少し飽きました
俺はただひたすらだった。
ただひたすらにここにいた。
布団の上でただひたすらにゴロゴロしていた。ゴロゴロ、ゴロゴロ……
時間は今午後五時。あと三十分もすればゴールデンのアニメが始まる時間だ。
それにしても今から三十分何をしようか。
・プランA 寝る
ダメだ。三十分で起きれる気がしない。別にアニメが観たいわけじゃないけど。
・プランB 家の外に出る
論外だ。家から出る意味がまずわからない
・プランC オナ
やめておこう。
漫画でも読むか。わーい、たのちぃたのちぃ。
所でみんな小説を書くとき大切なことって何だと思う?それはちゃんと話の筋書きを考えてから書くことだ。ノープランだと何を書けばいいかわからないからな。
……確かこの時俺はこんな事を考えていた。
ただ何もない、普通の学生が過ごしそうな日常。
誰もが過ごした日常。
その日常がこんなにも得難いものだとは思わなかった。
ゆっくりゆっくり、砕けていく眼前の景色。人はいない。ただ目の前に一人以外は。
「どうだ、この風景。普通に過ごしいたんじゃ見られない」
そいつは自分自身の言葉に酔いしれるように語る。
「ここには生も死も、幸も不幸も、愛も憎悪も全てある。なんて美しいんだ…」
禍々しく赤く広がる空を指差し、そいつは続けて俺に問いかける。
「いつまで夢を見ている。君の現実はこっち側じゃないか」
その悲しいほど現実を突きつける問いに俺は答えた。
「確かに現実はこっち側だ、そんな事言われなくても分かってる」
そいつは黙ってじっと俺を見ている。
「でもな、あっち側が現実じゃないとは限らないんだよ。俺と……お前が、こんな風にならなくて済む現実だってあるんだよ…」
「……もしそうなら、僕達はもっと幸せだったんだろうね」
そいつは俺の言葉に一拍おいて賛同の意を示した。
俺は瞼を閉じる。多分お前も。
俺達の気持ちは、もしかしたら一つなのかもしれない。
今まで過ごして来た日々、乗り越えてきた苦難。全てが脳裏をよぎっていく。
余韻と言ってもいいかも知れない。送ってきた時間への余韻に浸る。
そして瞼をゆっくり開く。その先には
ただ天井があったでござる。寝てた。完全に寝てた。異世界の自分の夢を見てたと思った?残念ただの夢でした。
え?そのネタもうやった?そういう事言わない。
このときもう歩みは始まっていたのかも。
いつも事が起こる時はそうだった。自分の知らないところで。