初めての挑戦の後
帰ってきてフレイからセシリアの冒険を聞かされた僕はとても驚いた。
そんな行動的な面を見せたことがこれまでなかったので、いきなり一人で庭園に行こうとするとは思わなかったな。
新たな一面の発見に楽しさを感じる反面、心配も増えた。
今日もたまたま見ていたレナの目の前で転んだという。
怪我こそしなかったからいいものの何かあったら側についていなかったミリアレーナが責められる立場になる。
着替えて庭園に降りていくとセシリアはやっぱり噴水の前に佇んでいた。
「セシリア」
声をかけると振り返って微笑む。
「イリアス様、お帰りなさい」
座ろうか、とセシリアを促して席に着く。
「フレイから聞いたよ、今日は庭園までひとりで来たんだって?」
そう切り出すとセシリアが俯く。
「申し訳ありませんでした」
本題の前に謝罪されて目を瞬く。
「どうして謝るんだい?」
大事なのは謝る理由だ。
「勝手に行動したこととミリィを連れて行かなかったことを申し訳なく思っております。
特にミリィに何も言わずにいなくなったことは良くなかったと…」
全部自分でわかってるみたいだ。これで僕が怒る必要もなくなった。
「そうだね、最初に言った通り屋敷内を自由に行動するのはかまわない。
けれど、まだ行ったことがないところや危ない物があるところもある。
それらから君を守るためにミリィが側にいるんだから置いて行ってはいけないよ。
心配していただろう?」
セシリアの姿が見えないことでミリアレーナはそれはもう慌てたそうだ。
考えたらセシリアの行きそうな場所は限られてくるのだが、それも考えつかないくらい狼狽して屋敷中を走り回ったと言っていた。
「はい…」
申し訳なさそうに俯くセシリアの頭にぽん、と手を置く。
「次からは気をつけること」
子供にするような動作にセシリアが目を瞬いてイリアスを見上げる。
イリアスの視線にセシリアの視線が掠める。一瞬だけ交わった瞳に胸が騒いだ。
「そろそろ、屋敷に戻ろうか」
胸の奥の感情に気づかないふりでセシリアに声を掛ける。
躊躇いなく僕に手を伸ばしてくれるセシリア。
屋敷に戻ってからお茶をしながら少しだけ話す。
お茶を用意したミリィに改めて謝る姿は叱られた子供のようで、年下のミリィの方がお姉さんに見えておかしかった。