第三十話 第一回幻想王様GAME
グラたん「一応本遍です、と先に言っておきます」
グラたん「第三十話です!」
夜も更け、酒も多少なりと入っているためか彼女たちのテンションは高い。
此度の異変を解決したパルたちはメンタとてゐ、レミリアに呼び出されて紅魔館の大広間に集まっていた。しかしこの二人が主催するともなれば嫌な予感は避けようがない。
全員が集まったところでメンタは懐から謎のボックスを取り出して掲げた。
「誰もが一度は考えて実行するGAME……」
「王様ゲームやりましょう!!」
「イエァ!!」
ハイテンションなのは三人。それ以外は冷めた視線でメンタたちを見ていた。
「ふざけんなっ! どう考えてもお前等しか得しないだろうが!」
最初に魔理沙が叫び、霊夢も頷くがメンタはしかし、と続けた。
「閲覧者様的にも得になりますよ?」
馬鹿野郎、と頭を叩かれメンタは蹲る。
「ねえねえ咲夜、王様ゲームってなぁに?」
フランが咲夜に問うと、その背を押して退出させようと試みる。
「妹様、どうかお逃げください」
「えー! やだー!」
全力で暴れるフランを取り押さえることに精一杯になり、咲夜は逃げ損ねる。だが、フランの言葉によってメンタの説明が再開されてしまう。
「全く皆さん何を言っているんですか。あくまでも良識の範囲内で、ですよ」
「散々百合妄想爆発させてるお前が言っても説得力ねぇよ! 霊夢も何か言ってやれ!」
魔理沙が振り返って見ると霊夢は酒盃を高く上げた。
「お酒持ってこーい」
「おおい!?」
実のところ霊夢は最初から買収されていたりする。
「腐腐腐、伊達に万札を投下してないんですよ」
「このクソニィィト!! パルだけは違うよな?」
叫び、最後の頼みとばかりにパルの方を向くが、当人は首を傾げるばかり。
「? 王様ゲームってなにするの?」
「……パル、知らないわけないよな?」
「魔理沙、何を言ってるの?」
今度こそ、魔理沙は絶叫した。
「お前、フランと同じレベルかぁぁあああ!!」
「パル姉も一緒にやりましょう?」
「うん、良いよ」
メンタの頼みであれば大抵断らないのがパルだ。
「やめろぉぉ! 純粋なパルを穢すなぁぁ!!」
代わりに魔理沙の渾身の叫びが木霊して消えた。
かくして、総勢10人による王様GAMEが始まり、この後に起こる予想通りの悲劇を魔理沙だけが幻視していた。
主催者ということもありメンタを起点にして全員が円を描くように座り、事前に準備しておいた説明書をポケットから取り出して皆に見せた。
「それでは始める前に王様ゲームを知らない二人のために説明しますね」
ルール
1、くじを引く時は『王様だーれだ』と声を揃える
2、王様の命令は絶対
3、ただし命令するに当たって直接の指定は禁止
4、命令するには1~9の数字で命令する
幻想郷ルール
1、能力の使用は自由。ただし能力の使用がバレたらイカサマ扱い
2、誰かと結託して嵌めるのもあり
3、ただし怒って実害を与えるのは禁止。また能力による攻撃や弾幕も禁止
4、以上のルールを破った人及び反則者は全裸待機
普通だ、と魔理沙たちは戦慄した。
「やっぱこのくらいしないと見る人も面白くないでしょう?」
「以外とまともなルールで安心したぜ」
「とはいえ、まずは二回ほど練習してパル姉とフランちゃんを慣れさせましょう」
一瞬『潰しましょう』と聞こえたのは魔理沙の穿ちすぎだろう。
「お前からその提案が出たことに私は驚きを隠せないぜ。実際、いきなりやって素人二人を嵌め殺すのとばかり思っていたからな」
「いくらオレでも初心者殺しはしませんから安心してください」
メンタは微笑み、カードを混ぜていく。
だが、勝負は戦う前から始まっている。
――だから魔理沙さんは金色のヴァジュラなんですよ。何事にも順序と段階ってものがありましてね、それを踏むことによって真綿で首を絞めるが如く徐々に退路を断っていき、トドメを刺すんですよ!
メンタの脳裏には能力戦になると予想したいくつかの対策があるが、この面子である以上あまり意味を成さないだろうと考えている。
「あ、ちょっと待って!」
そこへパルが声を上げてメンタの手を掴み、カードを取った。
「イカサマはダメだよ」
「くっ――」
パルの言葉が図星だったのかメンタは黙り、全員の白い視線がメンタに集中した。
シャッフルが終わり、カードを配り終えてメンタは自身のカードの絵柄下に向けたまま手に持った。
「じゃ、行きますよー!」
『王様だーれだ!』
――お嬢様の貞操は私が守ります! 主にフラン様の!
全員が手札を持ち上げて少しした後、咲夜は時を止めて立ち上がった。余談だがレミリアが入っていないのは先日の一件をまだ引き摺っているからだ。
「ふむ……なるほど」
一通り見終わって咲夜は座り直し、時間停止を解除する。今回はスルーしても問題無かったため手札の入れ替えはしていない。
「お、私か」
最初に王様になったのは魔理沙だ。
「では王様、命令をお願いします!」
「じゃ、4番。今からゲーム終わるまで正座な」
正座と聞けば一見軽いように思えるがゲームが終わるまでとなれば間違いなく足が痺れるのは確実。
「……重っ」
「すっげぇドSな命令だな」
メンタたちが苦笑しつつ命令を聞き流した。
「ふっ、王様の命令は絶対。さあ、4番は誰だ!」
「私ですね」
当たったのは早苗だ。
――ちっ、早苗さんは普段から正座しているから一、二時間はどうってことないですか!
メンタは心の中で舌打ちし、表面上は笑顔でパルたちの方に振り返って説明した。
「こういう感じだけど、パル姉とフランちゃん、分かりますか?」
「番号で指定すれば良いのね」
「そうです」
「……分かったけど、例えば次に私が早苗の正座を止めさせることは可能なの?」
「命令の上書きは可能ですよ」
「なら、そこまで酷いことにはならないね」
そう……何も疑うことなくパルは笑みをメンタに返した。
――パル姉……その純粋な心をオレに向けないでください。
元から心身ともに汚れているメンタはちょっとばかり良心の呵責を覚えた。が、ゲームは続けられる。
「じゃ、テスト二回目いきますよ」
カードが切られ、全員に配布される。
『王様だーれだ!』
一斉に引き、今度引き当てたのは咲夜だ。
「私ですね」
「おおっ、遂にメイドの逆襲が始まるんですか!」
その一言が無ければ咲夜も能力を使ってメンタたちの番号を見ることはなかっただろう。
「――1と5番、片手で腕立て伏せしながらゲームしなさい」
――こ、このクソメイド! 時間止めやがりましたね!
勿論、口には出さないがメンタとてゐは血の涙を流しそうな形相で咲夜を睨んだ。
「何をしているのですか? 王様の命令は――」
「ぐっ……絶対」
しかしあくまでも自分がやりたいと言って自分で定めたルールだ。破ることは許されない。
その様子を見てパルは思う。
――……なるほど。能力を使って良いのなら、咲夜さんなら覗き見が合法化されるのか……だとすればボクがすべきことは……。
カードを切り、配布する。
「フッ、フッ、次、本番行きますよ!」
――どうやらパル姉は気付いたみたいですね。しかしオレも負けませんよ!
『王様だーれだ!』
引き、次の王様はイナバとなった。
「あ、私?」
――げぇっ!?
それを見た瞬間メンタとてゐの表情が強張った。
「それなら全員、正座しましょう」
イナバがそう宣言したことによりメンタとてゐは腕立てから正座へと体勢を移した。
――むぅ……全体命令だとボクの能力は発動しても意味がないか……。
ゲーム中に考えていた作戦がまるっきり無駄となり、パルは少々落ち込む。
「うう……次、行きます!」
メンタの宣言に先んじて動いたのはレミリアだ。
――さて、そろそろ私も動こうか。とは言っても私に出来るのは馬鹿二人からフランを守ること。そしてパルは能力を自衛に使うだろうからもし私が誤爆してもある程度のフォローは期待できる。それに咲夜は私たちを守護する肉盾。その気になれば咲夜は自らを切り捨てる。それが出来なればパルが能力で咲夜に被弾させる。そう考えれば私たちは鉄壁守護防壁の中にいることになる。そして私がやるべきことは一人でも多くの敵をルール違反させて全裸待機させること。
そう考えてから運命を操る程度の能力を行使し、メンタたちに王様のカードが行かないようにセットしてドローする。
「あたしだー!」
そうして王様を引いたのはフランだ。
――フランが引いたのね。なら好きにさせても良いわね。
そのレミリアの甘い考えは一瞬にして打ち砕かれる。
「じゃ~、2番が9番を壁ドンして告白してキスして!」
「……」
「……」
「……」
「――――ぅえ?」
やらかした当人であるレミリアでさえ茫然とする中、フランは無邪気に急かす。
「早くぅ~」
メンタは自分のカードを確認し、ほくそ笑む。
――こ、これは良い意味で誤算ですね。フランが無邪気に命令する以上、それをレミリアさんとフランさん、咲夜さんが止めるすべはありません。さしものパル姉も自分のカード以外は見れませんから……腐腐腐、面白くなってきました!
「えっと、2番と9番って誰ですか?」
イナバの発言に各自がカードを確認しては声に出して否定していく。
「違うわ」
「違くて良かったぜ」
「違うわよ」
「違います」
「当然私も違います」
「違うな」
「……ってことは、まさかパル姉と咲夜さんが?」
メンタもそれこそまさかというようにパルたちの方を見て、二人はカードを表向きにして見せた。
「ボク、9番」
「に、2番です」
――うっ、まさか咲夜だったなんて……。
――ぱ、パルとですか……いえ、それでもお嬢様方や馬鹿共よりは――むしろ良い!
本当にそれで良いのかどうかはさておいて、我がごとではなくなった野次馬共は急に景気よく騒ぎ出す。
「ヒューヒュー、やれやれー!」
「変えようが無かったんだな……」
「てゐ! てゐ! メイド×メイドの組み合わせですよ!」
「カメラに収められないってのは残念だが、脳内メモリに焼き付けてやるぜ!!」
「やれー!」
「わーい!」
ルールなので、と咲夜とパルが立ち上がり、壁際に寄っていく。
「さ、咲夜、ごめんね」
パルが謝ると咲夜はちょっと頬を赤くしながら答えた。
「いえ、他の人よりはパルの方が……その、良い、ですし」
「え?」
最後の言葉はパルには聞こえず、咲夜は咳払いを一つした。
「ともかくさっさと終わらせましょう」
一気にパルに詰め寄り、壁に手をドンッ! と押し付けた。
「フオオ! なんて大胆なんですか!」
「ちゃんと告ってね!」
「そこで追撃するなんて、フラン恐ろしい子っ!」
全員が眼を見張って拳を固く握り、固唾を飲んで見守った。
「さ、咲夜?」
ただし恋愛物でも今時あまり見なくなった方法にパルは困惑し、真剣な表情の咲夜に問うが咲夜は咲夜でいっぱいいっぱいのため答える余裕は無く、代わりに告白した。
「パル、私はずっと貴方が好きだったの」
「えええ!?」
パルの割と本気の悲鳴に咲夜は『演技よ!』とアイコンタクトを送るがパルは気付かない。仕方ないのでさっさと終わらせようと更に迫る。
「もう我慢できない……かも。貴方が欲しい」
「ひぅ! 咲夜、眼が本気だよ!?」
パルの更なる悲鳴も意に化さず咲夜は甘い声を出してねだる。
「貴方を奪いたい。私の物にしたい。良いよね?」
もはや頷く以外の選択肢を奪った言葉にパルは恐る恐る頷いてしまう。
「え……その……その、咲夜――さえ、よければ……んっ」
一瞬触れ、すぐに離れる。
「ゴブァァ!!」
「ブハァァ!!」
「ッ!!」
馬鹿三人は一瞬で見て分かるほどの大量出血を鼻から噴き出して果てた。
「ちょ、ちょっと二人ともしっかりして! その血の量は洒落にならないわよ!?」
「おねーちゃんどうしたの? 顔赤いよ?」
「大丈夫よ、問題無いわ」
そっとメンタがティッシュを差し出し、レミリアはすぐに鼻に詰めた。
「オレ……もう、満足ですよ」
「我が今生に――悔いはない――」
「二人とも、しっかりして!」
ゲームはまだ終わっていない、とレミリアが再起を促すがそこに追加の攻撃が迫る。
公開処刑を終えた咲夜は少し満足気に戻ろうと手を引くとパルが動かないことに気付いて振り返る。
「さ、戻りましょう――パル?」
「……咲夜」
パルは顔を真っ赤にしつつも顔を上げ、咲夜は怪訝そうに首を傾げた。
「はい?」
その一瞬の隙をついてパルは距離を詰め、咲夜の首に手を回して顔を押し当てた。
「んっ」
「んん!?」
流石に二回目はやるつもりがなかった咲夜はパルの突拍子もない行動に眼を白黒させて途惑った。
「二度目!?」
「ビグンビグン!!」
「そう、ここが……ここが理想郷……」
再度、三人は鼻血を噴いて床に倒れた。
困惑から抜け出した咲夜はパルの両肩に手を置いてすぐに離す。
「――!? ぱ、パル! もう演技は終わって――」
「その、咲夜なら…………良いよ?」
「な、なにを――」
そして決定的な言葉を言おうとして……パルは悶えた。
「ぼ、ボクの口からこれ以上は――は、恥ずかしぃ……」
そんなパルの発言に咲夜は本当に困りつつも思考を巡らせる。
――ええっ!? なに? 何が起こってるというの!? さっきのはあくまでも演技だし、それともまさか壁ドンしたからパルが落ちて……?
そのまさかが当たっていようとはとても思いたくなかった。
「責任……取ってくださいね?」
パルの上目遣いとお願いのコンボに咲夜は真面目に今後を悩みかけ、何とか正気に戻る。無論、今のパルに冗談は一切通じないため咲夜は真剣な表情でタイムを取ってパルを廊下に連れ出した。
「パル、ちょっと来て」
「はい!」
しかしその流れから連想出来る事柄と言えば…………。
メンタたちは遂に口から血を吐いた。
「……!」
「……!」
「……!」
「三人とも、もう止めてください! これ以上は死んじゃいます!」
早苗の必死の叫びにメンタたちはそっと親指を立てた。
「ぜぇ、ぜぇ……なんていう破壊力……」
「こ、ここまで死にかけたのは数十年前の幻月大戦以来だ……っ」
「それよりも次やるわよ。私が王様になるんだから」
霊夢の宣言にメンタたちも起き上がり、少しして咲夜との打ち合わせを終えたパルたちも戻って来た。
カードが配られ、引く。
『王様だーれだ!』
果たして、引いたのは宣言通り霊夢だ。
「あ、私だわ」
「こういう時ってツイてるのが霊夢なんだよなぁ」
「そんじゃ3番は今から私の座布団になりなさい」
咲夜は時間を止め、カードを確認する。
――3はレミリア様の番号!
席に戻った咲夜は時間停止を解除し、何気なく髪の一房を触ってパルに合図する。
――パル、早苗と変えて!
――あ、咲夜からサイン来た。レミリア様と早苗だね。了解。
パルは能力を使用し、レミリアの番号である3を早苗の8に変える。当然、早苗の番号は8から3へと変化している。そうなれば早苗も気付く。
――なっ! わ、私の番号が! ということは恐らく咲夜さんかパルさんのどちらかだけど、両方が結託しているから証拠の立証が出来ない!
当初咲夜は自身の手で番号を変えても良いと思っていたのだが、あの卑劣なメンタたちならば指紋検査くらいはやるだろうと考えてパルと打ち合わせしていた。
「ほら、誰なの? 早くしなさいよ」
霊夢はそう言いつつも早苗の慌てっぷりから多分そうだろうと推測していた。そしてその推測は間違っておらず早苗は大人しく霊夢の下敷きになった。
「くっ、この私がなんて屈辱を――」
「あ、もちろん仰向けね。うつ伏せは背骨が当たってお尻が痛いから」
そう言われて早苗は渋々仰向けになり、そのお腹に霊夢は一切の躊躇なく座り、早苗は歯を食いしばって耐えた。
「うっわ……」
「Sですね」
「マジごっつぁんです」
イナバが引き、メンタとてゐは若干嬉しそうに頬を綻ばせた。
「てゐさん、メンタさん……貴方たち後で憶えていてくださいよ……」
早苗の恨みがましい視線を受けて尚、二人は拳を固く握った。その隙に霊夢は早苗の胸部に手を伸ばし、何てことないように揉み始めた。
「うわっ、早苗あんたまた太ったわね。脂肪が厚くなってるわよ」
「――っ! 何処触ってるんですかこの爛れ巫女!」
「うっさいわね。黙って揉まれていれば良いのよ」
ギャーギャーと姦しい声が響く中、魔理沙はカードを集めて切り始めた。
「次行くんだぜ」
カードが配られ、一斉に引く。
『王様だーれだ!』
今度はレミリアが当たり、勿論メンタたちは能力の使用を疑った。
「フフッ、私ね」
しかしレミリアの能力は非実体型のため使用の立証が難しい。余程乱発しない限りは公式のイカサマだ。
「そうねぇ……三番は私の椅子、四番はフランの椅子、五と六は足蹴になれ」
番号を聞き、咲夜は時間を停止して見て回るがどれも安牌だと分かり、パルにも特に指示を出さなかった。
「わ、私が足蹴!?」
「私が椅子ぅ!?」
「ご褒美ィィィ!」
「く、またしても……!」
今回の当たりは霊夢の五と早苗の六、メンタの四とイナバの三だ。
ルール通りに四人は椅子と足蹴になり、咲夜がカードを集めて切り、配当した。
「次、行きますよ」
引き、椅子と足蹴共は『来い!』と懇願した。
『王様だーれだ!』
その願い虚しく、王様はパルに与えられた。
「ボクだー!」
――パ、パル姉! 一体どんな命令が――。
誰もがパルならば変な命令はしないだろう、と思う。
「実はたこ焼きのロシアンルーレットやりたいと思って作って来てあるんだ!」
しかしその提案の意図を読み取れず全員が内心で首を傾げた。
――な、なに……?
――ん?
――パル、一体どういうつもり? 今この場でそんなことをする意味などないはず。いえ、まさか何か別の狙いがあって?
――よ、読めません。パル姉の思考が、サ〇コミュとヴェー〇システムで強化されたオレの思考が! しかしまあ、パル姉のことですから多分……。
「パル、これは一体どういう意図があるの?」
咲夜の問いにパルは意外そうに答えた。
「え? 前々から一回やってみたかったからなんだけど……ダメかな?」
その純粋な言葉にレミリアは驚愕した。
――馬鹿な……何の黒さもない白き清浄なる心? ただでさえ腹黒い幻想郷でそんな甘い言葉が通用するとでも――といってもパルだから有り得なくはない。
チン、と電子レンジの鳴る音がして咲夜が温めて(一層強力になった)ロシアンを持って来る。
「温めてお持ち致しました」
「あ、咲夜。ありがとう」
「いえ」
たこ焼きは全部で十個あり、爪楊枝も十本刺さっている。パルが作ったということもあり匂いは巧妙に隠され、色や焼き加減も全く一緒だ。
「ルールは簡単に、一人一つずつたこ焼きを取って食べるだけ。一個だけ当たりがあるから良く見て選んでね。ちなみに外れは色々入っているから」
一つだけという宣言に全員がホッとし、メンタは一応の意味も込めて聞いた。
「それ、食べられますよね?」
「勿論! 食べられないものは入って無いよ」
――そう、パルのことだから食べられないものは入っていないでしょうね。
と咲夜は考え、
――その外れが怖いけど、王様の命令は絶対です。
と、メンタは腹を括ってたこ焼きの一つを手に取った。
「皆取った? じゃ、食べるよー! いっせーのせ!」
誰からともなく『ぱくっ』という擬音が聞こえ、次に起こったのは絶叫だった。
「グボァァァァァァァッァァ!」
「ピギャァァァァァァァァァァ!」
「むひゃぁぁぁぁぁっぁあああ!」
「ゲボァァァァァァァ!!」
「ミギャァァッァアァァアァァァァァ!!」
「ゲハッ!」
「ブハッ!」
「ウッ……ゲホッ!」
メンタだけはどうなるかある程度予想していたので無言で退場し、声を上げた。
「ウゲェェェェェェッェェェ!! パル姉ェェ! 一個だけ当たりって、普通に美味しいたこ焼きが一個だけあるって意味ですかっ!!」
「ん、あ、当たりみたい……」
唯一の当たり、ただのたこ焼きを引いたのはやはりパルだった。
パル以外の全員が一斉に立ち上がって給湯室や冷蔵庫へと駆けこみ、お茶や水を口に流して飲み込む。
「ひぐっ、えっぐ、パル……外れって九個が外れって意味だったのね……」
「や、やるじゃねぇか! 詐欺師の常套手段を使ってくるとは!」
「パル……やってくれたわね! 敢えて全員のゲームの常識の範囲で真実を伝え、全員に一撃ずつ加えるため真実を隠していたなんて――策士!」
怨みつらみを述べつつも居間に戻り、レミリアに至っては何かを殴りたい衝動を何とか抑えつつ席に座った。
「あれ? 皆どうしたの?」
パルは、何故皆からそんな視線で見られているのか分からずに首を傾げた。
余談だが外れの九個の内約を述べると、霊夢はデスソース味、魔理沙はニシン味、レミリアは唐辛子と紅魔ニンジンのブレンド味、フランは青汁味、イナバはカレーラムネ味、てゐは強炭酸ペッパー味、早苗はサバ缶味、メンタはスターゲイザー味、一番の外れは咲夜の醤油レーション味だ。その全てがパルの悪ふざけで作られたものであり、自身に当たったら潔く飲み込むつもりでもあった。
どうでも良いが、彼女たちが飲み込んだ『たこ焼き』にも一応たこは存在していた。……ただ、溶けて消えているだけで。
しばらく休憩し、全員の味覚と嗅覚が何とか戻って来た頃を見計らってメンタは続きを促した。
「酷い目に遭いましたが、引き続きやりますよ!」
「あんたも懲りないわね」
「まだまだこれからですよ!」
メンタの勢いに乗せられたのか早苗たちもヤケクソ気味に配られたカードを手にした。
『王様だーれだ!』
当たったのはてゐだ。
「ひゃっほーい! 私だ――っ!」
「行っけぇぇぇぇ!!」
続いてメンタも拍手喝采を持って、てゐを支持して叫んだ。
「行くぜ! 1、2、4、5、6、8、9は王様に胸を揉まれろォォ!!」
もはや誰でも良いから揉みたいという願望を叩きつける。
あまりにも暴論な命令に咲夜はパニックに陥りながらも解決策を思考する。
――なんてことを! しかし今の順序を鑑みれば3と7をお嬢様方に振り分け――いえでもそれでは私たちの胸が揉まれることに!? ああでも我が身可愛さに裏切ることは……。しかしそれでは私の胸が―――!
一方でパルも咲夜からの合図が何もないのを見て自分で考える。
――う……ん……困ったなぁ、咲夜からサインが来ない。――あ、でも待てよ。ボクは犠牲になるけど代わりに咲夜とお嬢様を救える方法がある。いやそれ以上に何人か強制退場させることが出来るかもしれない。
ある意味最後の手段ではあるが、パルはそれを実行した。
――ホッ、私安全――「コケェェェェェェェェェ!?」
今回は三番で安全保障が働いていたイナバは勝手にカードが書き代わっていくことに驚愕して鶏の朝一番のような狂った声を上げた。
「なんかイナバが発狂したぞ。ってか霊夢も顔怖いぞ」
魔理沙と霊夢もイナバを見て、霊夢もその意味に気付いて悔しそうな表情を浮かべた。
「くっ、パル……」
咲夜の呟きを聞き、魔理沙は咲夜のカードを覗き込み、その真意を聞いて驚きの声を上げた。
「どうした――嘘だろ。あいつ正気か!?」
「あ、早苗もいらっしゃい」
早苗はただただ黒い笑顔を浮かべて拳を鳴らし始めた。
一方で、てゐは両手を上げて皆を呼び寄せた。
「さあさあ皆の衆、苦しゅうないぞ――――って、なんか二人少ないんだけど。他は? ねえ他は?」
「あら残念ね。私7よ」
「私3番ー」
レミリアとフランの声を聞き、てゐは不思議がる。
「それならパルと咲夜も来ないとおかしいって」
「私3よ」
「同じく7だよ」
二人の摩訶不思議な返答を聞いて、パルたちはカードを見せる。
「えっ、ちょっと何言ってんの? 5と9はどこ行った?」
「ちょっとお散歩してくるって」
パルの言葉を聞き、数秒して理解した。
「――おのれェェェェェェェェェ!! アウトだぁ! 全裸待機だぁ!」
てゐは咽び叫んでパルをアウトにし、パルも頷いてアウトを承った。
「パル、この暗幕を使うと良いですよ。あと毛布を上から被ると温かいですよ」
咲夜から暗幕と毛布を貰い、端っこでパルは衣服を脱ぎ、毛布を体に巻き付けた。
「ありがとう咲夜」
「ぬにゃ!? そんなのありか!」
てゐとメンタは固まり、咲夜は涼しい顔で笑んだ。
「暗幕と毛布禁止はルールには載っていませんので」
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
「詰めが甘かったか!」
結局、メンタたちの目的はそれであるため悔しみに満ちていた。
「メンタのえっち」
パルはそう言いつつメンタに冷ややかな視線を送った。
「ありがとうございます、パル姉!」
いつもの事ではあるが、引いた。
傍らで早苗たちは笑みを絶やさずにてゐに迫った。
「フフフ、てゐさん。早くやってくださいな?」
「シュシュシュ、シュシュシュ」
「あんまり痛くしないでください」
「……はい」
てゐは死と隣合わせになりながらも揉み、全員分が終わると早苗の拳が突き刺さりてゐはぶっ飛んで行った。
「さて、そろそろお開きに――」
咲夜が頃合いを見計らって声をかけるとメンタは待ったをかけた。
「させませェェェェん! ラス一行きますよ!!」
勢いよくカードを配り、魔理沙と霊夢が率先して取っていく。
「まあ、流石にこれで終わりじゃ締まらないだろ」
「仕方ないわね」
ラスト一回ならば、と咲夜たちもカードを取った。
『王様だーれだ!』
最後に当たったのは霊夢だ。
「あ、私だ」
最後まで当たらなかったメンタは心の底から叫んだ。
「ちくしょぉぉぉぉォォォォォォォォォです!!」
さて、と霊夢は呟いて何処からかお賽銭箱を取り出した。
「それじゃ全員今持ってる有り金全部お賽銭してきなさい」
笑顔で徴収令を下し、残っていたメンバーが唖然として、叫んだ。
『さ、最悪だ――――!!』
こうして第一回目となるゲーム大会は幕を閉じた。
※王様ゲームは悪乗りをする遊びです。やる時は必ずストッパーを複数人入れ、公序良俗違反をしないでください。
※命令は自分がやられても問題無いものにしてください。
※ロシアンルーレットは自分が食べられる物だけを入れましょう。
グラたん「毎度の事ですが夜のテンションで書いています。ご了承ください」




