「覚醒したな」


「やっぱりね、照弥なら選ばれると思ったよ」


「(負けない。負けられ...ない。絶対に勝つ)」


道上で倒れ込んでいた照弥は、ゆっくりと確実に立ち上がった。体からの出血、ボロボロの体は本来ならば両足で立って居られる状態ではなかった。


「待てよ、まだ決着は着いてないだろ」


ガンリューの後ろにはガンリューに押し倒された。照弥が立ち上がっていた。しかし、ただ立ち上がるだけならまだしも驚いたことに照弥の両拳の籠手には光が発せられていた。


「なんだそれは、手品ではあるまい」


「いずれ解るさ」


「それも、そうか」


二人は向かい合ってお互いに構えた。そして、二人同時に言い出した。これが最後だと...。

ついに照弥覚醒そしてどうなる


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