第四章 冴えない冒険者の育ち方
クマ「私が、貴様を、胸の高鳴るような一流の冒険者にしてやる!」
ユウ「そっか……クマに一流に育てられるのか……」
「いらっしゃい! って、ユウじゃないの! どう、したの……ぬいぐるみなんて持って……」
明らかに冷めた目で出迎えてくれたのは、家から徒歩15分ほどの場所にある『葵武具店』の女主人、アオイさんだ。
動くたび、ほのかに良い香りのする、腰まで届くほど長く美しい青色の髪。
身長は僕と同じか、少し小さいくらいで自然と親近感を感じてしまう。
アオイさんは推定20歳前後にもかかわらず基本一人で店を切り盛りしている。
明るい性格で気前が良く美人、ということで多くの冒険者がアオイさん目当てで足しげく通っている。
僕がここに来たのは、冒険者となって武器を買うために1度来ただけなのに顔も名前も覚えてたみたいだ。
こんなことされたら、「あれ?気があるのかな」なんて思うのも当然かもしれない。
我ながら男というのは単純だなと思う。
だからこそ、そんな彼女に冷めた目は恐ろしい凶器として心に突き刺さる。おそらくこの店唯一の精神攻撃武器だろう……
「あ、いやこれには事情があって…。ちょっとクマ! もう動いていいよ!」
「やっとか。全く、何で私がぬいぐるみのふりなどしなければならないのだ。」
「う、動いた!というかしゃべった!?A級以上のモンスターが何でいるの!?」
店にある剣を向けてきた彼女は完全に臨戦態勢に入ってしまった。だからこそ店に来るまでぬいぐるみのふりをさせていたのだが……
――と、突然だがここでモンスターのランク付けを説明させてもらおう! モンスターは6つのランクで分けられる。
最低が【Dランク】雑魚。武装すれば子供でも倒せる。
次に、【Cランク】屈強な男が素手でようやく対抗できる。
続いて【Bランク】が、冒険者達の主な相手。これ以上のモンスターは銃などは効かず、強い思いのこもった攻撃しか受け付けないとかいうファンタジーな設定がある。
さらに【Aランク】は、1つのダンジョンを治めることが出来る強力な力を持つ。人間の言語をしゃべるなど知能も高くなり、多くの冒険者たちの現実的な目標とされる。
そして【Sランク】は、ジャホンにある47の国に一体ずつ生息する。体内にメダル状の核を持ち、討伐すると手に入る英雄の証。1体でも討伐すれば一流といわれ、人類最大の5体を討伐した騎士団長は最強と言われている。
また、【SSランク】とされるのが魔王。自らが統治する国「グソマ」に生息する。最強と言われる騎士団長ですら見ただけ脱糞して逃げ出すレベル。戦って生きて帰ったものがいないので情報がない
ざっとこんな感じで分けられ、しゃべったクマはアオイさんにAランク判定を受けたのだ。
僕だって「私は魔王の使い魔だ!」何て言われたら絶対に信じる。
ちなみに冒険者にもあるが似たようなものなので割愛!
「いや、これは一応モンスターじゃなくて、かくかくしかじかな事情があるんですよ!」
「な、なるほど、女神の使いねぇ……。まあ、敵対してこないようだし信じることにするね…」
説明をしてもさすがに完全に信じてはいないみたいだ。しかし女神様も見てないのに、理解してくれただけですごい器量の持ち主だとも思う。
「ところで、ユウとクマさんはどうしてここに? 槍のメンテナンス?」
「やはり貴様がユウに槍を勧めたのか! なぜ弓を勧めぬのだ!」
「ひぃっ! そ、それは、剣などの近接武器よりリーチがあって戦いやすくて、弓などの技術が必要なものより扱いやすいですし……」
「そんなの知らぬ! 言いから弓をよこせ!」
とてつもなく横暴だ。まるでチンピラだ……。おそらくアオイさんの中でモンスター容疑が再浮上してきただろう。
「そ、それじゃあ、この辺が見習い冒険者用になってるのでご覧くださいー……。ユウー、ちょっと話があるから来てくれるかなー?」
アオイさんに笑顔で呼ばれた。目が笑っていないけど……
「ねぇ! ホントにモンスターじゃないんだよね! 信じていいんだよね!」
「はい! そこは信用してください! モンスターじゃないです! (多分…)あ、それとクマさんがうるさいので槍売っていいですか?」
この『葵武具店』では武器の買取を行っている。冒険者が新たに強力な武器に変えるときに使わなくなった武器を売り、それを新人などが中古として格安で買い、冒険者として成長していくのだ。簡単に言えば、「ブック・オフ」みたいなものだ。
「いいけど、しっかり手入れもされているし、本当にいいの? 怖いけど、槍が良いならクマさんに一緒に頼んであげるよ。怖いけど。」
「いえ、ダイジョブです!クマってすごい弓使いらしいですし、あの子と一緒なら強くなれると思うんです!」
「うーん、ユウがそう言うならいいけど……」
まだ僕たちは2回しか会ってないのに、ここまで僕の考えてくれている……もう僕はアオイさんが大好きだ!
でもそう思う反面、これは仕事だからやってる、なんてことも考えられる……よし、また店に来て気持ちを確かめよう!
「おいユウ! なんでガッツポーズしてるのか知らんが中々良い弓を見つけたぞ!」
「はっ! いつの間に……。い、今行きまーす……って、デカっ!!」
クマの周りに置いてあった弓もかなりの大きさだが、なかでもクマに提示されたのは168cmの僕の身長をはるかに超える大きさで群を抜いていた。
「弓ってこんなにデカいのか……。やっぱやめようかな…」
「いやはや、私が使っていた弓も中々の大きさだったがこれはそれ以上だな! 気に入ったぞ! あーあ、私も撃ちたいなー!」
「こ、これはさすがにユウには無理じゃ……。初心者用じゃないですし、もうちょっと小さいものを……」
アオイさんですら軽く引いているが、重いし、持ち運びが大変だし、広い平原ならまだしも広さの限られるダンジョンには向かない。そもそも素人には扱いずらそうだし当然だろう。
「よし、これと矢を買ってさっそく撃ってみるぞ!」
「聞いてないし……。あの、これいくらですか? 高いですよね?」
「うーん、こんなの買う人いないしなー。これに矢を取りあえず10本と、他に使うものもつけて、それと槍の買取り分を引いて……えっと、8、いや、7000円でいいわ!」
買い取り手がいないからー、とは言っているがそれでもここまでつけて安すぎる! しかもそのあとこの弓が無理そうだったら別の武器に変えてあげるとまで言ってくれた。
ここが、知り合いが13時間も店にいてサービスの一つもないケイ姉との違いだ! だから結婚できないんd、うっまた頭が痛んできた気がような……
「それじゃあ、5000円。多分近いうちにまた来ると思いますが……」
「フフッ、大変だと思うけど先生のもとで頑張ってね! あとこれはプレゼント」
「えっ!? これナイフじゃないですか! いいんですか?」
「いいのよ、あんなの売っちゃったんだから。自分の身はしっかり守って、ユウにはちゃんと生きてもらわないと!」
ああもう、この人と結婚できたらどんなに幸せか……。告白しようかなー。でもそんなことした確実にクマさんに殺されるし、そもそもそんな度胸ないし……
「おいユウ! なにボケーっとしているのだ! さっさと帰ってこの弓の試し撃ちだぞ!」
「あっ、はい! それじゃあアオイさんまた来ます!」
「ええ! いつでも来てね! バイバイ!」
僕たちが見えなくなるまで手を振ってくれて、僕は天にも昇る気持ちだった。
しかしこの後、家に帰るまで袋に入っためちゃくちゃ長いものと、クマのぬいぐるみをもつ変な奴として衆目にさらすことになったのでした。
まさかの予期せぬ新キャラ登場!しかもめっちゃいい人じゃん!ケイ姉さんの影が薄くなっちゃうし、本来の登場予定の新キャラも霞むのでは…。
まあ、内容が充実して自分の発想に満足ですが!




