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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
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第四話 猫耳……つけなきゃ!

グラたん「第四話です!」

 前回のあらすじ。

 幻想郷に落とされてウハハーイしている馬鹿な妹、メンタはウハハーイして幻想郷を楽しんでいた。以上。


 それにひきかえ姉のパルは綺麗な湖畔の近くに倒れ、その周囲には妖精たちが群がっていた。妖精たちにしても珍しい物は大歓迎で、倒れているパルは恰好の標的にされていた。

 そんな折に人里から帰宅途中の少女たちが通りかかると妖精たちは一瞬で森や泉の中へ消えて行った。それでもまあ、馬鹿というのは何処にでもいるわけで。


「ヒャッハー! 吸血鬼は消毒だー!」


 近年稀に見るほどの馬鹿が具現化したような青い髪に小柄な体、背中には六枚の羽があり、服も青という青ずくしの彼女の名前はチルノ。彼女は俗に吸血鬼と呼ばれる少女へ特攻をかけた。

 その少女の名前はレミリア・スカーレットと言い、この周辺にある巨大な屋敷『紅魔館』の主だ。その隣にはメイド服を着た少女がいるが、彼女は護衛をする気もなさそうに泉の方を向いていた。


「失せろ」


 レミリアは持っていた傘をバットのように構え、勢いよくスイングした。

 ぱーん、と良い音がしてチルノは何処かの山奥へと吹き飛んで行った。

 多分、首や手足の一、二本は無くなっているだろうが、やっつけてもすぐに復活するため遠慮は要らない。更に言うのなら殺しても再沸きする序盤のスライムのような存在だと言っておく。

 レミリアは、はぁ、と一つ溜息をついて顔を上げた。その視線の先に倒れているパルを見つけ、近寄っていく。そうしてその横顔をツンツンと傘の先端で突いて背後にいるメイド、十六夜咲夜を見た。


「これ、人間だよね」

「はい、お嬢様。人間です」


 咲夜の声色は無表情のまま答える。


「今日のおかず、これね」


 レミリアがそう言うのを見越して咲夜は首を横に振っていた。


「いけません。人間は脂質が高くカロリーが必要以上に取れてしまいます」

「でも美味しいから食べたい」


 先に言っておくが、いくら吸血鬼と言っても人間を丸々食べるわけではない。あくまでも血を吸い、自分の所有物とするのだ。そして夜には抱き心地の良い枕として添い寝させるのが常識……かどうかは分からないが、少なからずレミリアはそうしていた。


「では、妥協点として吸血用に取っておきましょう」


 咲夜もレミリアが真の意味で人間を害することはしないと言っているので大抵は妥協案を提案する。


「食べた――」


 それでも時折こうして冗談紛れに咲夜の気を引こうとし、咲夜の無言の笑みで黙殺される。レミリアはそれを見て回れ右をして、パルを指差した。 


「連れて帰る」

「はい」


 レミリアの命令通り、咲夜はパルの背と足を持ち、一気に担ぎ上げた。

 咲夜とて年頃の少女であり、よくても200kg前後までしか重い物は持てない。パルはそこまで重くないが、代わりに咲夜と同等の身長がある。そのためお姫様抱っこ状態になると色々と凄い絵面になる。

 ――美少女×メイド! この組み合わせはやっぱり良い!

 少し離れて見ていたレミリアは表情こそ表に出さないが内心ではそう思っていた。ほとほと腐っている。いや、レミリアに言わせれば『百合は正義!』。

 紅魔館に戻ったレミリアはすぐに自室に籠り、禁断とも言える漫画を描いていく。そう、幻想郷に差別も偏見も迫害も無いが、受け入れらる物と受け入れならない物が存在する。レミリア自身も自分が腐っていると分かっているため、あくまでも自分の趣味として心と部屋の深くにしまい込んでいた。



 紅魔館に戻って来た咲夜は紅魔館の一階にある大図書館の隣の個室にパルを寝かせ、汚れた衣服を脱がし、温かいお湯で体を拭いた。

 パルの全身はボロボロに傷ついており、出血も少なからずある。

 一番多いのは打撲傷、次に切り傷だ。何日も手当しておらず、あの泉に放置されていたようで傷は酷く膿んで傷口が青紫色に変化していた。

 咲夜とて傷を負ったり怪我をすることはあってもここまで酷い怪我は早々見ない。

 傷口に布が触れる度にパルの体が激しく痙攣をおこし、その度に咲夜が驚いて手を離すということを何度も繰り返した。一通り終わった後は消毒を済ませ、患部に包帯や清潔な布を当ててから巻いた。

 ただ、その途中で咲夜はどうしても看過できない箇所があった。


「……くぅ……」


 咲夜はパルの胸を見て呻いた。


「……飾り……そう、胸なんて飾りよ」


 咲夜は自分にそう言い聞かせるが、あくまでもパルの方が大きいというだけで咲夜も一般平均よりはある。ただ、贅沢な悩みなだけだ。

 咲夜はそれを見つめ、首を横に振るって邪念を振り払う。しかし悲しきかな、手は正直だった。咲夜はそっと手を離し、パルの体の採寸に入った。

 紅魔館にいる以上、レミリアに拾われたのが運の尽き。そして圧倒的なメイド不足を補うため咲夜はパルを紅魔館のメイドとして働かせようと考えていた。とは言え、レミリアが禁断嗜好であることも知っているためその動向には注意せねばならない。


「でも……」


 友達も欲しいし……、と咲夜は思う。

 咲夜は紅魔館で一番の若輩者だ。レミリアにしろ、図書館の主であるパチュリーにしろ年上だ。それも400とか500歳の年齢差だ。同年代の友人は……知人はいるにはいるがそこまで親しいわけではない。尤もメイド仕事が忙しくて会話らしい会話や知り合いを増やす暇がないのいうのが実情だ。

 採寸を終えた咲夜はパルに布団を被せて部屋を去った。

 時間にして数日間、咲夜は毎日パルの様子を見に来ては体を清めたり布を変えたりしていた。パルの世話をしている時間は実にレミリアの三倍とも言って良い。

 まだ目を覚まさなさそうね、と咲夜は呟き、部屋を出ようとする。 


「う……」


 か細い声が聞こえ、咲夜は目を輝かせながら振り返った。ただし、それは一瞬で声は平坦に、表情は限りなく無表情を務めた。


「目を覚ましたのね」


 パルはぼんやりする意識と視界の中で咲夜を見つめた。


「……ん? ほえっ……?」

「私は紅魔館のメイド、十六夜咲夜と申します。貴方の名は?」

「んと……ボクはパル」


 そうですか、と呟き、その内心では少しばかり心が弾んでいた。


「まずはお水を――飲ませてあげますね」


 危うく、飲んでください、と言いかけて言い直した。パルはあくまでも病み上がりであり初対面の人。ここでレミリアのような扱いをするわけにはいかない。

 コクコクとパルが小さく水を飲んでいき、途中で息を付かせ、また飲ませていく。

 少ししてパルの意識が完全に覚醒したのを見越し、咲夜は話しを進めた。


「事情を説明しますと、貴方は先日、主レミリアお嬢様の吸血用の人間として拾われました。あ、レミリアお嬢様は小食なので死ぬようなことはありませんから安心してください」


 パルはまだ少しボーっとしながらも頷く。


「それと、数日後にはメイド見習いとして働いて貰います」


 メイドと言う言葉に引っかかったのかパルは咲夜を始めて見上げた。


「め、メイド?」

「はい。あと採寸とその他諸々は終えてあります」


 パルの目の前にはメイド服があり、パルが見てもその採寸は合っている。

 何故――と問おうとしてパルは体と頭が痛むのを感じた。咲夜はそっとパルの肩を抱き、パルを寝台に寝かせた。


「まだ傷が完全に癒えてません。今はゆっくり養生してください」

「……はい。ありがとうございます」


 少しして、パルはゆっくりと目を閉じ、寝てしまった。

 まだ疲れが溜まっているのだろう、と咲夜は思う。

 それはともあれ、咲夜の脳裏にはもう一つ別の事柄が思いついていた。


「猫耳……」


 ボソリと呟いたその言葉は咲夜ですら無意識であり、誰にも聞こえることなく宙に消えて行った。

 それからまた数日して、パルの容体は回復していった。その間にパルから事情を聴き、また、ここは何処なのか、どういう場所なのかを説明した。

 そして次の日、朝食を食べ終えたパルは寝台から起き上がり咲夜に告げた。


「咲夜さん、そろそろ働きたいと思います」

「もうですか? まだ完全に良くなったわけではありませんよ?」

「流石にこれ以上は申し訳ないですからね。それにあんまり動いてなかったから体も少し動かしたいと思ってます」


 ――もし、これがレミリアお嬢様ならば、と咲夜は思う。

 きっと病気が治ってもまだ苦しいだの看病して欲しいだのワインが飲みたいから口移しで飲ませろだの言ってくるに違いない。

 そう思うと咲夜は思わず口元を抑え、無性に感動した。

 ただ、パルは何故咲夜が泣きそうになっているのか全く心当たりが分からず首を傾げた。それを見て咲夜は表情を切り替え、立ち上がってメイド服を持って来た。メイド服と言っても咲夜のようにエプロンに青いブラウスにシャツではなく、パルの体型に合わせて白い腰エプロンはそのままに明るい色の灰色のワンピースと中には喉元を広く開けて胸の谷間を隠す黒色の下着を着用している。勿論幻想郷にもブラの需要はあるため用意されている。これに加えて咲夜は太ももにセットするナイフ用のベルトも持って来ようとしていたがパルが自身と同じようにナイフ使いである確証は無かったため今回は持って来ていない。


「分かりました。では、最初は簡単なことから始めましょうか。差し当たっては着替えましょう」

「はい」


 パルが着替え始めると咲夜は重要なことをもう一つ思い出し、少し席を外した。

 そうして戻ってくる頃にはパルも着替え終わっており、咲夜は大事に両手に抱えながら持っていたものをパルに渡した。

 パルはそれを頭に付け、鏡を見る。 


「……なんで、猫耳?」


 そう、コミケや超会議もかくやというほどのコスプレ。メンタに頼まれては出て、頼まれては出ていたパルにとって猫耳を付けることにそれほど抵抗感は無い。ただ、メイド服が非常に着心地が良く素材も良い物を使っているということと、かなり実用性のある作りになっているということだ。メンタが作るコスプレは着用者のことを一切考えていないロマン仕様だったためか、パルにとっては嬉しいことだった。

 パルの問いに対し、咲夜は頷いて答えた。


「趣味です」

「……誰の?」

「私のです」


 その答えにパルは咲夜から一歩距離を取った。

 流石にメンタと同じとは思いたくなかったが、もしかすると――という懸念が生まれてしまった。だが、咲夜にそんな邪な気持ちは無い。ただ単純にパルを見た瞬間、急にアイディアが浮いたのだ。そしてそれは間違いではなかった、と咲夜は強く確信した。


「では、パル。行きましょう」

「はい」


 咲夜はパルの動きを注視しつつも、その手を引いた。

 咲夜に連れて来られたのは紅魔館の玄関だ。よく見たとしてもゴミはおろか埃一つ落ちていない。前庭に出るとキチンと駆られた芝生があり、少し離れた所には巨大な門と煉瓦の壁がそびえたっていた。


「今日は玄関の辺りを掃除してください。勿論、庭を見ていても良いですよ」


 言外に、ぶっちゃけ仕事しなくても良いと言っていた。


「分かりました」


 パルはそれを真に受け、咲夜から箒を受け取った。

 咲夜はそれを見て微笑み、自分の仕事に戻って行った。


「さて……」


 パルがやろうと思うと同時に、玄関があまりにも綺麗なことに気が付く。 


「……凄く綺麗なんだけど」


 何処の何を掃除しろというのだろうか、とパルは思う。

 仕方がないので前庭の方に出て芝生や花壇を見て回っていく。


「綺麗……」


 黄金比や白銀比で整えられた花壇と花の位置は感動すら浮かぶ。


「シクシク……」


 ふと花壇の奥の方、木の影から鳴き声が聞こえてくる。パルはその声を聞いてゆっくりと近づいていく。そっと影を見て見るとそこには小さな黒い塊があった。


「シクシク……」


 パルは、黒い塊がすすり泣いているだと気付くのにおよそ五秒ほど費やした。確かに地球ではあり得ない現象だが、ついこの間は変な物に襲われたのだ。少しばかりではあるが耐性がついていた。


「どうしたの?」


 パルの声を聞いて黒い塊がそっとパルの方を向いた。


「ヒッ! 白い悪魔!? ……や、ち、違う?」


 パルはその言葉に首を傾げつつも問いかける。


「どうして泣いているの?」

「……実は――」


 黒い塊はこの紅魔館の周辺に住む妖怪なのだが、体は小さく、弱気で、大抵妖精共に使いパシリにさせられている。今日もその一環でガキ大将――否、妖精大将のチルノに命令されて紅魔館に侵入した所、白い悪魔こと咲夜に見つかってナイフで八つ裂きにされかけたということだった。


「だからいつもここで泣いているんだね」

「おれは弱いから……」

「それなら――」


 パルは黒い塊の近くに寄って、小さな声でポッと思いついたことを話した。

 黒い塊は驚き、プルプルと体を振るったがパルは大丈夫、と頷いた。

 そうして――ほんの数時間後、黒い塊に唆された青ずくめの馬鹿は白い悪魔によって八つ裂きにされた。それから黒い塊はチルノに一矢報いた英雄として弱い妖怪たちの間でもてはやされたらしい。  

 話は戻って、庭の見学を終えたパルは玄関に戻って来ていた。


「玄関掃除終わりました」

「では……次は窓掃除をしてみましょうか」

「はい」


 あの後、咲夜はパルの行動を監視していたのだが、特に問題を起こすことは無かったため警戒することもないだろうと判断した。それに加え、体の方もほぼ大丈夫だろうと思い、パルに仕事を任せた。

 そのパルだが、はい、とは言った物の紅魔館の内部は外部から見た時よりも広いと錯覚させられる。その錯覚を起こしているのは咲夜が自分の能力で空間の時間を弄っているからだ。咲夜としてはパルの体に負担がかからないようにしているのだが、パルにしてみれば中々終わらない仕事として感じられてしまっていた。

 パルは咲夜同様にかなり真面目な性格だ。仕事も与えられたのならば確実にこなし、終わってもどうすれば良いか考えて行動するタイプだ。

 つまり二人は微妙にかみ合わず空回りしていた。

 少し時間が経過し、咲夜も夕食の準備をするためパルから目を離した。

 パルは一心不乱に窓の一つ一つを丁寧に磨いていたのだが、ふとまた体が痛み始めたのを感じた。


「痛た……」


 一度作業を止め、パルは伸ばしていた右手を降ろした。

 そうして痛みが引くのを待ってからもう一度手を伸ばし、止めた。


「……あれ? 窓拭きが終わってる? じゃ、次は空拭きしないと……」


 右手をまた降ろし、そこで今度は全身が止まった。

 そう、辺り一面に布とバケツが増えているのだ。


「――そんな馬鹿な。手と布巾が増えているなんて……怖い!」


 パルの反応は至って人間だ。ポルターガイストでもここまでやらないだろうという数だ。だが、それらを見てパルの脳裏に一つの事柄が過ぎった。


「……あ、でもこれってもしかして……メンタが前に言ってた能力って奴なのかな? でもあれって漫画やアニメの中の出来事のはず……」


 試しに右手を挙げてみる。すると、持っていた布と同じ布が一斉に宙に浮き始めた。

 それらを窓ガラスの方へ持っていくと布たちが動き出し、窓ガラス付近で待機した。


「怖っ!?」


 これがメンタならばヒャッハーとでも喜ぶのだが、あいにくパルは普通の女の子だ。少し耐性があるといっても怖いものは怖い。景色が夕暮れだということも相まって尚怖い。何も見なかったことにしてパルは急いで今やっている窓を終わらせ、高鳴る心臓の音を必死に抑えつつ、背後を振り返る。

 ――そこにはパルが持って来た一個のバケツと空拭き用の布だけがあり、先程まで見たバケツたちの姿は何処にもなかった。

 パルは全身を震わせ、目尻に涙を溜めつつ叫んだ。


「いぃぃぃやぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」


 パルは泣き叫び、その声を聞いた咲夜がすぐに駆け付けたが遅く、パルは泣きながら床に倒れて失神していた。

 何度でも言おう。パルは普通の女の子だ。

 咲夜は気絶しているパルを担ぎ、バケツと布を持って窓を確認していく。


「出来てる……まさか、この短時間で?」


 咲夜が眼を離したのはそう長い時間ではない。一体何があったのだろうか、と咲夜は歩きながら考え続けた。 

 全ての窓の確認を終えた咲夜はパルを厨房へと運び、即席の簡易ベッドを作ってそこにパルを寝かした。

 少し時間が経ってパルはゆっくりと目を覚ました。


「大丈夫ですか?」


 咲夜は心配そうな表情でパルの顔を覗き込んだ。

 パルはボーっとしながらも先程の光景を思い出し、眼を見開いて咲夜に抱き付き、咲夜は驚きながらもパルを受け止めた。


「さ、咲夜さぁん! 窓が布でバケツが飛んで窓一杯に――っ!」


 パルは呂律がおかしい単語を咲夜にぶつけ、咲夜は多分能力だろうと思いつつもパルを宥めた。いくらパルが可愛いと言ってもこの紅魔館に侵入すれば地下の図書館にいるパチュリーの張った結界が作動して咲夜が気付く。違うのならばもうそれは『能力』しかありえない。とは言っても能力すらしらないパルにとっては怖いでは済まされない事件となった。


「それは貴方の能力でしょうね」

「の、能力?」

「能力と言っても様々です。例えば私ならば時間を操る程度、他では魔法を使う程度、宙に浮く程度などがあります。パルの能力はまだ何かは分かりませんが、決して自分を害する能力はあり得ません。どんな能力も使い方次第ですよ」

「そ、そうなんですか?」

「はい。だから忌避せず、使って慣れてしまいましょう」


 昔の自分のことは全て棚に上げ、今しがたトラウマを植え付けたパルの自分の能力にそんなことを言い放った。


「わ、分かり……ました」


 パルは純粋で素直な子だ。例え怖い思いをしても、信じられる人の言葉であれば信じてしまうような女の子だ。

 その言葉に咲夜は目頭が熱くなるのを感じた。

 これがレミリアであれば、嫌だ、ふざけるな、やりたくない、絶対やらないと駄々をこねるのは目に見えている。


「少しずつ慣れて行きましょう? 四つ切りでお願いします」

「は、はい!」


 そう言って咲夜はパルにジャガイモを渡した。

 ただ、そうは言った物のパルの能力が何なのか、咲夜も当人も分かっていない。そもそも使用条件も分かっていないため、咲夜は横目で様子を見ていた。

 何時能力が発動するのか、どんなことをするのか、能力が発動する瞬間というのは自他共にワクワクさせられる。

 だが、そんなことよりも咲夜はパルの包丁さばきに目が行っていた。

 一応、咲夜もパルがどの程度出来るのか分かっていないため野菜が剝きやすいピーラーを用意していたり、絆創膏を用意していたのだが全くの杞憂でトントントントンとまな板の上で包丁が小刻みでリズムの良い音を鳴らしていた。


「終わりました」

「次は夕食を作ります。パル、紅魔玉ねぎと紅魔ニンジンの皮を剥いてください」

「はい」

「それが終わったら玉ねぎをみじん切りにしてください」

「終わりました」

「では、大鍋に水を張ってください」

「既に沸いています」

「では、煮込みましょう」

「はい」


 明らかに作業効率が良い。今までであればこの二倍近い時間がかかっていたのに今日は予想よりも早く終わった。


「少し、失礼しますね」


 咲夜は思わず厨房を飛び出して数少ない友人である図書室にいるパチュリーに今の感動を伝えるべく泣きついた。 



グラたん「毎度毎度意味不明のタイトルですみません」

メンタ「原因は何か分かりますか、てゐ?」

てゐ「夜中のテンションだな」

グラたん「当たりです!」

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