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第55話  魔王様と蒼泉くん

「全部気づいてたんだけど、知らなかった? お父さん、お母さん?」

 私は恵さんと潤さんを見つめる。

「答え合わせ、お願いします。まずは私の推理を聞いて下さい」



 まず、私が売られた時の話だけど・・・。

 あの時、みんなで心中しようとしてたんだよね。それで、まだ小さい私をどうしようと考えた。

 きっと、蒼泉くんが居るし、引き取ってくれるはず。そう思って、施設に預けたんでしょう? 生憎、その蒼泉くんは居なくなってしまったのですが。

 お父さん、お母さん、それからお姉ちゃん。みんなで心中したのに、お母さんだけ生き残ってしまった。一人で小さな家に住む。


 さて、その頃、蒼泉くんはある世界に勇者として召喚される。さっさと世界を救えば帰れるんだろと思っていたので頑張って強くなり、救ってあげた。

 さて帰ろう、という時で、今帰ったら大問題になってしまう、と気が付いた。そりゃあ、消えたその時間に戻れば良いだけの話なのだけれど、蒼泉くんは慌てていてその事に気づけない。


 私と暮らせない事に怒りを感じた蒼泉くん。ひとつ世界を作って、その世界に私を召喚する道を選んだ。なのに。何故か、私だけ、召喚出来ない。そうだな、会いたいがあまりに、慌てて失敗する、とかなんだろうけど、慌てているから気づけないんだよね。蒼泉くん、慌てると周りが見えなくなっちゃうんだよ、知ってたかな?


 少し戻って。一人生き残ったお母さん。そこそこ余裕ができたので、私を引き取る事にした。けれど、なんで、私を捨てたのに! と言われたくない。その時、蒼泉くんが正体を隠して、魔法使いとしてお母さんのもとへ。こっそり私の『家族』に関する記憶を消す。それで、お母さんは私を引き取った。そうでしょう?


 私の事を一刻も早く救いだしたい蒼泉くん。でも、それが出来なくて、だったら死んじゃたい、けど、自殺っていうのはなんか嫌。本気で戦って殺されたい。でも、もはや自分に勝てる相手が居ない・・・。ってことで、自分が呼ばれた様に、誰か、自分に勝てる人を呼びだす事にした。

 呼び出しても、呼び出しても勝てる人は居ない。そんなとき、偶々引っかかったのはお父さんと私のお姉ちゃん。蒼泉くんは一瞬で正体をばらして、家を保護してあげた。ついでに、何処かのパラレルワールドからお母さんも連れてくる。全部事情を説明すると、分かってくれた。


 相変わらず、自分を倒せる人が出来ない。もう面倒になって、クラス一つ持ってきた。

 そうしたら、私が其処に居たの。でも、殆どの人は魔物に殺されちゃうし・・・。すぐにお姉ちゃんをその場に呼んで、私を救出させた。魔法で洗脳して、何とか家まで連れてくる。

 でも、花凛たちになんの様もないよ、ごめん、なんて言えるはずもなく、結局作戦を実行、今に至る。



「こんな感じでしょうか?」

「何で、それを?」

「ええと・・・。みんなの性格から、やりそうな事を考え、一番しっくりくるのがこんな感じだったんです。あの頭痛も、家族の事を思い出そうとする、なら納得です。だって、潤さんの事考えようとした時、起こったりしましたから」


 それから、私は小さな瓶を出す。

「この、魔王様がくれた薬。これ、分かっちゃったんです。この液体、飲むものじゃなくて、香水。嗅げばすぐ分かる、って思ってたんでしょうね。だって、蒼泉くんが私にくれた香水と、同じ香り」

「・・・朱璃ちゃんの性格なら、使わないと思ってたんだ。持ってるだけで落ち着くお守りだよ」

 そうなんだろうね。これが近くにあると、あんまり悪い夢、見ない事に気が付いたんだ。


「私・・・。立華家に着いてから、養母の事、ずっと考えてたんです。でも、なんでか、そういう時に限ってペンダントが光るから、私、いつの間にか考えなくなって。魔王様、あなたのせいですね?」

「何の事だか」

「もういい加減にして! 私、私・・・」


 必死に頑張って来た。蒼泉くんと一緒に居たい。それだけが目標だった。もう、今さら誤魔化さないで。あってるって言って!

 家族の事、思い出せなくて。なんて薄情な奴なんだろうって思ってた。自分の事を捨てる様な人だから忘れちゃったのかな。これであってるなら、もう、責めなくて良いから。とにかく、認めて欲しい。これしか救いが無いんだよ!


「・・・。ごめんね、朱璃。ずっと黙っててさ」

「あってるんですね? 世界を救う、だなんて言って、本当は、自分の事を殺して欲しかったんですね?」

「そうだよ。このままじゃ、この世界を滅ぼしちゃいそうだったから、まああってるけどね」


 蒼泉くんなの・・・。間違いないんだね・・・? それで、此処に居るのは、私の家族で、間違いないんだね・・・?


「マスター。よく分かりましたね。推理、完璧じゃないですか」

「ほんと。朱璃って結構頭いいのね」

「・・・え?」


 エリーが教えてくれた。あの時、魔王様と二人きりで食事した、あの時。みんなは本当の事を教えて貰っていたのだ。それでも、知らない振りをしてくれた。本気で世界を救うため、行動しているように見せかけてた。私の為に。優人や、麗華までもが。


「み、みんな・・・。魔王様、じゃなくて、蒼泉くん!」

「何だい、朱璃ちゃん?」

「会いたかったよ、ずっと、すっと!」

「俺もだよ」


 ギュッと固く抱きしめ会う。これだけで良い。

 ああ、この温度、間違いないよ。蒼泉くんだ。

 ああ、この笑顔、間違いないよ、蒼泉くんだ。


 私の、一番好きな人・・・。



「お父さん、お母さん」

「な、なあに?」

「今まで、ありがとうございました。あ、その・・・。私は、もう、大丈夫、です」

「?」

「こんなに沢山、私の為に動いてくれる子が、居ますから」


 だから。完全に自立した、といいたい。でも、なんでだろ、言えない。

 ああ、ダメだ。やっぱり、家族を愛してる。


「お父さん、お母さん、お姉ちゃん! あぁ、間違いないよぉ」

「朱璃。ごめんね、黙ってて、ごめんね・・・」

「強くなったな、本当に」


 ダメだよ、全然強くない。私はやっぱり、こうやって、久しぶりに家族だ、と分かったみんなを見て泣いてしまうのだから。

 お父さん、お母さん。お姉ちゃん。それと、蒼泉くん。私、今、すっごい幸せ・・・。


「さあ、朱璃ちゃん。僕のお嫁さんになってくれるね」

「うん、もちろ・・・」

「? 朱璃、ちゃん?」

「この子たち、どうすれば?」


 私の大好きなみんな。離れなきゃいけないなんて、嫌だ。でも、みんなと蒼泉くん、どっちを取るかと言えば、蒼泉くん。間違いない。

 困って蒼泉くんを見ると、笑って頭を撫でる。


「連れておいで。お城に住むんでも良いし、お城のすぐ下に家を建ててあげても良い」

「い、い、の?」

「ああ。さ、綺麗なドレスを作ってあげるよ。何でも好きなものを食べよう」


 愛しい蒼泉くんが隣に居る、それだけで良い。だから、本当なら、何でもいい、と答えるの。でも。

「セレスの作った、甘ぁいマカロン、一緒に食べたい」

「ふふ、良いよ。セレスティーヌちゃん、お願いできるかな?」

「任せて下さい、朱璃様は、ずっとそれを楽しみにしていましたから」


 さっきの戦いなんて、もうとっくに忘れてる。今はこの目の前の事で頭がいっぱい。

 今までの事だって、何でもない。大変なことだって沢山あった。でも、今この瞬間幸せだと、頑張った甲斐があったな、って思える。


「さあ、俺のお城においで。花凛ちゃん、咲耶ちゃん、今まで朱璃をありがとう。優人、麗華ちゃん、なんだかんだ言って、協力してくれて、ありがとう」

「朱璃がとても優しい子だから。私も、朱璃を助けてあげたのですわ」

「幸せになれて良かったね。大変な事もあってけど・・・。本当におめでとう」

「い、色々とごめん。そ、その・・・。罪滅ぼしというか・・・。朱璃が幸せそうで、よかった」

「私は何にもしてない! ただ、その、命令に従っただけ」


 蒼泉くんは私をお姫様抱っこする。

「エリヴェラちゃん。俺のお城に飛べるかい?」

「うん、大丈夫」

「じゃあ、先に行ってるね」


 ああ、これが恋の味・・・。ファーストキスが愛している人って、こんなに幸せなこと、無いよ。

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