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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
88/119

第X話 元旦

グラたん「あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」

※夜のハイテンションで書き上げた話で、恒例のGAME回です。



 騒ぎ続けて皆が寝付いたのは朝4時。枢と霖之助は寝袋に詰められてお堂に放られ、二時間ほどの仮眠を取った後、メンタは再び動き出した。


「よし、いませんね!」


 博麗の見習い巫女であるメンタは誰一人としていない博麗神社を見て踵を返した。


「いや、お客さんいるからな」


 魔理沙の目には信心深い参拝者が賽銭箱に銭を投げ入れ、鈴を鳴らし、手を打つ。


「いいえオレの眼には見えません。眠いです」

「ほら行くぞ。新年の挨拶と甘酒と蜜柑くらいは振舞わないと本当にこなくなるぞ!」


 魔理沙に押され、メンタは嫌々ながらも表に出ていく。

 敷地内の入り口付近に薪と炭を敷き、昨年の物をその上に乗せていく。これは事前に用意していたもので参拝者たちもお清めと新年の意味を込めて火の中に物を投げていく。

 購買所では陰陽寺院で募集した女生徒たちが働いており、全12人が今日は働いてくれる予定だ。


「うー、寒いです」


 愚痴るのも皆の前に出るまで。壇上に上がるとメンタは急にハイテンションになって叫んだ。


「あけおめです! 以上!」


 スパン、と魔理沙が用意していたハリセンでメンタの頭を叩いた。


「ちゃんとやれ! 博麗の巫女がそんなだと不安になるだろうが!」

「えー、仕方ないですね! あけおめことよろです!」


 またもハリセンの音が鳴り、参拝客にも笑いが出始める。

 そんなメンタの挨拶もやがて終わり、各所の挨拶に回る。お堂、購買所、付近の町、陰陽寺院など行く場所は多い。

 全部終わって戻ってこられたのは10時を過ぎた頃だ。


「霊夢さんをお清めしても良いと思う人ー、イエス!」


 そーい、と掛け声を合わせてメンタと魔理沙は酒を抱えて寝ている霊夢を火元に放った。


「熱ぅぅううううう!?」


 霊夢も流石に眼を覚まして起き上がり、素早く火の中から出て地面を転がっていく。


「ちょっと誰よ! せっかく一酒、二金、三旦那の良い夢を見れてたのに!」

「おはようございます、霊夢さん。叶わない夢を見ても最後は大火傷するだけですよ。先に身を持って知って良かったですね!」

「良かないわ!? あんたたち殺す気!?」

「いや、メンタはやっても許される。お前の代わりに新年の挨拶周りしてきたからな」 


 それを言われると霊夢も弱く、視線を逸らした。

 居間に戻ると大半はまだ雑魚寝しており、もう半分はの見直しをしたり冷蔵しておいたおせちや鍋に入っていた雑煮を勝手に取り出して食べていた。


「あけおめ。このお汁粉美味しいわね」


 レミリアも昨晩のことなどすっかり忘れて様子で餅を噛みちぎっている。


「あけおめです! 勿論そのお汁粉は昨日の夜スルトさんと熱い一夜を過ごしたレミリアさんのために作っておいたものです! さあお赤飯もありますよ!」


 するとレミリアは茹でたように顔面を真っ赤にした。


「ち、違うわよ! あ、あれは忘れないさい!」

「HAHAHA、そういうと思いまして挨拶がてら写真を配ってきました!」


 メンタが取り出したのはゲーム内での温泉の写真と添い寝の写真だ。もはや言い逃れ出来るわけもなくレミリアは殺すしかあるまいと考えてグングニルを取り出した。


「仕方ないわね……遂に幻想郷を滅ぼす時が来たのね」

「はいはい、そこまでよー」


 それ以上は本当に戦いになってしまうため紫が止めに入り、それを見越していたメンタはもう一枚写真を出した。


「ちなみにですが、昨日紫さんと彼氏さんを挽肉にしたのは霊夢さんです。はい、証拠写真です」


 それを渡され、紫は首を三度回して拳を鳴らした。


「あらあら、新年早々に最低でも二人は死人が出るなんて残念ですね」

「と、前置きはこのくらいにしてその恨みをぶつけるべく次のゲームを用意しました!」


 紫が一歩踏み出す前にメンタが動き、スゴロクがテーブルの上に出現した。

 それを見て寝ていた者たちも起き出し、寝ぼけ眼のままボードゲームを見た。


「凄まじい語彙力でROCKする通称『凄語ROCK』です! やり方は超絶簡単! 言葉をしりとり形式で繋げていくだけです! 勿論『ん』が付いたら負けです!」

「で、実害は?」 


 紫が殺意をむき出しにしながら問い、メンタは人差し指を立ててドヤ顔で答えた。


「生身の肉体にはありませんが、このゲームはVR同様に内部で起こる干渉ゲームです! つまり言葉にしたものが具現化するということです!」

「へぇ、面白そうね。やる人ー」

『はーい』 


 全員が手を上げ、メンタはボードゲームのスイッチを入れ、居間にいた者たちが揃ってゲーム内に入り込んだ。

 全員のスタートラインは同じだ。立つと同時に眼の前にルールが表示された。


 凄語ROCKゲーム

 ~ルール~

1、しりとりをすること

2、内容はしりとり形式を用い、2番手からは最後の文字から繋げること

3、語の終わりに『ん』が付いたら敗北とする

4、言葉にしたものは具現化され、次の者が具現化したものと相対しながら答える

5、答える制限時間は30秒とする

6、敗北(死亡)時はリアルに強制排出される

7、同じ語句は禁止とする。使用した場合は敗北

8、ゲーム終了後は遺恨を残さないこと


 絶対遺恨は残ると思った者は全員だが今更ではある。


「今回は……24人ですね。ではオレ、シン、神奈子さん、お燐さん、枢さん、魔理沙さん、永琳さん、霊夢さん、輝夜さん、霖之助さん、椛さん、さとりさん、アリスさん、こいしさん、レミリアさん、お空さん、諏訪子さん、フランさん、パチュリーさん、てゐ、美鈴さん、紫さん、橙、幽々子さんの順番でやっていきます!」 


 端的かつ分かりやすい説明に魔理沙は肯定した。そしてきっと酷い試合になるんだろうと幻視した。メンタはしりとりを具現化するための魔力球体に触れ、試合開始を宣言する。


「早速行きます! 最初は決まり文句になりますが、『ゲームスタート』です!」


 手番がシンに移り、同様に球体に触れた。


「『とっくり』」


 神奈子の手にとっくりが出現する。せっかくなので飲みつつ答える。


「『りんご』」


 お燐の手にりんごが出現し、これも美味しそうに食べつつ考える。


「『ゴールドカード』にゃ」


 文字通り金色の免許書が出現し、手番は枢。


「『ど』か……『ドヴォルザーク』」


 答えると同時に勇ましい音楽が何処からか流れ、半場眠っていた者たちも目を覚ました。次の手番は魔理沙だ。


「『クーデレ』」


 次の手番は永琳だが、効果を受けた影響か表情が少し柔らかい。


「『レーヴァ・ブラスト』」


 霊夢の頭上に巨大な炎の大剣が出現した。それは霊夢目掛けて落下し――


「ちょっ!? 技名もありなの!? 『トールハンマー』!」


 霊夢の方からは雷神の鎚を模した技が発射される。両者の技は一時的に拮抗したが輝夜に手番が移るとその両方が向かっていく。


「『アーラシュ』!」


 何処からともなく弓を持った青年が現れ、二つの技を相殺できるステラを放って消えて行った。次は霖之助の番だ。


「『湯煙』でどうでしょう?」

「わっぷ」


 辺り一面に煙が広がり、お互いが見えないくらい濃くなっていく。しかし次が椛なため彼女は諸に勘違いして声を上げた。


「『理系女子』!」

「『ショートパンツ』」

「『ツンデレ』」 


 さとり、アリスのコンボを食らって手番がこいしに回ってくる。こいしはニコリと笑って次の手番となるレミリアを指差した。


「『レーティング18』!」


 よくやった、と四人はこいしを褒めたたえた。一方でレミリアは全裸に向かれて湯煙さんの大活躍が行われていた。


「ギャー!? 『血塗れ』!」 


 宣言すると同時にお空は血塗れになってその場に膝を付いた。


「かはっ!?」 

『お空さぁぁん!!』 


 お空の姿が消え、手番が諏訪子に回ってきた。ようやくというべきか、皆がこのゲームの危険性について実感し始めた瞬間だった。


「れ……『冷凍』!」


 フランの体が冷凍され、30秒が経過し、その姿が光となって消えていく。


「フランさんまで……」

「こいつぁ……ヤベェな……」


 遅い、と突っ込みを入れてくれる人はいない。次手はパチュリーだ。


「『凍土』」


 パチュリーを中心に世界は凍土と化し、急激に体温が低下していく。てゐは常温動物なので急激な温度変化には弱い。


「さ、寒い寒い寒い! ど、ど『土鍋』!」


 美鈴の前に土鍋が出現し――しかし、その温かさを享受できるのは美鈴だけだ。それを理解した瞬間、てゐは死んだ。


「てゐィィィィ!!」


 土鍋を27秒で食べ終わり、美鈴は次の言葉を発した。


「『便座』」

「意味ないわよ! 『座学』!」 


 次は橙だが、紫クラスの妖力が無い橙は既に凍死していた。


「ちぇぇぇぇぇん!!」


 手番は幽々子に移る。幽々子はたっぷり20秒考えてから答えた。


「『くっコロ』♪」


 キュッとメンタの体が椅子に括り付けられ、紐で縛られて目の前に熱々のすき焼きが出現した。幽々子たちは一切遠慮することなく中身を分け合い、暖を取る。


「ァァァアアアアアアアアアアアア!? それは鬼です! マジくっコロです! 『ロケットランチャー』!!」


 満足げにすき焼きを食べたシンに向かってロケットランチャーが飛び、直撃して殺した。手番は神奈子だ。


「『雨』」


 凍土に雨が降るという現象は無いが、ゲーム内ではなんでもありだ。雨が降り始め、寒さと湯煙も相まって混沌としたフィールドになってきた。


「『メトロノーム』にゃ」


 ぽくぽくチーンと音が鳴り、次は枢だ。


「『無限拳むげんパンチ』」

「『チェンジ』」

「ぐはっぁ!?」


 何処からともなく出現した巨大な拳が霊夢に直撃し、そのまま何処かへといなくなった。シュワという音が聞こえたため死んだのだろうと皆が思った。


「じ、『銃殺』」


 輝夜が続けると、霖之助は悲鳴を上げることもなく銃殺されて死んだ。


「『釣り竿』」

「『おぼこい』」

「『命乞い』」

「『戒め』」

「『メバチマグロ』」


 ビチビチと一本釣りされた美味しそうなメスのメバチマグロが命乞いしながらパチュリーの上で暴れている。無論、即死だ。


「『ロース』!」

「『酢豚』」

「美味い! 『タタキ』!」


 メンタの頭上には叩きにせんとばかりに巨大な手が迫っている。


「『○○○○』!!」


 放送禁止用語が炸裂した。当然その効果は神奈子に直撃し、彼奴は女ではなくなった。


「……『まさぐる』」


 神奈子もこれ見よがしにお燐の体を触り始めた。


「にゃにゃ!? 『ルックス』!」


 枢の顔にイケメン補正が掛かるが本人は分からない。


「『水泳』」


 魔理沙の周囲に水が生成され、泳げない彼女は溺れて死んだ。


「『囲碁』」


 永琳は輝夜を攻撃することなどしない。


「ご、『誤爆』」


 だが輝夜は違う。巧みに言葉を操って殺しに来るのだ。爆破の標的は椛だ。


「く『首吊り』――」


 ヤンデレを拗らせている椛は一人では死なない。最低でも一人は道連れにしていく。さとりの首に縄がかけられて締め上げられた。

 だが、そのさとりも意地汚いため締められながらも言葉を発した。


「り――『臨死』」


 五秒以内に三人が死んだ。次はこいしからとなる。


「『刺殺』!」


 レミリアは背後からナイフで心臓を刺された。


「つ、『突っ込む』!」


 レミリアは両手を合わせて爪を伸ばし、人差し指と中指を揃えた二対四本の構えを取り、瞬間移動で諏訪子の背後に回って下方から一気に腕を振り上げた。


「か――はぁっ――!?」


 貫腸。所謂、ケツから手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやろうか、というアレである。その直撃を食らった諏訪子は涙目になりながら奥歯をガタガタ鳴らした。


「む、む、『胸』ェ!」


 それを最後に言い残し、諏訪子は美鈴の胸に埋もれて死んだ。その背後には無様な姿勢のまま死んだレミリアが居た。


「わっと。『NTRネトラレ』」


 紫の目の前には藍と橙がいる。彼女たちは楽しそうに守矢神社で働いており、文字取りNTRされたのだという事実が紫の精神を抉った。


「ァァァアアアアアアアアアアアア!!? 『レバニラ』!」 


 それでも根性で答え、幽々子に手番が移った。


「ウマー。『落石』」


 巨岩がメンタの頭上に落ちてくるが、その程度は日常茶飯事だ。素手で岩を砕き、答える。


「『キマイラ』!」


 それは獅子の顔とかライオンの顔とか蛇の尻尾を持つ合成獣の名前だ。神奈子はその背に飛び乗り、次を答える。


「『雷雨』」


 ゴロゴロと音を立てて周囲に雷の雨が落ちる。


「『迂回』」

「い、『斑鳩』」


 それを斑鳩を召喚することで回避し、その下にメンタたちも集まる。


「『ガス爆発』!」


 バッ、と全員がその場を飛びのいた。外に出ても雷雨だが留まっても即死だ。こいしは自ら引き起こした爆発に飲まれて死亡し、永琳と輝夜も共に死亡した。この空間内では不老不死も人となる。


「『ツリー』!」


 美鈴が地面から木々を生やして雷雨の直撃を避け、


「『一国』!」 


 精神を破壊されながらも紫が国を生成して雷雨の範囲を分散させる。


「『黒』」


 そして幽々子が全てを黒に染めた。


「ぎゃー! 何も見えませんね! 『ロバ』!」


 ロバの匂いが漂ってくるが全てが黒いため何も見えない。


「『バルバトス』!」


 何も見えないが、何か巨大な物に潰されてお燐は死亡した。


「『水爆』!」


 如何に頑丈と言えど暗闇の中では対処のしようがない。痛みは一瞬だけで、枢を含めて全員が即死した。

 博麗神社に戻ってくるとTVが付いており、勇儀たち、レリミア、慧音や白蓮たちも居間に上がっていた。フールエンリルたちは妖怪の山で吞み潰されてまだ寝ている。


「お邪魔してます」

「おっす、来たぜ!」

「面白い事やってるね! 私もやる!」


 見る分には楽しいだろう。だが、と実体験した枢は素早くその場を離れて壁際に寄った。人の身であるが故にこれ以上は精神的にも厳しいと判断していた。


「オッケーです! 疲れた人もいると思いますので次は強制ではなくボードゲームに触れれば中に入れるようにしておきますね!」 

『それが出来るなら最初からやれ!』


 魔理沙も、霊夢も、枢も額に青筋を浮かべて叫んだ。


「え、皆さんやりたいんですか。仕方ないですね! 連れて行ってあげましょう! 後で泣いて後悔しないでくださいね!!」 


 メンタは逆切れし、設定を弄ることなくスタートボタンをプッシュした。

 居間にいた全員がゲームの中へと吸い込まれ、彼女たちは到着一番にメンタをしばいた。具体的は霊夢と魔理沙がダブルラリアットをかましていた。


「なんであんたがキレるのよ!」

「痛いです!」


 身を起こし、メンタと霊夢はギャイギャイと騒ぐ。 

 少しして冷戦したメンタは先程と同じ説明を白蓮たちにもして、いよいよデスゲーム第二幕が開幕した。

 並び順は射命丸、霊夢、魔理沙、レリミア、こいし、お空、橙、永琳、お燐、霖之助、妹紅、てゐ、パチュリー、紫、レミリア、慧音、枢、シン、輝夜、椛、アリス、幽々子、萃香、美鈴、勇儀、美鈴、諏訪子、晴明、フラン、神奈子、さとり、メンタ、魅魔となっている。


「では行きますよ! 『ゲームスタート』!」


 射命丸の声が開戦の合図となり、霊夢たちは覚悟を決めて発声していく。


「『時計塔』」 

「『ウリエル』」


 時計塔と天使がその場に出現するがそれ以外は変わらず。


「『ルーマニア』」


 周囲の光景がルーマニアへと変化し、


「『アニマル』!」



 数無数の動物たちが姿を現した。


「『ルビー』!」


 橙の手元に宝石が出現し、彼女は先の礼とばかりに可憐に笑った。


「『いかづち』」


 雷が永琳に直撃するが間一髪で言葉は間に合った。


「『血反吐』」


 永琳は焼け焦げて退場し、お燐の口から血が溢れ出す。


「ぐふっ……ッ! 『吐血』」


 霖之助の口から大量の血が吐かれた。


「げふっ……ッ! 『つぶて』」

「あだだだだ!?」 


 妹紅に向けて石の礫が飛翔し、全身に微小のダメージを負わせていく。


「く、くそ! 『天罰』!」


 てゐの頭上に何処か見たことのあるような内容な魔法陣が展開した。


「『月見酒』ェェ!」


 がぼっ、とパチュリーは酒を噴き出して答える間もなく死んだ。続き、てゐにも天罰が直撃し、その姿が消えた。あっという間に六人が脱落し、初見だった勇儀たちは口元を拭って気合を入れなおした。


「『ケンタウロス』」


 紫が召喚したのは人馬一体の魔物だ。その足がレミリアに迫り――


「『スカーレット』!」


 バッ、とケンタウロスの上下が赤に染まった。あまりにも残虐な光景に慧音は吐き気を覚えながらも続きを口にした。


「と、『トマト』」


「『トロイの木馬』」


 慧音は、本当にこいつら頭おかしいんじゃないか、と思った。


「『馬鹿力』」


 正面に現れた木馬をシンは瞬時に投げ飛ばし、輝夜にぶつける。当然、輝夜は虚を突かれて地面の染みとなった。


「『落花生』」

「『イシュタル』!」 


 アリスはせめてもの抵抗に神様を呼び出した。


「『ループ』」


 幽々子が発した言葉により、神イシュタルは出現のみを繰り返すことになった。


「うぃ~『プレイ』!」


 美鈴の体が紐で縛られる。しかもこれは亀甲縛り。察した美鈴はその場で制止し、言葉だけを紡いだ。


「『イスカンダル』」

「また『る』なのだぁぁ!?」


 何処からともなく軍勢が出現し、それが轢き殺された諏訪子の最後の言葉となった。


「『ルームランプ』」


 フランの足元にランプが置かれる。


「『プリコネ』!」


 プリコネ。通称プリンスコネクション。王子という顔だけ生物に媚び諂い、同じ王子を狙っている女を蹴落とすゲームの事だ。


「『猫』」


 にゃー、という鳴き声と共に猫が出現し、メンタに飛び掛かる。だがメンタの手にかかれば全ての獣はモフられる運命にある。そしてこの猫は毒牙にかかってイった。


「『絞殺』」


 魅魔の首に縄が掛けられ、少しずつ上に上がっていく。


「ぐえっ!? 『月』!」

「き!? き、き、『救済』!」


 魅魔は絞首され、射命丸は間一髪で落下してくる月を防いだ。 


「『椅子』」

「『スキマ』」


 レリミアの背後に紫が使っているスキマが開かれ、今にも噛み殺さんと迫る。


「ま、まままっま――」


 ああ、終わった、とレリミアは直感した。走馬燈は一瞬。不思議と最後に読んだゴブゴブスレイヤーなる漫画が頭に浮かんだ。


「ま、『○○す』」


 お察しの通り放送禁止用語である。同時にこいしとその周辺もモザイクがかかり、全員がそっと目を逸らした。どちらも悲惨な死を遂げたとだけ言っておこう。


「『スイカ』」


 この中では比較的まともな慧音が続けると枢の手に巨大な西瓜が落ちてきた。


「『傘』」

「『三途の川』」

「『渡る』」

「『る』これで何回目だぁぁああああぁぁぁ……」


 見事なコンボで美鈴は縛られたまま三途の川を渡って行った。


「『ルール』」

「『ルーレット』」

「『都会』」

「『インドア』」

「『アニメ』」

「『メソポタミア』」

「『アンゴラウサギ』」


 アンゴラウサギとは幻想郷でも北の方にしか生息しない丸っこい兎のことだ。


「『牛乳』」

「『うに』」


 霊夢の何気ない一言は魔理沙に最大の勝機を与えた。かつて、若かりし頃の魔理沙はパチュリーやアリスたちと共に世界最強の魔法を作ろうとしたことがある。それは今では禁術指定されて使うことがないとされている魔法だ。当然、その魔法を知る者はこの中には居ない。魔理沙は全員が直撃するであろう位置にまで下がった。


「フフフ、食らえ! 『幻想終焉魔法ニーチル・レ・ホルー』!」


 魔理沙の前に多重の魔法陣が展開し、流石は歴戦の猛者というべきか、全員がその場から一斉に退避した。お空は直感からあの魔法をどうにか出来るかもしれない続けられる言葉を選択した。


「『浮き輪』!」


 この危機を乗り切るためにはどうしたら良いか、橙は必死に頭を捻った。その時、橙の頭に過ぎったのはフランドールと一緒に読んだ本に書いてあった言葉だった。


「『和子』!」


 紫は直感した。これは間違いなく真面目に答えるべきであると。そしてこの状況を逆転させる一手はただ一つ。


「『硬派』」


 レミリアは紫が何をしようとしたのか、理解した。そして不敵な笑みで巨大なる魔法の前に立って右手を伸ばした。


「『反射』!!」


 一瞬の拮抗の後、大規模魔法は魔理沙に向かって飛んで行った。


「ここぞとばかりに協力すんなぁぁああああ!!」


 然り。魔理沙は自分で放った魔法に滅ぼされた。


「なんだ、皆その気になれば出来るではないか。『ヤンバルクイナ』」 


 慧音は感心しつつパスを回した。


「『納豆』」 

「『梅干し』」

「『柴漬け』」

「『ケチャップ』」

「『プティング』」

「『グミ』」

「『ミント』」

「『トニック』」

「『クリーム』」

「『剝き栗』」


 段々と重なっていく食材を見て射命丸は吐き気がした。


「り、『リセット』」

「あ! せっかく食べ物ネタで走っていたのに何してんですか!」


 メンタの憤りに慧音は頭突きをかました。


「食べ物を無駄にするな」 


 尤もだ、と発端である枢は肯定した。


「『投石』」

「痛っ!? 『機関銃』!」


 ババババババッ、と機関銃が連射され、橙は避け損ねて全身を貫かれた。


「『ウコギ』」

「『ギリシャ神話』」


 天空から神々が降臨した。


「『海神ワダツミ』」 


 対して慧音は海の神を呼び寄せ、降り注ぐ神々の攻撃を防御してみせた。


「『見殺し』」


 だとすれば、と枢はシンに向けて指を差した。神々の攻撃の流れ弾がシンに直撃し、死に至らしめた。


「ぐふっ……『仕返し』」

「ごはっ! そ、そう来たか……」


 結果は見苦しい相打ちだった。


「『死神』!」 


 椛も遂に遠慮しなくなり、冥界から死神を呼び寄せるという蛮行を行った。


「『認める』!」


 知ったことか、と萃香の命は刈り取られた。


「『ルドラ』!」


 暴風の神が降臨した。もう何処にも安全な場所などない戦いが勃発した。


「『ラー』!」


 太陽神がやってきた。声は聞こえないが、それはもう楽しそうに半裸になって光り輝いている。


「『圧力』!」

「『クロウ』」

「『占い』」

「『異国』」

「『燻製』!」


 魅魔はちょっと言葉に詰まった。


「あのさ、さっきから『い』と『く』ばっかりだな。苛めか」

「しりとりは本来そういうゲームです」


 そうか、と魅魔は頷いた。


「『石』」

「……『シラス』」


 射命丸は神々の攻撃から逃げ惑いながらふと思う。先に死んだ者たちは幸運だったのだろうと。

 霊夢は思った。ちょうど良い神様がいると。


「『スルト』」

「フハハハハハ!!」


 悪い悪い神様が高笑いしながら降臨した。空を見上げれば流星が降り注ぎ、大地は地割れが起き、絶対零度と灼熱が吹き荒れる。

 ふと、お空は鳥頭で思った。このままこの地獄で戦うよりはリタイアしてもいいんじゃないか、と。そうと決まれば後は早く、彼女はドヤ顔で呟いた。


「『トメィトゥ』」 


 つまりトマト。お空の意識はそこで途切れ、横たわった。


「あの馬鹿、自殺したわ」

「ある意味では正しい選択かもしれませんね」


 誰もお空の英断を責めることは出来なかった。次の手番は橙だが、この状況で理性を保てという方が無理な話だ。尚、年齢=少女には。


「にゃぁあああああああ!!」


 あっという間に制限時間の30秒が過ぎ、走りながら息絶えた。次は紫だ。


「『運営』」


 紫はまだ続ける意思を見せ、レミリアも腹を括った。


「『荊』!」


 慧音の体に荊が巻き付き、その行動を制限する。


「ぐっ!? 『神々の黄昏(ラグナロク)』!」


 残っていた神々が喜び勇んで出撃した。そして開幕と同時にスルトの流星が降り注いで大多数の神々が圧死した。 


「『苦無くない』!」


 椛の手から投げられたクナイを萃香は容易く弾く。


「『異文化』」

「『カラドボルグ』!」


 勇儀の手には聖剣が握られ、大振りの最上段からの斬撃が落とされる。


「『愚者』!」


 晴明はそれを一言で縛り、括り付ける。


「『夜叉』!」


 フランも容赦などなく鬼を呼び寄せ、


「『大和』!」


 神奈子も波動砲を打てる方の大和を召喚して正面にいた勇儀、晴明、フラン、神々を光の彼方へと消し去っていた。


「『咎人』!」


 その神奈子も身動きを封じられ、


「『途絶』!」


 メンタの言葉でさとりが絶命する。


「『ツクヨミ』!」


 魅魔も神を招来し、


「『弥勒菩薩』ぅ!」


 射命丸も泣きながら菩薩を呼び出して影に隠れる。


「『徒然草』!」

「『坂』!」

「『キャメロット』!」

「『徳川家康』!」


 次は椛なのだが、残念なことに彼女はスルトに特攻して玉砕した。次の萃香もいい加減疲れ、足を止めてしまう。

 それは皆が同じだった。神々の黄昏に巻き込まれた時点でこれはゲームで無くなっていた。空を見上げれば勇邪と化したスルトが楽しそうに笑っている。


「フハハハハハ! フハハハハハ!」 


 同じく空を見上げたメンタはやはりスルトも戦闘中毒者であったことを再確認すると同時にスルト相手にまともに戦っている神様を見つけた。


「あれって、プレア様ですね」


 手に持っているのは弓矢。番えられた矢には魔理沙が先ほど放った魔法の数百倍は威力がありそうな魔力が籠っている。その矢が発射され、スルトは右手に持っているレーヴァテインに黒い炎を纏わせた。メンタは知る由もないが、片やレーヴァ・ブラスト、片や凍原雪羅という大陸を凍らせる究極魔法だ。その両者の本気の技が激突し、周囲に摂氏プラス1500万度、摂氏マイナス2000万度が放射され――生きている者はもう誰もいなかった。


 

~博麗神社~ 


「疲れました」

『……同意』


 何が悲しくて神様バトルを見学していたのか、メンタにはもう分からなかった。一つ分かったことは『神様パないですね!』ということだけだ。

 全員机に伏したり床に寝そべり休息を取る。玄関からは何やら禍々しい気配を感じるが霊夢は動きたくなかった。


「メンタ、お客さん」

「霊夢さんが行ってくださいよー……」


 ピンポーンとインターフォンが鳴り、気怠い体を起こしてメンタは重い足取りで玄関の方へと向かっていく。

 当然、その禍々しい気配は良く知ったものでありメンタも特に警戒することなく挨拶に出向いた。玄関を開けるとスルトとプレアが立っていた。


「あけましておめでとうございます、スルトさん、プレア様」

「ククク、先のは良い余興だったぞ」

「君がメンタだね。直接会うのは初めてだね、ボクはプレア。よろしくね」

「僕っ娘ですか!?」


 パル姉とキャラが被ってますね! と言いかけたがスルトの手前、口を閉じておいた。


「えへへ、さっきパルと依姫とも会ってきたけどビックリしたよ~」

「本来なら会わせる予定は無かったのだがな。仲良くなれたようで何よりだ。ああ、そうだ、先の余興に対して何か報酬をやろうと思っていたのだ。メンタよ、何か望みはあるか?」


 と言われるとメンタの脳裏は欲で詰まっているため百近い煩悩が閃いたが――そのどれよりも早く()()()()()()()()


「――では、()()()()()()()()はどうでしょう?」

「――ほう」 


 スルトは悪笑わらい、プレアは面白そうに微笑んだ。


「良かろう。それっ」


 それを簡単にくれるスルトも大概だ、と彼女は思った。


「ククク、では良し年を」

「またね~」


 メンタは笑みを浮かべて手を振り、スルトたちはこの世界を見て回るつもりなのか地を蹴って飛翔していった。

 見えなくなったところでメンタも思い出したように寒さを覚え、玄関の中へと入った。扉と鍵を閉め、苦笑いする。


「またね、ですか」 


 それはまた何処かでもう一度出会う言い方だ。自分にはまだ分からないがプレアは会うつもりなのだろう、とメンタは思った。


「さてさて、と! 居間に戻ったら次のゲームをしましょうか!」


 意識を切り替え、明るく声を上げてメンタは小走りで居間へと向かっていく。

 元旦はまだ始まったばかりだ。


 余談だが報酬とは別にスルトたちは博麗神社にお参りもしており、後で確認してみるとお賽銭箱の中には純金の塊が重なっていて霊夢が発狂した。


グラたん「次回からはいつも通りの投稿になります!」

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