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生誕祭 3

 フレイの用意してくれた馬車が止まり、王宮に付いたと御者の方が伝えてくれる。

 外が見えないセシリアが危なくないようにと隣に座っていたイリアス様はずっと手を握っていてくれた。

 恥ずかしいけれどうれしくて、時間があっと言う間に感じられた。

 イリアス様は抱きかかえて降ろしてくれるつもりだったようだけど、そこまで甘えられない。

 しっかりと手を取って足を踏み外さないように慎重にステップの位置を見極める。

 馬車を降りるとにぎやかな声が聞こえてきた。

 辺りに多くの人がいるのがぼんやりわかる。

 イリアス様の手を取って歩き出すとあちらこちらから視線を感じた。

『あれが噂の…』

『王妃様が呼ばれた…』

 耳を澄ませなくても王城のいたるところで噂する言葉が耳に入ってくる。

 囁く声は好奇に満ちていて、多少居心地の悪さを感じていた。

 注目する人の多さに驚く。自分の手を取っている人がこれほどに人々の関心を集める人だとは知っているつもりで、わかっていなかったと気づく。

 好意的でない視線や言葉も感じられた。

 不安が頭をもたげた瞬間手がきゅっと握られる。それがどれだけセシリアを勇気づけるか、わかっているみたいに。

 言葉に出さない励ましにイリアス様の方を見て微笑む。

 イリアス様も笑ったような気がした。

 気後れはしていない。どれだけ大きくてもここは室内で、あの祭りの日ほどの人がいるわけじゃない。

 自分が落ち着いているのを確認するとイリアス様の手を握り返す。

 イリアス様が導く先に陛下と王妃がいる。

 導きにしたがって足を止め、手を離す。

 静かに膝をついて礼をすると人々が静まりかえる。

 心地よい緊張感。

 セシリアは顔を上げ、くちびるを開いた。

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