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東方幻想腐女録  作者: グラたん
第一章
29/119

第二十七話 ジェット・ストリーム・アタック!

グラたん「第二十七話です!」


 玄関前。そこで戦っているのは霊夢、魔理沙、てゐの三人。相対するのは咲夜だ。戦力差で言えば霊夢たちに分があるのだが時間を止めて攻撃する能力はそのハンデを失わせるほど強力な能力だ。

 しかし時間を停止する程度の能力とはいえども限度と停止するための条件がいくつかある。一つは精神への打撃もしくは揺らぎ。一つは自身の持つ生命力と寿命。前者は本人が耐えれば済む話だが、後者に関しては能力を使うたびに奪われていく。

 咲夜の停止世界では同系統の能力者でもない限り入ることは出来ないし、咲夜が解除しようとしなければ誰も止めることは出来ない。基本的に咲夜が使用するのは自身以外の全ての停止だ。ただし全く逆に咲夜自身の時間を止めて一種の仮死状態にも出来る。

 話を戻し、玄関前の前庭では洗脳された状態の咲夜が能力を使いたい放題して霊夢たち三人を相手していた。


「ふっ!」


 停止した世界の中で咲夜がナイフを投げ、そのナイフは霊夢たちに当たる寸前の目の前で止まり時が動き出すのを待っている。これも能力の条件の一つであり、時間を停止した状態での直接攻撃は出来ない。ただ、相手を害さない程度に触れることは可能だ。

 霊夢たちからすれば一瞬後の眼前にナイフが迫っており、戦闘時にのみ発揮される脊髄反射によって迎撃するが、攻撃されるたびに心臓の悪い思いをさせられ続ければ精神の方が先に参ってしまう。


「ああもう! マジうざい能力ね!」


 術符やスペルカードを放射しては躱され、霊夢の苛立ちは一層募る。


「そっち行ったぞ!」


 魔理沙が注意した方向にはてゐとレリミアがおり、ナイフが二人を囲うように留まり、時間が動き出すと同時にてゐは迎撃しつつ悲鳴を上げた。


「ぎゃー!」

「きゃぁぁ!」

「ええい! 啓符「龍林李」!」


 てゐだけでは全て防ぎきれないため霊夢がスペルカードを投げる。主に赤と黄色の弾幕が龍のような形取り、てゐたちに襲い掛かろうとしていたナイフを飲み込んで咲夜の方に飛んでいく。


「その程度!」


 咲夜もそれに気づいて跳躍し、魔理沙が逃さず追撃をかける。


「今だ! 翁符「レモーア・リムタス」!」


 小さな三連星の弾幕が飛び、咲夜は時間を止めて優々と避けて見せる。


「ちっ! 逃げたか!」

「くっ! 操られてないなら言葉攻めで何とかなるのに!」


 前の紅魔異変の時は言葉攻め――主に罵倒――で咲夜の精神状態を揺らがせて霊夢は勝利していたのだが、精神制御されている状態では揺さぶりは効かない。必然的に決めてが欠けており、苦戦していた。

 そこへメンタとパルが駆けてきて霊夢たちに報告した。


「おまたせしました!」

「もう終わったのか!?」


 別れてからまだ五分と経っていないためか魔理沙も驚いてメンタたちを見た。


「秒殺でした!」


 メンタの報告に霊夢も思わず振り返ってキレる。


「秒殺!? 仮にも私の稽古受けていて秒殺って怒るわよ!」

「もう怒ってます!」


 霊夢とてメンタがそれなりに強いことは知っているし、相手が実の姉だとしても苦戦させることは出来ると心のどこかで思っていたのだが――これは終わった後で鍛える必要があるわね、と霊夢は思う。


「手伝え!!」


 そんな三人の会話に咲夜と対峙していたてゐが叫んだ。


「何人増えようと同じこと――」


 同時に咲夜も動いて時間を停止し、霊夢と魔理沙に接近して回し蹴りを食らわせる。


「ぐっ!」

「う――!」


 直撃こそしなかったが咲夜の得意な中距離に吹き飛ばされ、すぐに体制を整えて追撃に備える。


「咲夜……」

「パル姉、手加減は無しですよ! 先に行きます!」


 霊夢たちが戦いを再開したのを見てメンタも先行して走り出し、パルは一拍おいて攻略の糸口を思考する。

 ――時間停止……あれを攻略しないことには咲夜に近づけない……なら!

 思い付きではあるが、パルは上手くいくと感じていた。


「霊夢さん、魔理沙さん、連携行きますよ!」


 メンタが二人の間に割り込み、弾幕を取り出しつつ宣言すると霊夢たちも頷いて構えた。


「分かったわ! スペルカード発動!」

「おう! スペルカード発動!」

「まずは足を止めます! スペルカード発動! 連符「赤と黄(ジェット・)色と白の(ストリーム・)流星群(アタック)」!!」


 ネタではあるが三人いるなら、とメンタのやる気を元に実用段階まで完成させた連携である。

 咲夜も三人の連携技は初見だったが避けるのではなく前方に走り出して時間を止めて跳躍し、メンタが通ると同時にその頭部を踏んだ。


「オレを踏み台にしましたね!?」


 次いで背後に控えていた魔理沙と霊夢に飛び蹴りとナイフを食らわせて陣形を崩壊させた。


「ぎゃふっ!」

「ちょっ、馬鹿、きゃぁ!」


 転んだ魔理沙に足を取られて霊夢も転び、縺れ合う。


「他愛ない」


 いつにも増して咲夜は冷たく嘲笑していた。


「そこっ!」


 メンタたちの連携を見ていたパルは霊夢の更に背後に潜み、咲夜が攻撃し終わった瞬間を狙って刺突を繰り出すが、咲夜は危なげなく時を止めて後ろに一歩下がり、ナイフを取り出す。

 咲夜が取り出すナイフの大部分は太ももにつけられているレッグホルスターに収められており、足りなくなれば魔術で空間を引き延ばして作った空間にあるナイフを取り出して収める。今も残弾が尽きており補充のため空間に手を伸ばした。

 不意に、自分以外の呼吸音が聞こえ、視線を正面に向けるとそこにはパルがいた。


「甘いよ、咲夜」


 その言葉は咲夜が感じているよりも遅かったが、それ以上に自分の停止空間にパルがいることに咲夜は驚愕した。ただし表情は出ず、距離を取っただけだ。


「もう好き勝手させないよ!」


 距離を詰められ、反射的にナイフを投げて迎撃するが鮪包丁に弾かれて接近を許した。


「終わらせるよ!」

「ぐっ――」


 パルの拳が咲夜の膵臓を穿ち、深く埋め込まれる。

 咲夜も洗脳されているが故に抵抗して顔を上げるが、右に回り込んだパルが右足を高く上げ、勢いのまま踵を後頭部に落として、遂に咲夜は気絶した。

 停止空間も解除され、時間が動き出す。


「ふぅ……」


 一つ息を吐いて、倒れていた霊夢たちは誰かが倒れる音に振り返って驚くことになる。咲夜が気絶しており、恐らくパルがやったのだろうと推測をつける。


「ぱ、パル? お前いつの間に……」

「あんたまさか――」


 特に霊夢は『信じられない』とパルを見つめた。


「うん。上手くいったみたいだね」

「……一体何をしたんだ?」 


 魔理沙の問いにパルは微笑み、答える。


「能力で時間をほぼゼロに近い数字で止めただけだよ」


 咲夜の停止空間にもいくつか弱点はあるが、一番の問題点は完全に停止しているわけではないということだ。無論、完全停止も可能だがそれをすると自身の心臓まで止まるため滅多にやらない。つまり、この場ではパルだけが咲夜の停止空間に割り込むことが出来るということだ。


「無茶苦茶ですねぇ!?」

「数なら何でも良いってか!?」


 メンタとてゐも理不尽すぎる能力に悲鳴を上げた。 


「とりあえずこれで良いんだよね?」


 パルがレリミアに尋ねると彼女は驚愕したまま頷いた。


「は、はい……」


 なんにせよ、と霊夢が呟いて立ち上がり、続いて魔理沙たちも起き上がった。


「これで今回の事変は終わりね」

「美味しい所は全部持ってかれちまったな」

「レリミアはどうなるの?」


 パルの問いにはスキマで今までの経過を見ていた紫が答えた。


「こっちで預かりますよ」

「うひゃぁ!? って、紫さんかぁ……」

「毎回心臓に悪いのよね、それ」


 溜息を吐く霊夢に紫は微笑みつつ、前庭を指さして告げた。


「そっちの四匹はもう回収したから後は貴方だけ。これだけのことをしたのだから覚悟は出来ているでしょうね?」


 レリミアも上位妖怪ではあるが紫に勝てるほど強くはないため観念して頷いた。


「ああ、そうそう。一応通過儀礼として聞いておくけど、何でこんなことをしたの? というかどうやって幻想郷の結界を突破したのよ?」


 一応、幻想郷のバランス……人間が妖怪に勝ち過ぎず、妖怪が人間を食い殺しつくさないようにするための調停者の役割を持つ霊夢が聞くと魔理沙もそういえば、と頷いた。


「そういやそうだったな」

「聞かせて欲しいなぁ」


 パルも興味があり、今回良い所を奪われまくったメンタたちは不気味な笑みを浮かべて何処から取り出したのかペンチをカチカチと鳴らし始めた。


「言わないとどうなるか分かってますよねぇ?」

「拷問? 拷問?」


 痛いのは誰でも嫌なことに変わりはないため、レリミアはすぐに両手を上げてやりたかったことを告げた。


「ひぃ!? い、言う! 言うから拷問は待って! 結界を突破出来たのは道真様のおかげ! 私は人間を駆逐して妖怪による妖怪のための妖怪の世界を作りたかっただけなのよー!」

「ああつまりオレたち人間を見下して逆に駆逐されたオチですか。プークスクス」

「マジ受けるんですけドゥゥゥ!」


 いつも通りのテンションに戻った二人をさて置いて、霊夢は腰に手を当てて呆れつつ答えた。


「この馬鹿二人はともかく、幻想郷の人間はあんたが思っているよりも良い奴等ばかりよ。食料恵んでくれたり、料理作ってくれたりするわ。ま、表の方はアレだけど」

「そうだぜ。現に私たちもこうして仲良くやっていけてるし」

「おうよ!」

「そうですとも!」

「うんうん」


 五人の頷きにレリミアはまだ信じられず口籠る。


「でも……」

「まあ、その後のことは部屋の方で聞いてあげるわ。さ、入って入って」


 紫に促されてスキマに向かって歩き、突然振り返った。


「ま、待って! 一つ聞きたいことがあるの!」

「何よ」

「一つはレミリアの奴は何処にいるの?」


 は? と霊夢は首を傾げるが、パルは答えを知っているため答えた。


「レミリア様ならパチュリーたちと図書室の地下にいるよ。魔法空間の中で親睦を深めているみたい」


 どうりでいないわけね、とレリミアは内心で思う。


「そ、そう」

「知り合いなの?」


 パルの問いにレリミアは小さく頷いた。


「昔の友人、かな。貴方はレミリアの従者?」

「一応そうなるかな」

「ふぅん」


 ――もしこんなメイドがいたら……。

 レリミアは思案するが栓のないこと、と振り払う。


「何か伝えておくことある?」


 パルの予想外の善意にレリミアは少々考えた後に嘲りの笑みを浮かべて言い放った。


「良いの? それなら……机の中にあった物、良い趣味してるわねって言っておいてくれる?」


 何のことかはわからないけど、パルは頷いた。


「分かったよ」


 しかし魔理沙たちはそれが何か分かったため視線を反らし、メンタとてゐは獲物を見つけた鷹の如く目を輝かせて笑った。


「……マジか」

「ふへっ」

「ふはっ」

「あ~あ……」


 霊夢が若干気の毒な視線を図書館の方へ向けて溜息をついた。


「さ、行きますよ」


 伝えることも伝え終わったため、紫に連れられてレリミアは満足そうにスキマの中へ入り、スキマが閉じられた。


「行っちゃったね」

「とりあえず帰ろうぜ」

「そうね。そこの馬鹿二人も行くわよ」

「はいはーい」

「うははーい」


 メンタとてゐは全裸に近い霖之助を縄で簀巻きにし、逆さづりのまま飛翔した。

 パルも咲夜の傍に駆け寄り、抱きかかえて持ち上げた。


「よっと。わっ、咲夜って凄く軽い……。ちゃんと食べてるのかなぁ……」


 パルが心配になるのも当然だ。咲夜も食べるときは食べるが体重と体型を気にしているため小食だ。その懸念にパルも思い当たり、後で教えてあげようと思った。

 パルの能力ならばいくら食べても太らない体にすることくらい造作も無い。



 咲夜を連れて守矢神社の近くにある町へと戻り、永琳たちも今日の仕事は終わって旅館に戻っているらしいので急いでそちらに向かった。

 大広間の戸を開けると夕食の準備を手伝っている早苗たちが出迎えてくれた。


「あ、皆、おかえりなさい」

「ただいま」

「戻ったぜ」

「ウチのてゐは変なことしてましたよね?」

「ちゃんとやることやってきました、師匠」


 てゐの証言だけではあまり信用がないため霊夢も続いて頷くと永琳も納得した。


「役には立ってたわ。それより――」

「まずはメンタと咲夜の治療をお願いできますか?」

「勿論良いですよ! ところでメンタさんは結構重傷みたいですけれど、やっぱり強敵だったんですか?」


 不意の言葉に霊夢たちは一斉に目を背けた。


「……」

「……」

「それな……」


 思わせぶりな態度に諏訪子が面白がりつつ事情に踏み込んだ。


「何があったんだい? お姉ちゃんに話してごらん?」

「それが……うっかり敵に操られてパル姉を襲おうとしたら逆にボコボコにされちゃいました」

「えっ?」

「どういうこと?」


 まずは――と紅魔館に到着した辺りから話し始めた。


「カクカクシカジカ云々」


 一通りの説明が終わり全員が半分面白がり半分呆れた。


「なるほど。それは大変でしたね」

「自業自得臭半端ない気がします」

「それは良いんですけど、一緒に行った霖之助さんは何処に?」


 姿が見えないなぁ、と早苗が辺りを見回すとメンタとてゐが真剣な表情になった。

 ――来ましたね!

 ――来たか!

 霊夢たちも霖之助の扱いは雑なためメンタたちの思惑に乗って話し始めた。


「霖之助は良く戦ったわ……」

「今回も一足先に最前線で戦っていたよ」

「霖之助は四天王と一騎打ちを望んで……やられちまったよ」

「あれは死闘でした。ですが、敵の卑劣な攻撃で負傷した娘同然の魔理沙さんを庇って、それでも奮戦して見えを張って根性論を並べて頑張って戦っていました」

「最後は暴走した四天王と一緒に派手に爆発して死んじまったよ。本当、あいつにあんな男気があったなんてな……思えば、そんな悪い奴じゃなかったよ」

「……そうですか」


 あまりの真剣な告白に早苗は騙され、永琳は疑いの視線でメンタたちに問いただした。


「……どこまで本当なんですか?」

「一騎打ちのくだりは本当ですよ。ただ、てゐの攻撃の巻き添えくらって吹っ飛んでました」

「それで?」


 その過程はままあっても、神奈子と諏訪子が欲しているのは別のものだ。メンタもそれに気づいており移動中に編集と包装を済ませたブツを二人に渡した。


「あ、こちら夏コミ用のCDです。今回は敵も味方も美味しいキャラが多かったので良いのが取れてますよ」

「にゅふっ」


 腐腐腐、と笑いあいつつ受け取る。

 傍らで早苗とイナバがパルの元へ寄って行き、詳しい事情を聴く。


「パルさん、咲夜さんを別室に寝かせましょうか」

「ちなみに咲夜さんは何していたのですか?」

「咲夜さんも操られていたんだけど、ボクが倒したんだ」

「咲夜さんを!? どうやってですか?」

「それは――」


 パルを別室へと促しつつ、早苗たちはある種畏敬を抱きつつ聞き続けている。二人も咲夜の能力は霊夢や紫から聞いてるため、どうやって攻略したのか興味津々だった。 


「さ、飲むわよー。あ、お金は紫宛てに請求書出しといてー」


 大広間に戻ってきた霊夢たちは昨晩同様に酒を片手に持ち、祝杯を掲げた。

 こうしてパル、メンタの初の異変は幕を閉じた。

 

 だが、物語は連鎖していく。 








 改めてパルたちも揃ったところで宴が仕切りなおされ、霊夢が音頭を取った。


「そんじゃ今日もカンパーイ!」

「乾杯!」

「ヒャッハー! 今日も飲んで騒ぎまく……ううっ……」


 てゐは相変わらず騒ぐが、メンタは傷が深く残っているため無理は出来ない。


「今日は無理しないほうが良いよ。メンタが思っている以上に怪我は酷いんだから」

「やったのよ――パル姉ですけどね」


 危うく依姫と言いかけてすぐに訂正する。口を滑らしたら今度こそ容赦ない目に遭わされることは想像に難くない。


「それ本当に覚えてないんだよぅ……」


 その当人であるパルは無自覚のまま葡萄酒の入ったグラスを傾けた。

 少し離れた場所では先程から早苗がちらちらとパルのことを見ており、酔いの入った連中は肴とばかりに早苗に絡んでいく。


「どーした早苗ちゃん」

「パルさんが気になるの?」


 少々浮ついていた早苗は唐突な図星に驚いて身を固くした。


「へっ? いえ、そんなことはありませんよ?」

「そうかなぁ~? さっきからずーっとパルちゃんの方を見てるけどねぇ」

「何か悩み事?」

「何々? 面白いネタ?」


 ネタと言えばネタだが、こういう席やイベントでもない限り心象を正直に話すことはない。早苗は意を決して告白した。


「……パルさんと仲良くするにはどうしたら良いのか分からなくて」


 仲良く、と言っても幻想郷内での年齢層は分かりづらい。少女のように見えても実は500歳だったりということはよくある。早苗も年齢的には未だ10代後半であり、里や町には同年代の少女はいるが友人という間柄よりも巫女とお客様という関係の方が遥かに多い。一見些細な問題と思えるかもしれないが、難しい問題とも言える。霊夢たちとも友好関係はあるが同年代という感覚や実感はあまりない。元から神社同士の対立関係もあるため事変後くらいでないと出会う機会は少ない。


「んなもん『さん』と『です、ます』を消せば良いのよ! あとは当たってくだけりょや! まぁりしゃもにゃんかいってモゴモゴモゴモゴ――」

「ちょっと黙ってろ。ま、でも霊夢の言う通りだぜ。後は勇気あるのみだ」


 人生経験が長い二人の言葉を聞き、霊夢は酔いから冷めて驚愕した。


「魔理沙がまもとなこと言ってる」

「私がまともなこと言ったらおかしいか!」


 ギャーギャーと騒ぐ二人を置いて早苗は立ち上がった。


「うん、よし! 行ってきます!」

「頑張れ~」


 すぐさま移動し、早苗はパルの隣に座った。


「あ、あ、ああ、あ、あの!」


 緊張もあり、言葉を何度も嚙みつつ早苗は言葉を絞り出していく。


「ほへ? 早苗ちゃんどうしたの? 顔真っ赤だよ?」

「うへっ!? や、あの、それは大丈夫でしゅ……」


 顔が赤いのをお酒のせいにしつつ早苗は口籠り、代わりにパルが今持っている度数高めでとても甘い果実酒を持ち上げた。


「それで、どうしたの? もしかして飲みたい?」


 度数65度というラベルを見て、断らなければ命が無いと思った早苗は真面目に首を横に振るった。


「それは真面目に勘弁してください。えっとね、私、パルさんのことを――」


 そこまで言うと酔っているメンタが察して抗議した。


「なっ! パル姉のことを呼び捨てにしたいのですか!? もっと親密な関係になってパル姉を奪おうということですね! 妹キャラの座は渡しませんよ!?」


 叫びは無視され、早苗は顔を真っ赤にしながら言い放った。


「パルって呼びたい!」

「良いよ~。じゃボクも、早苗~」


 わふーっと可愛い犬のような擬音語を口にしつつパルが早苗に抱き着いた。


「ふぇわわわわ!?」


 勿論のことパルの唐突な行動に早苗は驚いて困惑し果てる。


「はふぅ、落ち着く~」


 両手を早苗の腰に回し、押し倒して、マタタビを見つけた猫の如く頬ずりをし始めた。ただし早苗は完全にキャパシティーを超えて暴発し、固まったままだ。こういうことは神奈子たちにも偶にされるがそれはあくまでも『性的に』であり、そうではない親愛表現にはあまり慣れていない。

 それを見ていたメンタは――口から機械音を出して壊れた。


「――ア、ガガ、ガガガガガガガガガ」

「メンタが壊れたぜ」


 しばらくするとパルは疲れと酒もあって早苗の膝の上で寝息を立て始めた。


「くー」

「寝ちゃった……」

「まあ、それだけ飲めばな。早苗は飲まないのか?」


 魔理沙の勧めに早苗は少し迷った後、気分にも乗せられて近くにあったグラスを手に取った。


「お酒はあんまり得意じゃなくて……でも一杯くらいなら――」


 特に意識したわけではないが、そのグラスは先程までパルが飲んでいたものであり――。


「あ」

「きゅ~」


 常人が飲めば大抵潰れる。

 早苗の手からグラスが零れ落ちるところで魔理沙が受け止め、早苗自身は勢いよく机に付した。


「早苗ちゃぁぁぁん!?」

「早苗ちゃんの顔真っ赤! 永琳! 永琳は何処!?」

「師匠ならさっきてゐを連れて裏庭に行きましたよ」

「カムバーック!」


 てんやわんやの騒ぎも夜が更けるにつれて収まっていく。

 




 良い日の出。昨日の騒ぎはすっかり納まっており、大広間からは大多数人の寝息が聞こえてくるがそれはまだ良い方だ。

 目を覚ました咲夜は寝起き一番に頭を悩ませた。


「これはどういうこと……?」

「すー」

「くきゅぅ……」


 隣には少しはだけたパルと早苗が寝ており、戸惑うが、だが、と咲夜は考える。

 ――そう、これはある意味チャンスなのでは?

 二度寝は割と常習犯ではあるがもう一度寝るというのは流石に勿体ない。普段なら特に思うことなく起きるのだが幸いにも今は何もしなくても誰にも咎められないという状況であり、多分何をしたってパルも早苗も起きないだろう。


「ふふっ」


 そっとパルの頬に手を伸ばし、突いて見るが起きる気配は無い。次いで摘まんでみたり伸ばしてみたり、……パルが起きる寸前まで咲夜の戯れは続いた。



 町の被害はパルたちの活躍によって然程でもないが外壁の修理は必須のため、町人たちは煉瓦やコンクリートを手に働き始める。

 その中にはパルたちの姿もあり、最初は遠慮していた町人たちも今は助れられていた。


「それはこっち持って来てくれ!」

「はーい!」

「誰かこっち持ってくれー!」

「よいしょ!」


 その中には何故か美鈴の姿もあったが誰も突っ込むことはない。誰しもがまたサボっているのだろうと推測をつけていた。

 そんな風景を肴にしつつ外壁の上で霊夢たちは酒を飲んでいた。


「キリキリ働けー」

「酒飲んでないで働いてください、霊夢さん!」


 眼下から早苗の声が聞こえてくるが意図的に無視を慣行し、また酒を呷った。


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