トンデモ本「人類は鳥類だった!」 付録童話4
その昔、神様が鳥達の祖先を集めて言われました。
「みんな、卵を暖めるのには慣れたか?」
鳥の祖先(面倒なので、以下「鳥」。)達は口々に申し上げた。
「はい、慣れました。」
「卵を暖めるのは、とっても楽しいです。」
「卵を産むだけで済むので、体がとても楽になりました。」
神様は、
「そうか、そうか。それは良かった。
歯が無くなったのも大丈夫か?」
鳥達は、
「問題ありませーん。」
「そう言えば、軽くなったので飛ぶのがもっと楽しくなりました。」
神様は、
「それは良かった。それでも困っている事はないか?」
と聞いて下さると、ある鳥がモジモジしていた。
それに気付かれた神様は、
「どうした?何かあるのか?」
と聞いて下さった。するとその鳥は、
「神さま、産んだ卵が食べられてしまうのです。」
と答えて、悲しそうな顔をした。
神様は、
「そうか、それは可哀想な。
そうだ、お前らは飛べるのだから、高い所に巣を作れば良いのだ。
今度、技術指導員を連れてきてやるから、
その者から高い所への巣の作り方を教えてもらいなさい。」
と言われると、その鳥は、パッと顔を輝かせ、
「有難うございます。是非お願いします!」
と申し上げ、神様も満足そうに頷かれた。
それから、誰に言うともなくポツリと
「ニンゲンはどうしておるかのう…。」
と呟かれた。鳥の代表はそれを聞くと、少し横を向き、
「またニンゲンですか…。」
と言った。すると神様は鳥の代表に
「おっ、君のとこ、いい家、建てたんだって。
今度招待してくれんか?
それに息子さんも良い大学に入ったそうじゃないかぁ。」
と言われると、それを聞いた鳥の代表は
神様が気を遣われている事に気が付き、
申し訳ないような恥ずかしいような気持ちになり、
慌てて振り返ると皆に言った。
「誰か、ニンゲンの様子を知っている者はいないか。」
すると、知っていそうなそぶりをした者に向かって、
「早く、神様に申し上げて。」
と急かした。その鳥は、
「神さま、実はですね、
ニンゲンは以前からノロノロ喋っていたのですが、
あまりにも喋り方が遅いので、
ここに来て、とうとう私達の話が聞き取れなくなっているんです。」
他の鳥達も言い立てた。
「私も聞きました。ニンゲンは私達の言葉が分からなくなったので、
近頃では、鳥の鳴き声に意味はない、と思っているそうです。」
「馬鹿じゃないの。私達が泣いているとでも思っているの?」
「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、そんなに馬鹿になっちゃったんだ。」
これを聞いて神様は、
「これこれ、馬と鹿の事をバカにするのではない。
あいつらは哺乳類の割に素直な良い子達なのだから。」
となだめられた。そして、
「うーん、そうなのかぁ。
それで先日、三丁目の交差点でバッタリ会った時に
声を掛けても返事をしなかったんだなぁ。」
と独り言を仰ると、鳥の代表は、
「三丁目の交差点とはどこですか?」
と伺ったが、神様は、
「いやいや、そんな事はどうでも良い。
ともかく困った事だのう。」
と仰った。
すると、智恵のある鳥が申し上げた。
「神さま、これは由々しき事になりましたな。
あれは元々粗暴でしたので、
これからは何をしでかすか分かりません。
他の鳥達も食べられてしまうかもしれませぬ。」
神さまは、
「うわーホントだ。」
と暗い顔をされたが、切り換えの早い神様は、
「もうテンション下がったから、今日の会議はおしまい!」
と宣言されると、鳥達は早く帰れると喜んだのでした。
こうして、特別な対策を立てなかった為、多くの鳥は人間に食べられる羽目になってしまいました。 おわり