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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
85/119

第七十七話 導師VS祭歌

グラたん「第七十七話です!」



 昼食を食べ終えて午後。西側のステージ裏でメンタたちは機材のセッティングをしていた。レミリアが手に持っているのは咲夜から渡されているディスク。それとは別のディスクを機材に挿入し音量を最大にして調節を終える。


「此方メンタ。準備完了、オーバー」

「ディスクは変えて置いたわ」

「オッケー。それに乗じて乱入すればいいのね」


 天井付近には浮遊待機して連絡を受けている霊夢がいた。


「くっ……なんで俺がこんな卑劣なことをせねばならんのだ」


 下位族の付近には枢とシンたちが待機し、連絡を受けて仲間に指示を送る。


「じゃんけんで負けたから」

「では、始めましょうか」

「頼みますよ」

「作戦名『守矢消滅』。実行!」


 メンタたちも天井付近へと移動して各自配置に着き、ステージには一曲とMCを終えて次の曲に入ろうと早苗たちが立ち位置を変えている。


「ラスト、行くよ!」


 パルの合図に合わせてレミリアが再生スイッチを押す。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 見物人たちの気合と士気は最高潮。次がラストなこともありペンライトは赤と紫へと変わっていく。

 が、流れてきたのはベルセリャの交戦曲だ。


「えっ!?」

「ちょ、ちょっと選曲ミスしてるよ、咲夜!」

「そんな……レミリア様にちゃんと渡しておいたはず…っ!」


 急なトラブルに早苗たちは焦り、咲夜はステージ裾を見るとレミリアが天井付近に何かの合図を送っているのが見えた。


「ォォォオオオ!」


 その天井から霊夢たちが飛び降りて乗り込み、ステージ全体を騒然とさせた。


『オオオオオ!?』


 片膝立ちからゆっくりと立ち上がり、左足を引いて右腕を突き出して腕のスイッチを入れて長いブレードを伸ばし、早苗に向けた。


「見つけたわよ、導師!」


 その台詞はベルセリャの主人公が導師に向けて放つ台詞であり、早苗も導師衣装のため合っているといえば合っている。


「れ、霊夢さん!?」

「今日こそあんたを殺す!」

「何言ってるんですか! 邪魔しに来たのなら帰って下さい!」


 被害者である早苗は混乱しつつも穏便に霊夢たちを場外に出そうと試み、咲夜とパルは警備員を手招きしてステージ下に待機させる。


「黙りなさい! 私たちの曲を使ってまで信仰が欲しいのかっ!」

「そんなことしないよ!」


 実際パルの言う通りなのだが現状を見るに霊夢の言っていることの方にも一理あるかもしれないと見物人は思う。


「マギん~ぷい♪!」


 そこへ降りてきたもう一人、マギュルー衣装のメンタが裏声を使い、両手の一指し指をビシッと伸ばしてパルたちに向けた。


「証拠は聞いての通り、言い訳など見苦しいわい!」

「メンタまで!?」

「これはどういうことですかレミリア様?」


 ステージ袖から出てきたレミリアは開いていた傘を閉じて先端を咲夜へと向けた。


「あら、私はちゃんとディスクをセットしただけよ」


 その状況を見て見物人たちは演技なのか本当にトラブルなのか判断をし兼ねていた。


「なんだ? 揉め事か?」

「いや、演技だろ」

「乱入ライブか?」

「つーか曲始まってるぞ」


 見物人の声とベルセリャの曲が本格的に流れ始め、早苗は急いでメインマイクを手にしようとする。


「不味い……っ! パル、咲夜!」


 だが、ここも用意周到にマイクの電源を切られており代わりに霊夢が持っていたマイクに電源が入っている。


「もう遅い! リクロー、アイジェン、アルトリュス!」


 マイクから直接号令をかけ、霖之助たちが一斉に立ち上がった。


「閃撃必当!」

「奥義!」

「行くぞ、二律背反後天!」

『オオッ!』

『うおおおおお!』


 下位族と隊祭師たちがペンライトを高く掲げて体を大きくひねり、右から順番にうねるように波を作っていく。


「ほら、やっぱり!」

「俺たちも続けー!」


 それに合わせて観客たちが一斉にペンライトの色を赤で統一し、上下に大きく降り始める。


『行歌陣! 行歌陣!』

「上月!」


 当然、早苗たちもステージで呆然としてはおらず、歌と暴力をもって排除しようと腰の儀礼剣を抜いて手加減することなく霊夢の顔面に向かって薙いだ。


「紅蓮一閃!」


 霊夢は腕の剣で攻撃を受け、歌が途切れる一瞬の合間に重心を逆の足に傾けて早苗をステージ上から蹴り落とそうと回し蹴りを繰り出した。

 歌詞を噛まないようにしつつ体を後方に倒して蹴りを躱し、無手バク転を決めて体制を整え、歌詞の終わりと共に刺突を繰り出した。 



 一曲が終わるころにはステージが中破し、やらかしたメンタたちは地下会議室で正座させられていた。早苗たちは表情厳しく仁王立ちしている。


「で、何か弁明はありますか?」

『ついカッとなってやりました。こうしろと紫様に言われました』


 一斉に紫に視線を向けて責任を擦り付けようとする。


「酷い! 私一人の責任にする気ね!」


 そこへ扉がノックされ、白ローブ姿のスルトが姿を見せた。


「全く何をしているのだか。それと舞台の準備が整ったぞ」

「いよいよ本番ですね!」

「コラッ! まだお説教が終わってませんよ!」

「メンタ、正座」


 パルの圧を食らい、メンタは問答無用で正座に戻る。


「……はい」


 メンタたちは約15分間、息も付かせないお説教を食らい続けることになった。 



 場所を移動してメインステージ。

 今日のメインイベントということもありステージ周辺の指定席は満席、一般席も空きはほとんどない状態だ。生中継で幻想郷中に放映されており、コメント弾幕が次々に流れてきている。

 ステージは7×7で区切られた300mリングが一つと指令高台が対で置いてある。ステージ周囲は強化魔法壁で覆われており熾烈な戦闘が行われるのかもしれないと予測されている。当然、観客側からも侵入できないように処置が施されている。

 ステージ上部の解説席にはスルトたち野郎三人組の姿があった。


「では、これより博麗神社対守矢神社の『従者ゲーム』を開催する。実況は野郎外野枠ことスルト、霖之助、枢で務める」

「よろしくお願いいたします」

「よろしく」


 中央やブース内のディスプレイ画面にスルトたちの顔が表示され、見たことある人物たちに人々は騒めいた。


『オオオオオ!』


「また、審議や判定に関しては一切妥協なく中立公平をここに宣言する」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』


 ボルテージが上がるのを見越し、スルトは言葉を続けた。


「まずはルールの確認だ」



従者交換ゲーム

ルール

1、『主』一名と『従者』六名で行われる7×7の盤上ゲーム

2、盤上には『従者』六名を置き、『主』は『従者』に指示を出して相手陣営の駒を奪っていく。最終的に全滅させた方が勝者となる

3、ゲームに勝利した場合取られた『従者』は三か月間貸し出しする義務を背負う

4、尚、このゲームで勝敗が決しても相手を害しないこと

5、動かせる『従者』は一ターンに一人のみ

6、ターン毎に『カード』を引き、その効果を『従者』一名に付与することが可能

7、『従者』同士の戦いにおいては先取した方が勝利する

8、基本的に『従者』は一ターンに付き全方向一マス動ける。また、後退も可能


ゲーム目的

両神社の戦闘力及び人脈の確認と交流


勝利条件

敵の全滅

敵『主』が投了を宣言する


敗北条件

自『主』が投了を宣言する


『主』について

 『主』は『従者』を動かす以外でゲームに介入することは出来ない。能力使用は禁止され、どんな理由であれ使用した際は敗北と見なす。


『従者』について

 『従者』は『主』の指示でのみ動くことが可能。しかし命令を拒否することも可能。


『カード』について

 『カード』は五種類あり以下の効果を発揮する。

『疾風』:『従者』を最大三マス動かせる

『破砕』:『従者』の前方、2×3の範囲にいる者を敗北させる

『伏兵』:『従者』の姿を相手から見えなくする。敵『従者』に迫られたら敗北する

『拘束』:『従者』一人を指定して拘束する。『伏兵』を使用している敵『従者』に使用した場合、『伏兵』の効果は消失する

『跳躍』:『従者』一人を飛び越えることが出来る


備考:取られた従者は二度と盤面に上がれない



 画面にルールが表示され、一つ一つ丁寧に霖之助が説明を重ねていく。

 説明も一通り終えるとルールは画面の端に小さく寄せられ、代わりに今回の参加者の顔写真がアップで映し出された。


「今回参加するメンバーを紹介しよう。博麗側の『主』は【黒輝なる黄金の女狐】こと紫だ。『従者』には【博麗の無駄飯喰らい】霊夢。【実は年増な魔法使い】魔理沙。【博麗の腐れ陰陽巫女】メンタ。【腐れ陰陽師】シン。この定例四人に加えて永遠亭より【人体錬成大好き】永琳。【クソ兎】てゐの六人となっている。尚、今回藍と橙は外野枠として参戦する予定だ」


 続いて守矢側の顔写真と二つ名が紹介されていく。


「次に守矢側の『主』は【オタマジャクシデスティニー】諏訪子と【スーパーイノベイダー】神奈子の二人組だ。ただし神奈子はじゃんけんで負けて従者側になっている。そして『従者』は【胸部超贅肉】早苗。加えて紅魔館より【下着剥ぎの白い悪魔】咲夜。【猫耳鉄血制裁】パル。【飲んだくれの昼寝門番】美鈴。【外道闇魔導士】パチュリーの六人だ。レミリア、フランの両名は外野枠で参戦する」


 概ね両陣営誰が付けたのか分かりそうなものだ。


「尚、二つ名の名づけ親はプライバシーのため詮索無用に願い、以上で説明を終わる。続いて選手入場だ」


 画面が博麗側と守矢側の入場口へと移り、物凄く不機嫌そうな表情で参加者たちが入場してくる。

 博麗側。


「ねぇ誰よ、私にあんな二つ名付けた馬鹿は!!」

「年増ってなんだよ! 私はまだ――才だ!」

「絶対悪意ありますよね!」

「クソ兎って! 間違ってねぇけどもうちょっとカッコイイのあったろ!?」

「断固抗議します! 怪しい薬も錬成もやってません!」

「私……腐腐腐」

「キィィィ!! 誰が黄金の女狐よ! 誰なの! 誰が付けたのよ!!」


 守矢側。


「私はオタマジャクシの運命神じゃないのだー!」

「イノベイダーって、まだそんな次元に至ってないよ!」

「何か恨みでもあるんですか!?」

「――殺す。二つ名付けた人絶対殺す」

「くぎゅぅ……特に言い訳出来ない」

「昼寝はしてるけどお酒は週一です!」

「うう……私そんなんじゃないもん……」


 お互いがステージ上に上がり、どちらも視殺せんとばかりに睨みあう。


「各々言いたい事はあるようだがそれらはゲームでぶつけるように。さて、その間にオッズの倍率を見てみようか」


 トトカルチョの倍率は博麗1.5倍、守矢1.8倍となっており博麗神社の方に賭けている人の方が多いようだ。


「ふむ、意外にも博麗側が優勢か。霖之助はどう見る?」

「妥当かと思います。この手のゲームだと紫さんは結構強いですからね。返って諏訪子様はそこまでの機転はありません。ぶっちゃけ諏訪子様は前線で活躍した方が映えますので」


 紫は指揮官、指導者向きであり諏訪子は前線で戦いつつ指揮をするタイプだ。


「ということだが枢はどうだ?」

「概ね異論無いな。ただ、戦力的には守矢が優勢だ。やはり『主』の指示が鍵となるだろうな」


 枢の見解とも合致し、スルトは首肯した。

 紫と諏訪子はリングの高台に上がり、両陣営ともにリング上に分かれていく。


「そうだな。――そろそろ両者準備が整ったようだな。先手はじゃんけんにより博麗側から始めることとなっている。試合開始!」


 カァン、と枢がゴングを鳴らし試合が開始された。



 博麗側の並び順は紫から見て左から霊夢、魔理沙、メンタ、 シン、永琳、てゐの順に並んでいる。

 リングは左並びで一マスごとに1~7と番号が書かれており、諏訪子がいる方を上部、紫がいる方が下部となっている。マスの中央は『主』のために開けられており、基本的に主は動くことはない。

 先手。紫が手元のカードを引く。


「私のターン、ドロー!」


 引いたカードは『跳躍』だ。


「あんまり意味ないですね。取っておきましょう」


 カードを左手に移し、まずは魔理沙に先を進ませる。


「まずは魔理沙、前へ」

「あいよ」


 魔理沙が進めばターンエンドとなり、手番が諏訪子に移った。

 守矢側の並びはパル、咲夜、美鈴、早苗、パチュリー、神奈子となっている。


「私のターン、ドロー!」


 諏訪子が引いたカードは『破砕』。これを咲夜に向けた。


「幸先良いねぇ。これは咲夜に付与するよ」

「はい」

「そして前進なのだー」


 咲夜が前進し、何事もなく1ターン目が終了した。



 実況席ではスルトが外野BOXとカメラを近くに寄せ、ディスプレイにはフランドールの顔が映った。


「外野タイム、今回引くのはフランだ!」 

「てやっ!」


 BOXに勢いよく手を突っ込み、カードを一枚引く。


「出たのは――『スライム』だ。――このカードは踏んだ人は一ターン行動不能かつ服が溶ける!」

『よくやった!』


 誰が作ったのかお察しのカード内容を読み上げ、野郎どもが大いに沸いた。


「じゃーここにするね」


 フランが設置した場所は2-1、霊夢の目の前だ。


「うっわ……」


 傍で見ていたレミリアが意図的な配置を見て引き、フランは満足げにポテチの袋を開いた。



 リングに戻り、二ターン目。


「ドロー!」


 次に紫が引いたカードは『拘束』だ。


「良い札だけどまだ必要ありませんね。シン、前進してください」

「了解」


 今度はシンが前進して特に何もなく手番が終わる。


『ぉぉう……』


 会場の野郎どもがあからさまに溜息を吐いてガッカリし、周囲の女性たちが一斉に白い目で男性陣を睨んだ。


「最低!」

「ないわー!」

「野郎なんてそんなもんだ」


 実況席から聞こえた枢の言葉に陰陽生の大多数が首肯した。



 続いて諏訪子のターンとなり、カードを引く。


「ドロー!」


 出たカードは『疾風』。使おうか悩んだが今回は見送ることにする。


「ん~、ストックかな。咲夜、前進」

「はい」


 咲夜が前進し、2ターン目が終了する。



 実況席では特別席にいる面々にカメラが回され、BOXがテーブルに置かれた。


「次は――」

「こいしにやらせてみたら?」


 さとりが提案すると霖之助が鷹揚と頷いた。


「構いませんよ」

「わーい! これっ!」


 BOXからカードを取り出し書いてあったのは『寝返り』――。


「寝返り?」

「寝返りとは文字通り従者一名を敵側に寝返らせることが可能なカードだ。誰にする?」


 これを序盤で引き当てたのはかなり痛手だろう、とさとりは考える。どちらの陣営もまだ脱落者が出ておらず叩き潰すなら初期配置こそが絶好のチャンスでもある。

 ただし、カードを配置する人物はどちらに肩入れしても良いため、これで戦況が大きく変わるだろうと予測する。


「えーりん! えーりん!」


 こいしが特に考えもなく楽しそうに右手を振り上げて下す運動を繰り返し、宣言した。


「ええっ?」

「う、裏切ったな師匠!!」


 この時点で永琳が博麗側から守矢側へと移動となり、分かりやすいように回れ右を強要された。


『ルールだ。現時点で永琳は守矢側となった』

『ちなみにカード付与されていた場合はどうなりますか?』


 ふと霖之助が疑問を提示すると答えはスルトから帰ってきた。


『付与されたままだ。使用するも否も主次第だ』

『なるほど……』


 視点はリング上へ切り替えられて紫の手番。永琳が裏切ったことにより戦況は一気に不利へと変わってしまう。


「くっ!? これではシンかてゐのどちらかが取られてしまいますね……」


 カードを引き、手元に来たのは『伏兵』だ。


「くぅ……いや、でも待って」


 ――ここで永琳を取ったとしてもそれは相手を喜ばせるだけ。でも反転がまた来るとも限らないし……。

 それならばと紫は別の札を繰り出した。


「……これなら時間は稼げるかしら。『拘束』発動! 対象は咲夜!」


 手札から『拘束』を正面に向けると光の鎖が咲夜を縛りつけて動けなくする。


「うぐっ」


 この光の鎖はスルトが依然使っていた物をそのまま封じ込めたカードだったりする。

 カメラの位置が咲夜の足元付近にまわり、下着が見えないギリギリで待機して縛られ続けている絶対領域の太ももを映し出した。


「……エロい」


 誰かが呟くと咲夜もカメラに気づいた。


「何処見ているのですか!」


 カメラは一旦画面を切ってすぐに別の場所へ移動していく。このカメラは自立型のAIが含まれているが作ったのがメンタであるため余計な回路が入っている。


「てゐ! 永琳を殺しなさい!」


 リング上では紫が指示を出し、てゐは喜び勇んで永琳の方へと走り出した。


「なっ――!」

「ヒャッハァァ!! 長年の恨み、食らえ! 必殺・月面正中線かかと落とし!!」


 マス目に入るや高く跳躍し、右足を天高く上げ、かかとの隠しナイフを真下に向けて出現させて永琳の脳天めがけて振り下ろす。


「後で憶えてなさい!!」


 ドカッ、という悲惨な音と共に永琳の脳天に踵が直撃し、一撃死して外野に搬送されていく。


「仕方ない……仕方ないのよ。ここで二人を失う訳にはいかないのだから」


 大を救うために小を切り捨てるという言葉がある。だがその実は尤もらしい理屈をつけて私腹を肥やしたいがためだ。


『言い訳乙です!』


 永琳に一撃を加えて非常に上機嫌なてゐとメンタがハイテンションのままハイタッチを交わした。

 手番が守矢陣営に移動し、カードを引く。


「ドロー!」


 出現したのは『拘束』。これはまだ使う必要はないと諏訪子は考える。


「まだ取っておこうかな。神奈子、前出て」

「はいよ」

「本当は咲夜を動かせればよかったけど、ま、いいかな」


 神奈子が前に移動して3ターン目が終了した。



 実況席ではスルトが戦況を見つつ唸っていた。


「三ターン目にして一人脱落か。面白い」


 さて、とBOXの方を振り返ると傍には気合の入った表情の輝夜が待機していた。


「次は私」

「良かろう」

「永琳、仇は取る!」


 BOXに手を入れて引き出したものは――『触手』だ。


「読んで字の如くだ。野郎共、沸き立つが良い!」


 スルトがカメラを向けると観客席の野郎どもは思わず立ち上がって叫んだ。


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

「セット、6-5!」


 が、その場所を見てスルトの眼光が酷く冷たいものに変わった。


「……ほほう輝夜よ。余程命が要らないらしいな」


 そこは早苗が現在いるマスの目の前だ。

 スルトの威圧に対して輝夜は『ザマァw』と書かれた扇を広げて微笑んだ。


「あら、これはゲームよ」

「……後で憶えているが良い」

 


 場も4ターン目となり、一人脱落という状況。咲夜は『拘束』によってまだ縛られているという美味しい場面だ。


「ドロー!」


 引いたカードは『伏兵』だ。


「これは……魔理沙に付与します」


 カードを魔理沙に向けると姿が見えなくなり、代わりに霊夢の方を見た。


「とはいえ、不用意に動かすのは得策ではありませんね。霊夢、前へ」

「分かったわよ」


 霊夢が目の前のマスに移動して罠を踏み抜いた。

 勿論、外野カードが何処に仕掛けられているかは実況席と観客しか知らず、リング内は外からの攻撃や妨害に備えて防御膜が張られているため声は届かない。


『キタァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』


 踏み抜くと同時に何もない上空からスライムが大量に落下し、霊夢に張り付く。


「きゃっ!? な、なにこれ! スライム!?」


 今回のスライムは人畜無害ではあるが対衣服特攻の酸性を装備しており、また粘着性が高く実に厭らしい絵面と共に服が溶けていく。


「ちょっと嫌っ! 服! 服溶けてるわよ!!」

『仕様だ』 


 スルトの無常な声が響き、霊夢はメンタの方向を向いて睨んだ。


「メンタァァ! 後でぶっ殺すから覚悟しなさい!!」

「御褒美です!」


 キー! と霊夢は完全にヒステリックを起こしスライムを急いで排除にしかかった。

 守矢側もその様子を堪能しつつ手番が移動したことを確認した。


「ハッハー! これが本当の爛れ巫女!」

「ドロー!」


 引いたカードは『疾風』。


「ストックなのだ。早苗ちゃん、前に!」

「はい!」


 諏訪子の何てことない指示に早苗は疑いもせず前へと進軍していく。


『ブヒィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!』


 外野が眼球を見開き、立ち上がり、豚の如く叫んだ。

 何処からともなく触手が現れ、早苗に襲い掛かる。ちなみにこの触手も人畜無害でぬめりと煽情的に縛り上げることに特化しているだけだ。


「ひっ! な、何ですかコレ!? やっ、ちょ、気持ち悪い! いやあああああああああああああああああああああああああ!!」


 ぬるぬる、ぬちゃねちゃ、と音も欲をそそるオンパレードだ。


「早苗ちゃぁぁぁん!!」

「早苗っ!」

「助けてくださいぃぃ!!」


 早苗が手足をもがいて二柱に助けを求めるがプレイヤー同士の干渉は禁止のため二人は動くことは出来ない。


『仕様みたいよ』

『くっ! メンタ、其方を後で磔刑に処す』


 輝夜の笑い声とスルトの刺殺せんとばかりの視線がメンタに注がれる。


「縄はきつめでお願いします!」


 そんなこと聞いてないと誰もが思った。



 実況席では比較的冷静な霖之助が司会を進め、BOXの方にカメラを向けた。


「次の方は――」

「あの、よろしいでしょうか?」


 今度は珍しいことに地底から見物にきたらしいひじり白蓮びゃくれんという女性が待機していた。その佇まいや仕草から高潔な聖女を思わせる。

 枢も彼女を見るなり驚いて腰を浮かした。


「聖さん、来ていらしたのですね」


 香霖堂にも偶に来て物資の調達や近況の様子を雑談するなど親交もある。


「慧音に誘われまして」

「はい。でも凄い事になっていますね」


 状況を見ても霊夢と早苗が実に大変なことになっており、観客たちは狂喜乱舞して拍手していた。


「ええ……まあ」

「この中から引けば良いのですね?」


 BOXを覗き込み、持ち上げて中身が入っていることを確認する。


「はい」

「それなら――これにします」


 BOXから取り出したのは『入れ替え』と書かれた木札だ。


「これは――」

「敵味方問わず指定した者を入れ替えるカードだ。二人選んでくれ」


 迷っていると枢がすかさず注釈を入れて助け船を出し、カンペを白蓮に見せて言葉に出させる。


「えっと、霊夢と早苗を入れ替え、でお願いします」

「何ッ」


 スルトが思わずリング内へと視線を向けると、霊夢と早苗の位置が一瞬にして入れ替わっていた。

 当然ながら触手とスライムの効果はまだ続いているため、その中に二人はダイブした。


「ふざけんなぁぁああああああああああああああああああ!!」

「もう嫌ぁぁああああああああああああああああああああああ!!」


 その二人を見てブヒー! ブヒヒー! と観客席から豚の声が多数発生した。 



 霊夢たちの位置が変わったことによって紫たちの次の一手も概ね決まっていた。


「ドロー!」


 紫が引いた『疾風』のカードを手元に残し、一番近くにいる魔理沙に指示を飛ばす。


「魔理沙、早苗を殺ってください!」 

「言われなくても今すぐ楽にしてやるぜ!」


 スライム+触手という薄い本の内容を実写化した展開を終わらせるべく魔理沙は早苗に向かって拳を振るい、仕留めた。


「ドロー!」


 諏訪子の方もカード『跳躍』を引いて手札に入れ、パチュリーに指示を出した。


「パチュリー、霊夢を!」

「ええ、そのつもりよ」


 マスを移動して霊夢を仕留め、諏訪子は外野で着替えを終えて恥辱に顔を真っ赤にして泣いている早苗に視線を向け心配し――、


「くっ、早苗ちゃん……」


 後でスルトから録画映像を貰ってブルーレイに保存しておくから、と思考した。


グラたん「ちなみにですがチェイルズの元ネタはテイルズシリーズです。衣装設定も概ね原作通りです」


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