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イリアス様の悩み

 月のない夜、庭園は闇に満ちていた。

 セシリアの目でなくても暗闇に包まれているように見えるだろう。

 いつものように噴水に腰掛けて空を見上げる。このところ良くなってきたとはいえ、まだまだ星は見えない。

 ふう、とセシリアは小さくため息をついた。

 また、考えが同じところに戻ってしまう。ここの所ずっと同じ。

 イリアス様が何かに悩んでいるのは気づいている。

(何も言ってくれないけれど、深刻そう)

 時折、縋るような強さで手を掴まれる。驚いたり、手を引いたりしたら逃げてしまいそうで、それが怖い。

 手を握ったり頬にキスをしたりといった触れ合いが増えたのは、イリアス様が悩んでいる様子を見せてからのこと。

 人に触れていると安心するのかもしれない。

 そのたびにどきどきして困るのだけれど、身を引いたら悩んでいる彼を突き放してしまうように思えて出来なかった。

 それに、本当はうれしかった。どんな理由であっても好きな人に触れられてうれしくない訳がない。

 悩んでいる時にそばにいさせてもらえるのは信頼していると言われているみたいで、うれしい。

 くちづけられた頬に手をやる。

(恥ずかしい……)

 触れられた瞬間は何が起こったのかわからなかったけれど、離れるときの吐息でキスだったことに気づいた。

 何で、とも聞けずに笑顔で誤魔化してしまった。

 親愛のキス以外知らないセシリアに、どういう意味かなんてわかるわけない。

 大切に思われているのはセシリアも感じている。

 けれど、それがどういう感情に基づくものか、それは知りようがない。

 触れてくるとき、ふわっとした好意だったり張りつめた切迫感があったり様々な思いを感じる。

(話してほしいなんて言えるわけない)

 頼ってなんて言える立場ではない。けれど、それでもイリアス様の役に立ちたいと思っている。

(イリアス様の背景を知らない私に、どれだけのことが出来るかわからないけれど……)

 それでも何かしてあげたいと、そう願っていた。

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