変化の影響
「ふむ……」
セシリアの瞳を一通り検分した呪い師は息を吐いた。
「どうなんだ、呪いは解けたのか?」
「うるさい兄さんだねえ、こっちが話すまで待てないのかい」
鬱陶しそうな声にむっとしたが、老婆の言うことももっともだったので口を閉じる。
「結論から言うと解けてはいないね。 ただ……」
「ただ?」
「呪いってのは複雑なようで単純なんだ。 かけられた人間の心の持ちようが変われば呪いも揺らぐ。
自分の心ひとつで呪いなんて克服することが出来るんだよ」
「心境の変化が呪いに影響したということなんでしょうか」
セシリアの質問にイリアスも心当たりがあった。先日抱えていた思いを教えてくれたこと、それが影響しているのか。
「心当たりがあるのならそれが影響したことは間違いないだろうね。 何か変化があったのかい?」
「はい…。 イリアス様には全てお話したんです。 出生のことも、呪いの心当たりのことも、全部」
「ほう。 それを話してどうだったね?」
「そうですね。 話せて良かったと思います。 ほっとした感じ、でしょうか?」
「そうかい。 その秘密が話せるくらいにお嬢さんは兄さんのことを信頼しているんだね?」
「ええ…、とても」
信頼に満ちた瞳で微笑まれて心の中で狼狽える。
動揺を胸の中に隠して微笑み返した。
「ありがとう、セシリア」
以前よりも視線が合うことが多くなってこちらを見ていることが増えたセシリア。
このまま快癒していけばいい。
心が救われれば呪いは完全に解けるかもしれない。
彼女の憂いを晴らす一助になるのなら僕は何でもするだろう。