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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
76/119

第六十九話 メシウマ合体、GO!

グラたん「第六十九話です!」


 さて、霊夢たちはというと――。

 霊夢と相対するのは早苗と二大馬鹿柱の諏訪子と神奈子だ。その表情は欲望に塗れ、しかし戦うのはあくまでも早苗だというように背後で特戦隊ポーズを決めて待機している。


「食べ物がかかった状態の私たちは無敵!」

「早苗ちゃん、合体だ!」

「はい!」

『メシウマ合体、GO! ア〇エリオン!!』

「著作権!!」


 酷い合体方法に霊夢は叫ぶが、神降ろしには変わりなくパルと同様に四対八枚の翼を背にした早苗を見て霊夢は歯噛みした。


「――! やり方は非効率だけど神降ろしを成功させたっていうの?」

『一人より二人! 二人より三人! 覚悟!』

「ちっ、誰よこんなの教えた馬鹿は」


 小さく毒づくと早苗の背後、お堂の階段でお茶を飲んでいたスルトが答えた。


「余だが」

「黙らっしゃい! そんなことだろうと思ったわよ!」


 ククク、とスルトは笑いながらお茶を飲む。


『まずはこれ! オンバシラ!』


 早苗が背後に二対四本の砲木を出現させ、霊夢に向かって砲撃する。


「出たわねリボンズキャノン! 龍符「ホーミングアミュレット」!」


 砲撃は直線のため左右にステップして避け、本体の早苗に対して自動追尾連射の弾幕を放つ。


『鉄火盾!』


 それを鉄の盾でガードし、片手には鉄の槍を持って突撃してくる。


「これは諏訪子の!」

『せやぁ!』


 霊夢は突きが来るのを見越して避け、更に後方へと跳躍する。


『このっ!』


 早苗は距離を詰め、突きを繰り出して霊夢を仕留めようとする。

 だが霊夢からの攻撃は一切なく、回避に専念しているようだ。それに苛立った早苗は声を荒げて叫ぶ。


『真面目に戦ってください!』

「嫌よ。だってそれ未完成でしょ。だったら自壊待った方が効率的だもの」


 正論だが、早苗にとっては何の面白みもない効率厨の言葉だ。


『ムカッ。そんな口叩けなくしてあげます!』

「やれるものならね」


 地上から空中へ。完全に逃げることに徹した霊夢に対して早苗は鉄を消し、小さなオンバシラを何本も出現させて浮遊させる。


『オンバシラキャノン!』


 小型のオンバシラが飛び、小規模なビーム砲撃が霊夢の衣服を掠めていく。


「ふっ」


 次いで、霊夢の動きを止めるべく捕縛術式を展開し、自身も飛翔する。


『次!』

「当たらないわよ」


 小規模なビットは回避され、拳や蹴りによって破壊されるため数と位置が揃うまで消耗戦を強いられる。だが徐々に一歩ずつ確実に位置へと霊夢は追い込まれて行く。


『これで!』


 巨大なオンバシラを生成し、鉄を纏わせた戦槌に変化させて霊夢に投擲する。続いて派手に、しかし策を気取られないようにしながらも捕獲術式を混ぜた小オンバシラを周囲に飛ばしていく。


「何度やっても同じよ」


 回避され、位置に入った瞬間、早苗は不敵な笑みを浮かべた。


『今!』


 周囲に奔らせておいた小オンバシラから魔法陣が発動し、霊夢に向かって鶴が伸びていく。


「何を――、っ! しまった!」


 霊夢も一瞬遅れて気付くが鶴を全ては躱し切れずに絡みつかされ、肢体を拘束される。


「ぐっあ!」


 ここぞとばかりに距離を詰め、二柱が力を合わせた二本の黒柱を出現させ、霊夢は何とか脱出しようともがく。


『黒鉄・オンバシラぁぁ!!』


 殴る。ひたすら殴る。気絶するまで殴る。結局の所、タフな霊夢を倒すには高威力ボディーブローを繰り返すしかないのだ。

 まさか、動かない相手にパイルバンカーを打ち込むほど早苗は鬼畜ではないが、一撃で楽になるか殴り続けられて気絶させられるか――果たして本当に楽なのはどちらだろうか。


「ぐぅ――」


 霊夢が力なく倒れ、早苗は息を切らしながらも警戒し、霊夢をオンバシラで突く。 


『か、勝った?』


 神衣を解除し、念の為に諏訪子が突っついて確認を取る。


「つんつん……うん、間違いなく気絶してる」

「時間はギリギリだったけど……よくやった、早苗」


 ホッと息を吐いたのもつかの間、早苗も遂に限界が来て倒れてしまう。


「きゅぅ……」

「あらら、気絶してる」

「ぶっ続けだったからね」


 時間にして半日。休憩を取っていたとはいえ数分程度で莫大な疲労が癒えるはずもなく、その後で本番をしたのだから無理も無いだろう。


「向こう二つも終わったみたいだねぇ」

「うむ」


 視線を向けるとパルもメンタを担いで守矢神社の居間へと運び、紫たちもスキマから出てきた。両脇にはレミリア、妖夢、藍を抱えているが結構際どい戦いだったというように二人ともボロボロになっていた。


「そっちも終わったみたいですね」

「食後の運動くらいにはなったねー」


 ゾロゾロと居間へ入って行き、階段下で気絶していた者たちもスキマに飲み込まれて居間や永遠亭に運ばれて行く。


「はー……」


 戻って来た魅魔はちょっと意外そうに、空を見上げていた。


「どうした、魅魔」

「あの霊夢たちに勝てるもんなんだねぇ」


 幻想郷の事変解決には霊夢が行うと相場は決まっており、解決できなかった事変は無かったはずだ、と魅魔は記憶している。それが今回は敗北を喫し、更には後輩に色々と先を越されるという結果に終わった。

 ――変な事にならなきゃ良いけどな。

 そんな漠然とした不安を抱えつつも魅魔は溜息を吐いた。


「こんなものだ。さて――」


 スルトは落下寸前の隕石に向かって手を伸ばし、魅魔に押し付けた術式を解放する。隕石に対して反発魔法と誘導魔法を行使し、隕石の挙動が急に代わって月へと向かう。

 ゴゴゴゴゴゴゴ――と音の鳴る空を見上げた全員はそれを見て口を開けて固まった。


『あ……』


 綺麗な満月は十六夜へと変化した。



 月面。飛空艇にて優雅な午後を過ごしていた灰色の人は突然の自信に何事かと窓を開けて外を見ると月面の一角が吹き飛んでおり、例え明日には元に戻っているとしても、彼女は両手をわなわなと振るわせて叫んだ。


「あの馬鹿ァァ!!」


 同時刻。久しぶりに温泉を楽しもうとしていた豊姫は突如落ちてきた隕石が慰安地を粉々に吹き飛ばし、怒声を上げた。


「だああああああああああああああ!!」


 お付きで付いて来た兵士たちはこれを我がごとのように喜び、神に感謝し、『ざまぁ、ざまぁ、ざまぁ!!』と小さく凱歌を謡った。



 守矢神社。事変も終え、前庭の片付けも終えた夜中――。居間は事変終了の宴が開かれているが暗さ半分明るさ半分と言った所だ。

 まずはメンタ。パル……依姫に精神を圧し折られ隅っこで体育座りして酒に逃げていた。


「……あれですね。常人の努力なんて天才にしてみれば『そんなことに時間かかってるの』くらいの感覚なんですよねー。ええわかっていましたよ。デスゲ時代に2日でレベルを越されたあたりから、否、昔からどれだけ努力して結果を残そうとも周りから『ああ、パルの妹だから当然だね』って言われて褒められたことがなかった辺りから。あはは、馬鹿みたいですよ。何一つパル姉に勝てる筈が無いと分かっていながらも無駄に無駄に無駄に無駄に無駄に無駄に頑張ってしまって、結局は負けて、惨敗して、手も足も出なくて、心を折られて、くふふふふふふふふふふふふふふふふ」


 元々無いハイライトの眼から今度は色も消え、メンタだけモノクロのような雰囲気を漂わせていた。


「そ、そんなことないよ」


 パルはずっと傍で弁明しているがどれもメンタの耳には届かない。


「調子乗っていたのは認めますけどね……それでも舐めプは酷いと思うんですよ。勝てると見せかけてのあっさりした逆転ってやられる方は堪ったもんじゃないです。ほら、勇者とか英雄は都合の良い覚醒、よくやりますもんね。HAHAHA、ここは地球じゃなくて幻想郷、漫画世界もおっけーおっけーべりーおっけーでーすーねー」

「お姉ちゃんも反省してるよ?」

「……ふふ、反省って何ですか? 美味しいんですか? チートが反省とかするはずありませんよね。いいんですよ、パル姉にとって所詮オレは噛ませ犬の雑魚同然なんですから。電脳世界で精神的に潰して壊してその後は肉体ですか? もう笑うしかないじゃないですか! あはははは! ……ぐすん」


 グルングルンと首を回して酒を一気し、顔を伏せてさめざめとメンタは泣いた。


「あうう……霊夢は博麗神社に帰っちゃったし、魔理沙は蒸発しちゃったし……勝者と敗者の格差が酷いことになってる……」


 みれば諏訪子と神奈子はチーズフォンデュで『うぇーい!』とはしゃいでおり、幽々子は女体盛を実行し、妖夢を筆頭に椛、射命丸、てゐ、モブ兎共に集られて騒いでいる。


「はぁ……もう寝ますね」

「一緒に寝てあげよっか?」


 パルの献身的な申し出にいつもなら飛びつくはずのメンタは燃え尽きた作家の如くその場に寝転んだ。


「今日は遠慮しておきます。もう疲れました、色々と」

「やだ、心配だから一緒だよ」

「えええ、心配も何も元凶じゃないですか…………」


 パルの膝に抱えられ、頭部をしっかりホールドされた状態でメンタは眼を閉じた。その隣では依姫がもたれかかり幸せそうに眼を閉じている。


「珍しい、逆の構図だ」


 諏訪子がカメラを連写して何時かのネタを集め、酒瓶を開けていく。


「ウマー」

「くー、酒が進む!」


 次に紫だが、彼女は油揚げを詰めたお風呂にダイブさせ、ついでに藍と橙も放りこんである。椛には幻惑魔法をかけてお堂に放置し、スルトは焼き鳥を焼きつつ片手間で魅魔の将棋の相手をしていた。


「王手。詰みだ」


 パチン、と音を立てて詰みを宣言され、魅魔はブリッジして叫ぶ。


「くそぉぉぉ! 片手間で負けるのかよぉぉ!!」

「焼き上がったぞ」


 焼き鳥を渡されて泣く泣く頬張り、更に泣く。


「美味いんだよ畜生ぉぉぉ!!」


 もう一局! と叫び、駒を並べてはスルトにせがむ。


「そういえばレミリア様たちは?」


 気絶から起き上がって陽気に酒を飲んでいた美鈴は近くで同じく串焼きを食べていた咲夜に問う。


「別室に布団を並べてその上に寝かせています」


 所謂、雑魚寝ではあるがどうせその場には少女しかいないため多分問題は無いとかなり雑に咲夜は思考する。


「では思いっきり騒げますね!」

「ほい、箸と皿」

「見よ、兎回し!」


 てゐに渡された割りばしと皿を手に美鈴は余興を見せる。その皿の上にはモブ兎が乗っており、さて何時落ちるかと咲夜は解体包丁を取り出した。

 ある程度すると一人、二人と酔って落ち、勝手に就寝していく。


「やれやれ……」


 最後まで割を食うのは起きている者――スルトだ。

 部屋を片付け、戸締りをしてから彼も私室へと向かった。 



 博麗神社付近――。

 敗北と瘴気、混乱に蝕まれた彼女は重い体を引き摺りながら帰路を辿っていた。


「私は……どうしたら良いんだ……」


 じわりじわりと瘴気が集まり体を蝕んでいく。


「うぐっ……また、体が…………帰って寝よ」


 何度ともしれない言葉を告げ、彼女は道を歩く。

 ここは迷いの森。正しき道など存在しない。



 博麗神社に帰って来た霊夢は気絶から起き上がると苛立ちのままに裏山へと飛翔し八つ当たりを繰り返していた。


「くそっ!」


 弾幕を辺りに撒き散らし、寄って来た妖怪を八つ裂きにして回っていく。


「なんで出来ないのよ! ええい!!」


 辺り一面を吹き飛ばし、今日起きた事を、敗北と凌駕を必死に受け入れまいと抵抗していた。だが現実はもう決着がついており、霊夢は自分の存在意義を問う。


「やらなきゃ……事変解決が出来なかったら私は……私なんか……」


 ドサッと力の使い過ぎで気絶し、遠目で見ていた紫と藍は霊夢を回収し、博麗神社へと戻る。

 霊夢を居間に寝かせ、僅かに発熱しているため額に氷を乗せておく。


「霊夢、今回の事が余程ショックだったのですね」


 お茶を淹れていた藍が呟き、紫は頷いた。


「後輩の早苗に負けたことが一つ、事変を解決出来なかったことが一つ。そして負ければ滅ぶ事変で敗北してしまった……今まで苦戦こそしても挫折はしなかったからそのツケが回って来たのかもしれないわ」


 寝てもうなされている霊夢を一瞥し、藍は尋ねた。


「では霊夢にも神降ろしを教えるのですか?」

「それは――」


 私が教えることではない――と告げようとして何処からか咆哮が聞こえた。二人ともに顔を上げ、緋月十六夜の空を見上げた。


「何?」

「狼でしょうか? 最近は妖怪も獣もここには滅多に近寄らないのに……」


 感じられる妖気は上位――いや最上位にも匹敵するだろう。そしてわざわざ博麗神社付近にいるとなれば相応の強さはあって然るべきだ。


「随分と大きな気配がします。……眼が覚めたら霊夢にやって貰いましょう」

「変に感情的にならないと良いのですが」


 藍の疑問に紫は恐らくは――……と答えかけ、庭に降りてきた魅魔に視線を向けた。


「おい、紫」

「魅魔? こんな夜更けにどうしましたか?」


 皆が寝静まった頃、魅魔は魔理沙の様子を見ようと迷いの森ある自宅に行ったがそこに魔理沙の姿は無く、心当たりを全て見回った後で博麗神社へと来ていた。


「魔理沙の馬鹿を知らないか? 何処にもいないんだ」

「魔理沙……そう言えば事変の際にも見かけなかったですね」


 藍も最初こそいたが、魅魔に連れられた後は一切姿を見ていなかった。


「ちっ、あいつ迷いやがったか」

「……何をしたのですか?」

「ああ、実はな――」


 と、魅魔は事情を説明し、紫は嘆息した。


 

 空は晴天、曇り一つない朝。

 淹れ立てのお茶良い香りが鼻孔を突く中、霊夢は眼を覚まして起き上がる。


「起きましたか?」


 声のする方を向けば紫が珍しく自分でお茶を淹れており、一つを霊夢に差し出した。


「紫……私は……」

「事変です」


 霊夢の弱気な言葉を被せるように紫は言い、霊夢は酷く怯えた。


「わ、私……」


 霊夢がここまで弱るのは珍しいと思いつつも紫は微笑み、優しく告げた。


「あれは訓練みたいなものです。霊夢にもっと強くなってほしかったからなのですが……少し薬が効きすぎましたか?」


 つまり策略、自分の性だと霊夢を慰めてみるが果たして効果はあったのか、霊夢は小さく頷いた。


「……うん」

「ごめんなさいね。でも分かってください」


 理解するかどうかはさておき。


「……今はまだ……。先に事変解決してくるわ」


 受け取った温いお茶を一気に飲みほして机に置き、立ち上がる。


「無理しなくて良いのですよ」

「やるわ。じゃなかったら私が生きている意味がないもの」


 霊夢は、事変を片付けることしか能の無い少女だ。それ以外は惰性であり、そういう能力の元で生まれた存在だ。

 だが、仮に霊夢が死んでも今は自分よりも優秀な保険がある。つまり無茶して死んだとしても()()()()()()()と霊夢は損得してしまっている。


「今回は何?」


 霊夢の問いに紫はスキマから地図を開き、一角を指差した。


「博麗神社の麓付近に強力な魔法を扱う妖怪が出現しました。これを討ち取り、事変の収拾に当たって下さい」

「分かったわ」 


 汚れた衣服を着替え、一度強く頬を張って気合いを入れ、霊夢は外に出た。


「行ってくるわね」


 振り返ることなく霊夢はそう言い、紫もお茶に視線を固定したまま告げた。


「霊夢」

「なによ」

「あまり気負わないで下さいね。例え失敗しても貴方には仲間がいます」

「……最悪、紫が何とかするんでしょ」


 それは本当に最悪の場合だ、と紫は苦笑いする。


「ゴメン、冗談」

 霊夢も『何当たってんだか』と小さく零して飛んでいく。

「仲間か……」


 紫は霊夢が飛んで行った空を見上げて()()()



 麓の里に到着した霊夢は住民は避難していることを真っ先に確認し、里を歩いていた。


「こりゃ酷いわね」


 十字路に差し掛かると一足先に戻って避難誘導をしていたアリスと出会い、状況を問う。


「霊夢」

「あんたは無事みたいね」

「……まあね」

「被害状況と里人は?」

「里一つが半壊。里人は南の里へ避難してる」

「了解。妖怪は?」

「西に向かったわ」

「西に……」


 西は守矢神社がある方角。やや強めの視線で睨み、アリスは忠告する。


「気を付けて、アレは強い」

「……やってやるわ」


 里から飛翔し、妖怪が逃げて行った方向へ急行する。



 逃げた方向へとやってくるとちょうど妖怪が町を襲っており、形は大きな人型、多重の魔法陣を展開し、町を焼き払っていた。


「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 火炎弾を無差別に放射し、建築物や畑を焼いて行く。


「妖怪だぁぁ!」

「逃げろ!」

「ヒィィ!」


 その先には逃げる人間たちと最前線で腕輪型の武装を纏って戦う霖之助の姿があった。


「くっ……せめて住民を逃がし切るまでは!」

「グラアアアアアアア!!」


 妖怪の口から熱線が放射され、霖之助はブースターを起動して辛くも避ける。

 そのまま魔法刀を手に妖怪に肉薄し、斬撃を仕掛けた。


「はぁぁ!!」


 材質は脆いのか霖之助程度が振るった刀でもダメージは通り、妖怪は悲鳴を上げた。


「グガアアアア!!」


 痛みと叫びで多重魔法陣を空中に展開し、霖之助に向かって放出する。


「障壁!」


 キラキラと星のような魔法攻撃に対して防御壁を起動して防ぐが徐々に罅が入り、割れると同時に後方へ跳躍して直撃を避ける。


「ぐっ……やはり強度が……!」


 そんな様子を霊夢は空中から眺め、感心した。


「何よ、霖之助ってやれば出来る人だったのね」


 ――……負けられない戦い……。

 霊夢にも負けられない事情があるように、霖之助にも負けられない理由がある。

 飛翔を止めて下降し、弾幕を手にする。


「くっ――まだ背後に……」


 霖之助の背後ではまだ非難し終えていない町人たちがおり、妖怪はそっちに向けて火炎弾の魔法陣を立ち上げた。


「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 霖之助もそれに気付いて障壁を展開するが、そっちはそっちであり、霖之助自身の方には触手による直接攻撃を仕掛けて来ていた。


「不味い!」


 霖之助も触手迎撃に手を取られ、その間に火球が障壁を超えて背後に向かっていく。狙われたのは小さな子供だった。


「ひっ!」


 子供は避けることなく、霖之助も振り返ってブースターを全開にして手を伸ばす。

 ――間に合わない!


「防符「結界陣」!」


 空中から放たれた防御結界が火炎弾を弾き、次いで霊夢が降りてくる。


「さっさと逃げなさい! 西よ!」

「は、はいぃ!!」


 近くにいた大人が泣き喚く子供を抱え、必死の形相で駆け出していく。


「霊夢さん」


 霖之助が協力を申し出ようとして、霊夢は手で制した。


「ここは私がやるわ。霖之助さんは里人の避難を優先して」


 先の事を知らない霖之助は霊夢ならば――と首肯した。


「――分かりました」


 町人の殿を務め、逃走を指揮する様子は到底霖之助とは思えないことに霊夢は思わず苦笑し、笑みを消した。


「さて……」

「ウアアアアアアアアア!!」


 煩わしい叫びを聞かせる妖怪を冷たく睨み、霊夢は弾幕を構えた。


「行くわよ」


 一切容赦の無い攻撃が妖怪を貫いていく。


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