表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

物語が始まりそうです

「ちょっとトウヤ!」

いきなり後ろから話しかけられ、はぁ〜と溜息混じりにトウヤは振り返る。


「なんだよ、チサキ」

気怠げなその態度にチサキは怒りを覚えたのか「なんだじゃない!」とイラつきながら応える。


「今日、私とあなたの当番の日でしょ!さっさと済ませちゃおうよ!」

トウヤとチサキは何かの当番らしい、チサキは用事を済ませる為トウヤを呼びに来ていた。

「当番ってあれだろ、飼育小屋の掃除だろ?いいよあんなもん1日ぐらいやらなくたって。あのウサギどもはそんなやわじゃねぇよ」

またもやる気のない返しにチサキは

「なによ!ウサギたちが可哀想じゃない」と思いやりを感じさせる言葉に続けて


「それに………私たちの二人でいられる時間が……」


モニョモニョと囁く。

トウヤはどうやら聞こえなかったらしく

「え?なんだって?」


バチーンッ!


ビンタをくらう。チサキは「もういい!」といって背を向け飼育小屋に向かう。





俺はこの二人のやりとりを蚊帳の外から見ていた。うぜぇ、ひたすらうぜぇ。俺の精神テンションは今限界を迎えている!

なんで俺廊下でこんな会話聞かせられなきゃいけないの?全然理解できない。


そもそも誰だよ、知らねーよバーカ。友達でも何でもない奴のイチャイチャってのは本当にイラつく。いや友達でもムカつくんだけど。


でもま、これも経験だよな。全ての経験が積み重なって今に繋がってくんだよ。大人になったとき、それがわかるんだよな。




感傷に浸りながら、窓の外を見ながらー



ー夕陽の照らす廊下を一人で歩くー



ーここにはいない君に話しかけるー



ー必ずまたここで会おうとー




思い出は必ず心に残る。いい事、悪い事。何も褪せる事なく、心に刻まれていく。


俺はトウヤとチサキに自分と彼女を重ねていた。


最後の日だ。最高の夢を見てくれよ。

トウヤとチサキに同情と哀れみをもって敬礼をした。


これでもいろんな体験してきたんだぜ?好きな人もいてさ。誰かの為に努力したりもしたんだ。

結末はこんなんだったけどさ。


でも今、俺幸せなんだよなー。普通に学校通ってさ。普通に何の不満もない日常を送ってた。


下駄箱にしまった踵の潰れた靴。それを履き校庭に出る。


校舎全体が目に入るように…


この世界を目に焼き付ける。

特筆することなんて何もなかったこの世界を。

かけがえのない平和を。


首のネクタイをゆるめる。


景色が砂に変わっていく。もうここにはいられない。俺はそれを直感的に察していたのかもしれない。幸せな時間は終わったと、眠っている時間は終わりなのだと告げられていた。


俺はどこにでもいる普通の高校生。

そういう体で話を進めてきた。


でも






ーそれも終わり。










どこにでもいる普通の高校生なんてありきたりな設定、つまんないだろ?


俺ももうそろそろ本当の意味で目を覚ます時がきたんだなって。


今まで見てきた夢に思いを馳せる。幸せだった。幸せな夢を見ていた。


だけど、この物語は終わり。



迷いと躊躇の中、覚悟と決意ををもって俺はその瞳を開くー




ーこの物語が始まる頃、彼の物語は終わった。だが、この物語を続ける為にはまず彼の物語を語らなければならない。彼の『始まりの物語』をー

何か始まってしまいました。当然この先ノープランですが読み続けて頂けると幸いです。


そして次回ついに彼の名前が明らかになるっ!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ