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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
90/119

第七十九話 夏コミ☆二日目

グラたん「第七十九話です!」


 夏コミ、二日目。

 場所は中央都市カルリス。気温32度。あまりにも暑いので紫が北の方の冷気を持ってきて26度まで低下させている。

 来場者は一日目240万(妖怪込み)。二日目も同様近くだろうと推測されている。

 一日目の熱狂冷めぬ中、会場外には長蛇の列が出来ており周辺ではフリーマーケットやドリンク販売が行われている。


「はい、二日目です! 今日売り切って明日は遊びますよ!」

「おうよ!」

「うん!」

「何故俺まで……」


 ブース内では昨日に続いてメンタたちが陣取っており霊夢たちも午前中はライブに勤しむ予定だ。


「ライブ行ってくるわね」

「行ってくるぜ!」


 霊夢たちを見送り、紫が山のようなかき氷を食べながら指示を飛ばした。


「さあ、メンタ。やりなさい!」

「能力発動!」

「能力発動!」


 メンタとてゐが能力を発動し、周囲に拡散していく。


「なんという無駄遣い……」


 腐のオーラが周囲に飛び、辺りにいたお客の脳を制御し、光の無い視線をメンタたちのブースへと向けた。


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 腐のオーラはお客が動くことで腐が感染していき、徐々にブース内を汚染していく。


「来ましたよ!!」

「売り切れた! 補充急げ!」


 メンタとてゐでお客を捌き、枢が物資を補給し、シンが会計という布陣になっているが肉体労働をしている枢が一番負担が大きいだろう。



 午前10時を回る頃。警備という名目でブースを食べ歩きしながら見回っていた霊夢はふと隣でかき氷を食べている魔理沙の方を見た。


「ねぇ、魔理沙」

「なんだ?」

「何となくだけど……これってある意味事変になると思うのよ」

「あー……まぁ、あんだけ派手に能力使っていればなぁ」


 メンタたちがいる方のブースを見つつ、嫌な波動を肌身で感じられる。


「出来れば芽の内に摘んでおきたいんだけどね」

「そりゃー難しいんじゃねーの?」

「その通り、主犯が紫で実行犯がメンタとてゐ。で、発生源が守るべき人間なのよね~。それに加えて事変を解決するともれなく神社にお金が入って来ない」


 結局はお金に起因してしまうが、お金が無ければ生活は出来ない。


「元が元だからな。で、どうするんだ?」

「そのための助っ人はもう呼んであるわ」

「ええ」 


 背後を振り返れば咲夜と早苗、藍がそこにいた。手には契約書やら処分書と書かれた紙の束が握られている。


「咲夜さん」

「霊夢さんに頼まれて元の売り上げと本来の三日分の売り上げを帳簿にまとめておきました。実際の売り上げの内、一割を紅魔館が頂く形での契約です」

「こっちも生活かかってるから文句言えないわ」


 余談だが紅魔館が一割、守矢が二割、博麗が二割となっている。


「しかし残ったお金は?」


 残っている半分のことを聞くとそこはやはり考えられていたようで別の書類を取り出した。


「次のイベントの予算として活用する予定です」

「と言っても事自体は紫たちを倒さないことには終わらないのよね」

「倒す――正確には不正の取り押さえで十分でしょう。ただ、その役目を霊夢さんたちにやらせてもただの自作自演ですので――」

「私たちが呼ばれたわけです」


 博麗が博麗を倒したところで町人たちは喧嘩程度にしか思わないため、守矢や紅魔館が出てくることにより事の重さを知らしめるつもりだ。

 ふと、パルの姿が見えないことに気づく。


「ん? 早苗だけか?」

「……パルを行かせるわけにはいかないので」

「ああ……なるほど」


 咲夜の思惑としてはパルを腐海へ行かせたくないのと、万が一としてパルが敵側になることを懸念していた。


「まとめて片付ける意味も込めて動くのは十一時よ。例の競売は?」

「永遠亭主催で司会は永琳さんがやってくれるそうですよ。売上の半分を持っていかれることになりますけど……」

「織り込み済みよ。あっちも早苗のおかげで売れ行きに困ってるみたいだったからね」

「うっ……」


 主に守矢の来舞とトトカルチョが原因だ。加えて諏訪子と神奈子がこっそり出版していた本も売れているため永遠亭としてはあまり景気が良くなかったりする。

 加えて早苗の奇跡の能力もあって医療関係はあまり必要とせず、永琳の薬もあまり売れ行きが良くない。


「能力を責めても仕方ないでしょう」

「だな。早苗も余程の重病以外は治してないんだろ?」

「はい。病気や怪我は永琳さんたちのお仕事ですからね」

「……ちなみにその競売とは?」

「咲夜にはまだ言ってなかったっけ? 永琳たちがやるのは――」


 霊夢たちはメンタたちがいるブースへと歩きつつ説明をし始めた。



 ブース内ではお客を総なめにしている紫たちが札束でお互いの顔をビンタしあっていた。


「見て! お金よ、お金!」


 腕一杯の万札を天高く巻き上げ、今や札束風呂が作れる程度には溜まっている。


「部数も30万を突破!」

「ホクホクですね! しかし、いよいよもって客足も減ってしまいましたね」


 見ても大体のお客は本を買い終えており、一度購入した客に二冊目を買わせるのは難しい。そのため一回の購入でまとめ買いするように仕向けもしている。


「これだけ売ればそうなる。枢も頑張って死んだ」


 ブルーシートの上では枢が過労で倒れ、額に保冷剤を当てて仰向けに寝ている。側にはスポーツドリンクが置かれていることから熱中症も患ったのらしい。


「惜しい人を亡くしました――っと、いらっしゃいませ!」


 お客の気配を感じ取って振り向いてみればそこにいたのは早苗たちだ。


「って、早苗に咲夜に藍か」

「ええ」

「売れ行きは良好みたいですね」

「紫様も……」

「はい! おかげ様でホクホクです!」


 それは上々と早苗は頷いた。


「今日は銀座でシャンパンよ!」


 それを聞いて藍は思いっきり呆れ、手を顔に当てて俯いた。


「とりあえずこれを見てください」


 バンっ、と机に叩きつけられたのは『営業停止処分』と書かれた紙だった。


「へっ?」

「残念ですが、ちょっとやり過ぎてしまったようですね」

「商品売買において能力使用は禁止されていませんが……流石に他の店舗が撤退してしまい、その上で二日目も同じ手口となると苦情や不正、自演を疑われる署名がいくつもありました」


 それを聞いてメンタは少々頬を膨らませた。


「先に行っておきますが能力以外使ってませんよ?」


 別にブースで能力を使ってはいけないルールは無いし、自作自演やサクラをしているわけではない。至って真面目に不正チートしているだけだ。


「それは此方で確認済みです」

「だったら――」

「さっきも言ったけどやり過ぎなのよ。これじゃ他の同人誌が売れなくなるし作家自体も少なくなってしまうわ。悪いけどここらで自粛して貰えるかしら」


 咲夜の言葉も尤もであり、充分な稼ぎも得ていることを考えればここらが撤退時だろうとメンタは思った。


「ん~……まぁ、稼ぎは終わってますし構いま――」

「何言ってるの! まだまだこれからよ! 何かを腐らせる、脳を弄る、幸運にする能力なんて同人誌即売のためにある能力でしょ!?」


 紫が言葉を被せ、完全に金に狂った目で何かを力説し始めた。


「何か酷い言い方だな!?」

「ええ……ですが、これは運営の決定事項です。拒否するというのならば以後のイベントに博麗神社の出入りを禁じさせて貰います」


 それはメンタとしても困るので頷いた。


「妥当ですね。オレはもう十分なので――」

「メンタ! 早苗たちを洗脳しなさい!」

「えええっ!?」


 紫の途方もない指示に流石にメンタも驚いて振り返った。


「紫様!?」

「ここで流れを断ち切られるわけにはいかないわ! やりなさい!」


 困る。迷う。が、紫に命令されて仕方なくやったということにすれば罪は軽くなるのではないかと浅知恵を絞り、早苗に指を突き付けた。


「え、ええ、えっと…………か、覚悟しやがれDES!」

「メンタさん!?」

「やはり交渉決裂ですか……。では、強硬手段に――」


 咲夜の能力は発動されれば抵抗が出来ない。ならば反撃できないような先手を打つことこそが勝利への鍵だ。


「てゐ!」

「もう――遅ェェ!! ンッッッ、スゥッティィィィルッ!!」


 兎の生足を最大限に加速させて咲夜の背後に瞬間移動し、スカートに手ェ突っ込んでナイフポーチとガーターベルトを外し、下着を引き摺り下ろして奪い取るという蛮行に及んだ。

 咲夜は尻もちを付き、冷静に辺りを分析して――太ももの辺りに色々散らばっている感触があることに気づく。そして着用していたはずのガーターベルトを手に取り、顔を真っ赤に染めてメンタたちの方を睨んだ。


「――……返しなさいッ!!」


「咲夜さんの能力は精神力依存であることは調べがついているんですよ! 下着を奪われた時の精神の揺らぎは絶大であることくらい女子であれば分かります!」


 腐ゥ腐腐腐! と奇天烈な笑いと共にメンタとてゐは口元に手の甲を当てて上品に腐笑わらった。


「な、鬼ですか!」

「こ、このっ!」


 咲夜がスカートを気にしつつもてゐの方に手を伸ばし、それを軽く避けて煽る。


「おおっと、良いのか? 派手に動けば中が見えちまうぜぇぇ?」 


 ぐっ――と咲夜は押し黙って二の足を踏んだ。下着を見られるならまだ良い。戦闘中に気にしている余裕はない。だが下着が無いのは大問題だ。羞恥が先に来てしまい動くに動けない。


「からの、洗脳!」


 当然、メンタも攻勢を仕掛け、咲夜の代わりに早苗と藍が防御を展開した。


「防符「ライトエルファクター」!」

「精神耐性付与!」


 メンタの能力を間一髪で食い止めるが、それでも押されているのを感じ取れる。


「うっ、ぐっ! つ、強い!」

「腐腐腐腐腐! 数十万人の精神制御していたんですから当然です!」

「押し切られる……!」

「洗脳したら巫女服と下着を剥いでそのまま即売してあげますから安心して逝ってください!」


 それ文字通り逝くことになるだろう。


「社会的に殺す気ですか!!」

「ちょっと何の騒ぎかしら」


 そこへ騒ぎを見物しにレミリアも現れ、メンタは好機とばかりに叫んだ。


「さあ、レミリアさんも手伝ってください! お礼は咲夜さんの着せ替え裸抱き枕でどうでしょうか!」

「なっ!」


 咲夜がまさか、と動揺し、レミリアはこれぞ天啓とばかりに目を輝かせた。


「乗った!」

「この意志薄弱お嬢様ぁぁ!!」

「咲夜、覚悟! グングニル!」


 咲夜の絶叫と当時に威力を抑えたグングニルが発射され、咲夜が何とか逃れようと一歩踏み出した。


「こ、このっ!」

「咲夜ァ! 一歩でも動いたらこの下着を振り回すぞ!」


 もはや盗賊のような脅しと共に下着を高らかに掲げ、そちらに視線を奪われてしまいグングニルが迫っていく。


「――ッ!」

「やっはー!」


 気づいた時には直撃しており、咲夜は地面に倒れていく。

 流石にそこまですれば諏訪子たちも気づき、現場に駆け付けた。


「おやおや? 二人して何しているんだい?」

「じゃれるのは構わんが、能力の使用はあまりよろしくない――」

「諏訪子さん、神奈子さん! 早苗さんを取り押さえるのを手伝ってくれるのなら、後で早苗さんの体にプリンアラモード乗せて食べさせてあげます!」


 それをチャンスに変えるのがメンタだ。


「何言っているんですか!」

「生クリームは多めで!」

「カラメルソースは苦めで!」

「分かりました!」 


 別に諏訪子たちは警備でもなくただの一般一柱として夏コミに参加しているため強制力はない。つまり内容が魅力的な方に傾くのは仕方のないことだと言えよう。


「この超駄女神様方ァァ!!」


 早苗も洗脳されて地面に倒れ、馬鹿三人組は妄想と共に涎を拭った。


「早苗たんのプリンアラモード、ハァハァ」

「くふっ、涎が……」

「咲夜が添い寝……迂腐腐……」


 さて、とメンタが営業停止処分の紙を手に取り、シンに渡す。


「シン、これはシュレッダーにかけてください」

「了解」


 処分書がシュレッダーにかけられ、紫は万札を扇状に広げて高笑いした。


「おーほほほほ! 次の刺客が来る前に片付けの準備をしつつ売りましょう!」

「おー!」


 が、その肩に手を置く者がいた。視線を向ければスルトが背後に立っており、大多数の捕縛魔法陣が展開されている。


「させると思うか?」

「しまった! 孔明の罠だ!」


 てゐが過去最速の速度で地面を蹴って脱出を試み、それを上回る速さでイナバの蹴りが顔面に炸裂してブースの端まで蹴り飛ばされる。


「まさか本当にスルトさんの言う通りになるなんて……」

「メンタ、抵抗しないでね?」

「包丁の峰でおしり叩き百回かな?」


 周囲には完全武装状態の霊夢、魔理沙、パル、依姫たちが武器を構えており、親衛隊も影ながら参加していた。


『神妙にお縄について貰おう!』

『女狐、覚悟!』


 オマケに兎兵士たちも耳をヘルメットで隠して軍用ライトセーバーを紫に向けている。


「うっ……ぱ、パル姉、依姫姉っ……!」

「ゆ、紫様!」

「金と店はスキマに入れたわ! 各自、散開!」


 ならば、とスルトがスキマから売り上げを引っ張り出して辺り一面にゴールドシャワーを降らせた。


「ふむ、中々の実入りだな」

「スルトさんもスキマを使うんですか!?」


 キラリ、とパルの戦闘狂の目が光り、スルトはそれに気が付かずに早苗たちを介抱していく。


「うむ。もう一つ良い物を見せてやろう――『零の領域』」


 それは能力無効化・解除する技であり、パルと依姫も何度か覚えのある技だったため意外そうに眼を輝かせた。


「紫様、お縄です!」


 藍が対神用の縄を握り、紫へと接近していく。


「まだ走って逃げてやるわ!」

『妨符「妖月鉄格子」!』


 親衛隊と兎兵士たち全員による強力な粘膜結界が周囲に発射され、紫の体に巻き付いていく。


「ッ! 動けない!?」


 紫とて最上位の妖怪であり神だ。それを一時的にとはいえ動けなくするほどの妨害は予想外であり、使い慣れたスキマも使えないため藍に取り押さえられた。


「確保!」

『女狐、討ち取ったりー!』

『えい、えい、おー!』


 紫が拘束され、その隣にシバかれたてゐが転がされる。 


「おのれ……!」

「てゐ、これだけやらかしたんですから……覚悟は出来ていますよね?」


 さらにメンタもその場に正座させられ、首と手に錠を掛けられる。


「くっぅぅ……まさか『零の領域』まで使うなんて……」

「うにゅ~」


 依姫はパルにくっついてご満悦だが、パルは先ほどスルトが使った技が気になっていた。 


「でも『零の領域』は神纏している時にしか使えない技なんだけど、なんでスルトさんは使えるの?」


 その問いにスルトはやや首を傾げた。


「ふむ? 何故も何もパルが使っている『神纏・アスト』は余の自身だからな。正確には勇者時の技だ」 


 スルトは邪神だけでなく『勇者』、『王』などの面がある。邪神時は攻撃技や魔法が多く、勇者時の技は基本的に回復、それと補助や妨害が多い。


「えっ、そうなの?」

「うむ。勇者の力に攻撃技は無いが、回復や無効化の技は多い。使いこなせれば早苗の奇跡に匹敵するだろう」

「じゃあ、スキマの説明は?」


 依姫が聞くとスルトはニヤリと笑った。


「見て、習得した」

「へっ?」

「え?」

「は?」


 いやそれは無理だろうというような視線が辺り一面から突き刺さる。


「どういうことですか?」

「見て覚えるって超チートだな!」


 てゐの言葉に霊夢たちも頷き、紫が補足を加えた。


「そりゃそうよ。だってスルトのここでの能力は『理解習得する程度』『全知全能な程度』よ」

「一つ目は文字通りな気がしますけど、『全知全能』ってまさかとは思いますけど何でも思い通りにするとかですか?」

「何でも思い通りになる、と言った方が正しいだろう。まあ使うことは無いし、過去一度も使ったことは無い」


 この能力を使用すれば大抵のことは思い通りになり、その気になれば幻想郷のすべてを操り、守矢一強の信仰にすることも可能だ。


『チート乙です!』


 メンタたちの突っ込みに、うむ、とスルトは肯定した。


「よく言われる。……さて、雑談もこのくらいにして会場に行こうか」

「はい!」

「うん!」


 パルたちがメンタたちを台車に乗せ、ガラガラと音を立てながらブースを移動していく。


「え? 何処にですか?」

「嫌な予感……」

「来れば分かる」


 どこからともなくドナドナと音源が流され、それが余計に不安を煽り立てた。

 


 ドナドナと連れてこられた先は色華やかに飾られたステージだ。目の前には数えられないほどの観客たち。彼らは一人一人が仮面をつけていることからある程度金持ちの集会であることは予想が付く。


「さあさあ皆様、今日は活きの良い娘たちが揃っております! お好きな人から好きな部位をお金が無くなるまで買って行ってください!」

『ウホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 その舞台裏で待機させられているのはメンタたちだ。司会はバタフライマスクを付けた永琳が勤め、観客は大いに盛り上がっている。


「てゐ、これって……」

「言うな。人身売買じゃないだけマシだと思おうぜ」

「私も売られる……」

「くぅ……」

「い、嫌だぁぁ!」

「早苗ちゃぁぁぁん!」

「な、何故私まで……咲夜!」


 今回ステージに上がる予定なのはメンタ、てゐ、シン、紫、諏訪子、神奈子そしてレミリアだ。傍には監視役として咲夜たちが厳戒態勢で待機しており逃げる隙は見当たらない。


「紅魔館も赤字続きなんです。頑張ってくださいレミリア様」

「人の下着を喜んで振り回すお馬鹿様たちには良いお灸です」

「自業自得です」


 咲夜、早苗、藍の三人から罵倒され溜息を吐かれる。


「さて、まずは紹介から参りましょう!」


 ステージ上ではメンタたちの顔写真が映像で流され、紹介は始まっている。


「では、お馬鹿様の無様なお姿をブルーレイ&DVDで永久保存しておきます」


 咲夜が冷ややかな視線で扉の外へと出て良き、


「文字通り体を売って稼いでください」


 早苗も視線を向けずに去って行き、


「お金、好きなんですよね? 良かったではありませんか。いっぱい稼げますよ」


 藍もそっけない態度で廊下に出て行ってしまう。


「うっ、うっ。実の妹を身売りしないといけないなんて……」

「悪い事していたんだからしょうがないよ」


 パルと依姫は残っており、時間のためパルの手を引いて退出しようとする。


「でもぉ……」

「パル、行くよ」


 いまだ未練があるに呻きを残し、依姫に連れられて扉を潜り抜けた。


「枢……」


 シンはとても不安そうに見上げ、枢は問題ないと首肯した。


「案ずるな。マフラーは取らないように交渉してある」


 確かに首は重要な問題ではあるが、そこではない。


「そこじゃない……」

「はーい、会場入りしますねー」


 永琳のお手伝いとして呼ばれた村紗むらさ水蜜みなみつという少女妖怪が搬入用の扉を開け、メンタたちをステージへと歩かせていく。


「本日の眼玉商品たちの御入来!」

『ィィィィいらっしゃいませェェェェエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!』


 幻想郷で唯一合法に買えることもあり野郎どもの野太い声が会場に振動し、大気が震えた。


「はい! 右からご存じ紅魔館の主、レミリア様! 守矢の二柱、諏訪子様と神奈子様! 博麗神社からはメンタさん! 陰陽師からシンさん! そしてウチの馬鹿! 最後に紫様です!」


 永琳がノリノリサディスティックモードで司会を続け、見学していた霊夢がシンも出ていることに違和感を覚えた。


「メンタはともかくとしてシンまで?」

「現行犯逮捕だそうだ」


 そこにいたからという理由で捕獲され、売られる。

 付近の席にはフランやさとりたちが座り、これから行われることを人身売買程度に考えて見学している。


「お姉ちゃんだ~」

「何やってんのよ……」

「レミリア様?」


 プライド(嘲笑)が高いレミリアからすれば部下かぞくに醜態を晒すなど拷問よりも辛いことだ。


「殺せ! いっそ一思いに殺せ!」


 喚くと背後からイナバが猿轡を噛ませて黙らせる。


「紹介も終わったところですし、競売を始めましょう! まずは紫様のフルセットから! 価格は十万からです!」


 ここでの価格表示は手元のプレートを掲げることで購入することが出来るようになっており、直売りということもあって値段は結構高い。


「二十万!」

「三十万!」

「五十五万!」

「八十万!」

「百万だ!」

「百五十万!」

「三百万!」


 ものの数十秒で値段が高騰し、メンタたちの背筋に冷や汗が流れた。


「人身売買じゃないだけマシって言ってましたけど、これR17くらいの展開ですよ」

「つーかフルセットって……」

「バラで売られた方が余計に怖いですよ。何されるか想像したくありません」

「メンタはまだ良いだろ。パルが救済してくれるだろうし」


 視線をパルがいる場所に向け、首を傾げる。


「してくれますかね?」

「希望があるだけ良いってな」


 メンタにはパルがいるがてゐには救いの手は無い。


「ご愁傷様です」


 そこでカンカンと槌の音が聞こえ、永琳が声を張り上げた。


「三千七百万! 他にいませんか? ――三千七百万で落札です! おめでとうございます!」


 神様の服ともなれば少し安いかもしれませんね、とメンタは思う。

 だが一回分の着替えの値段を考えれば――売れる! とも考えた。


「はーい、剥ぎ取ります。あ、カーテンはしますからご安心を」


 シャッ、とカーテンに遮られて妖夢と鵺が紫の服を剥ぎ取っていく。


「嫌ぁぁああああああああああああああああああああああ!!」


 服は丁寧に畳まれて商品ケースに仕舞われ落札者の元へと運ばれていく。


「次は諏訪子様です! 価格は同じく十万から!」

「三十万!」

「二百万!」

「五百万!」

「一千万だ!」

『オオオオオオオオオオオオオオ!!』  

「なんか凄い額になっているのだ!?」


 誰もがびっくりするような値段の吊り上がり方に諏訪子は目を丸くした。 

 だがそれもそうだろうとてゐたちは頷いた。


「貴重なロリ枠ですからね」

「確かにBBAとロリなら……比較的ロリの方が需要あるのか?」

「だがその理屈だとレミリアも大変なことになるぜ?」

「ちなみにてゐもですけどね」

「その点、メンタはロリ専かな?」

「言っておきますがオレはロリではなく幼児体型です!」

「ほぼほぼ同じ意味だな」


 雑談する合間に落札が終わり、槌が叩かれた。


「二億六千万! 落札です!」

「カーテン閉めますね」

「あっ! ちょっと強引に!」

「変な声出さないでください!」


 紫に続いて諏訪子も退場し、別室へと連れていかれる。ちなみに別室に連れていかれても着替えは無いため文字通りの全裸待機を強要されている。


「次は神奈子様です! 価格は十万から!」

「十五万!」

「十八万!」

「二十四万!」

「低っ! びっくりするほど低いな!」

「でも神奈子さんだって紫さんと同じくらいのはずなのに何故でしょうね?」


 年齢や身長、体格もそう変わらず需要はあるはずなのだが――と答えはレミリアから返ってきた。


「臭いの違いよ。戦闘力で言えば紫が53万。神奈子は12万ってところね」


 会場を見ればプレートを掲げているのは半妖怪が多い。人間とは違って半妖怪や妖怪は臭いで発情するケースが多い。紫が妖怪なのに対し、神奈子は神格だ。臭いで言えば紫の方がはるかに需要が高い。


「納得です」

「百十八万! 落札おめでとうございます!」


 それでも百万を超えているためやはり需要はあるようだ。


「はいはい、脱ぎましょうねー」


 村紗がその場で服を脱がせ始め、神奈子は身を捩って抵抗する。


「待て! カーテン閉めろ!」


 そう、何故か神奈子にはカーテンが用意されていない。しかしこれは不手際ではなく永琳がGOサインを出したからだ。


「唯一の見せ場ですからねー」

「アー!」


 下着になった段階で焦らすようにカーテンが閉められ、ステージの袖からそっと服が売買された。


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