零れる涙
目を覚ますと横にイリアス様がいた。
私が目を開けたのに気付くと安心したように微笑んでくれる。
笑顔を返そうとして、ぽろりと涙が落ちる。どうしてだろう、笑えない。
今までできていたのに、イリアス様の顔を見たらもう、駄目だった。
涙が止まらない。開いた目から次々と溢れ出す。
俯いて胸に顔を押し付ける。イリアス様は黙って胸を貸してくれた。
悲しい、何故ここまで否定されなければならないのか。
疎まれているとわかっていても悲しかった。
帰らなくても、存在することが許されない。だからこんなに苦しい。
ただ生きていることを許してほしいだけなのに。
「………!」
零れる嗚咽と涙は腕の中に溶けてゆく。
甘えちゃいけない。 そう思うのに何も言わず包んでくれる優しさが心強くて―――。
次から次へと溢れる涙が抑えられない。
「ごめん、なさい……。 私、迷惑ばかりかけて」
今だってこんなに迷惑をかけている。何も返せないのに、受け取るばかりで……。
与えられる優しさを当然と甘えそうになる自分が怖い。
「私、は、本当ならここにいられないのに…」
いつかは出ていかなきゃならないのに……。
「こんなに、良くしてもらってるのに、何もできない。 心配ばかりかけて、今回だって…」
驚かせて、心配かけて……、困らせてばかり。
一人でも生きていけるようになりたいのに、ならなければいけないのに、またあの痛みが起こるかもしれないと思うと怖くて―――。
「ここに、いればいい」
僕の傍に。そう言ってくれる。
心配いらないと、何かが起こっても守ると言うように強く抱きしめてくれる腕の安心感に瞳を閉じた。