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身勝手な愛情

 眠るセシリアの顔には涙の痕がいくつも残っている。

 乱れた髪を梳いてベッドに流す。

 無力感がイリアスの胸を焦がしていた。

「セシリア…」

 僕が出来ることなんて何もないのではないか、そう思えてしまう。

 迷惑をかけている、泣きながらそう言った彼女の真意はわからない。

 ただわかるのは彼女にとってまだここは居場所ではないということ。

 当たり前だと思う理性とは裏腹に波立つ感情。

 必要とされたい。そう思うのと同時に意識しないほど自然な関係になりたいと思う。矛盾した思考に笑う。

 呪い師に渡された石が手の中で揺れる。

 チェーンを外しセシリアの首にかけた。

 石について説明はしたけれど、覚えていないかもしれない。

 朝になったらまた伝えた方がいいかもしれないと考えて首を振る。

 明日は会わない方がいい。

 決闘のことを気取られたら隠していた意味がない。

「勝手でごめん…」

 伯爵は正式な婚約者でもない僕がセシリアを縛り付けるのはおかしいと言っている。

 それ自体は間違っていないと思う。

 誰が求愛しようと自由だ。

 だがそれを許せない僕がいる。

 誰にも触れさせたくない、僕だけを見てほしい。

 これも偽らざる僕の本音だ。あまりに利己的で、身勝手な感情。

 それを言ってしまえば、セシリアは拒めないだろう。

 この国で他に頼る人はいない。

 僕が選べと言ったら、セシリアには狭い選択しか与えられない。

 それは嫌だった。

 願わくばセシリアの呪いが完全に解けて自由になった後に僕を選んでほしい。

(一方通行の愛情なんて寂しいじゃないか)

 だからこそ何も話さず決闘に向かう。

 終われば今までと同じようにゆっくりとセシリアを待つことが出来る。

 伯爵ごときにセシリアの未来を決めさせるつもりはなかった。

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