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招待状

「私が、王子様の誕生パーティーに?」

「ああ、姉上がぜひとも君に出席してほしいと言っているんだ。 生誕を祝う歌を歌ってほしいと」

 ようやく授かった王子の一歳を祝う生誕祭だ、姉上は本気でセシリアに来てほしいのだろう。

 わざわざ僕を呼び出して招待状を手渡した上でセシリアの説得を申し付けるくらいに。

「でも、私は…」

 セシリアの言葉が止まる。

 何に躊躇っているのかはわかった。呪われた身で祝いの席、それもこの国の王族が集うとあって遠慮しているのだろう。

「私は…、呪われた身で、そのようなおめでたい席に出るのには障りがあると思います」

「姉上が是非にと言っているんだ、君が了承してくれるのなら問題は何もないよ」

 大丈夫だと頷くと不安に陰った瞳がわずかに光を取り戻す。

「でも、王妃様が望んでくださっても、他の貴族の方などはご不快に思われる方もいらっしゃるのではないですか?」

「心配いらないよ。 これは正式な招待なんだ、セシリアが気に病むことは何もない。堂々と招待を受ければいい」

 そもそも目が見えないことは知っていても呪いのせいだとはわからないのだし、何も問題にならない。

「姉上は本当に君に歌ってもらうことを切望しているみたいだ。

 ずっと子宝に恵まれなかったから、是非とも王子に祝福を授けてもらいたいと言っていたよ」

 嫁いでから5年、ようやく生まれた王子に歓喜したのは誰よりも姉上だ。

 ほぼ生まれた時から次代の国王に嫁ぐことが決まっていた姉上だけれど、幼い頃より気持ちを通わせ結ばれた陛下のことを深く愛している。

 お二人に子供が授かったとき僕も心からほっとした。

「こうして招待状まで用意したからには国王陛下も了承済みのことだろうしね」

 並んで書かれた署名は本人が書いたものではないけれど、侍従長が厳しくチェックしている。

 王妃が望んで国王がそれを了承したからセシリア宛の招待状がここに存在するのだろう。

 そうして形式が整っている以上、あの姉上に文句を言える貴族なんていやしない。

「以前姉上に歌を聞かせたことがあっただろう? あの後城に帰ってから姉上が方々に君のことを話して聞かせたらしい。 そのおかげで君に関心を持っている者は多い。

 何も気後れすることはないさ、僕も一緒だから」

 僕も当然参列することが決まっている。セシリアが参列するのならエスコートするのは僕以外いない。

「イリアス様が?」

「ああ、当然僕も出席しないわけにはいかないし、君がこの話を受けてくれるのなら当日は君のエスコート役を務めさせてもらうよ」

 セシリアの表情に少しの安堵が浮かぶ。

 信頼の色に胸が暖かくなる。

 招待状を手にしてセシリアは真剣に考えている。優しいセシリアのことだから最終的に断らないだろう。

 きっと姉上の願いを叶えてくれる。

 エスコートという名目で彼女と一日ともにいられる。役得だな。

 彼女が頷くまでの間、葛藤する様子を眺めていた。

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