第52話 指導者
「みんなやるねー。俺の準備した課題、結構難しかったんだけどね。みんなどんどんクリアしちゃうなんて」
魔王様が嬉しそうに笑う。私たちはその様子をみて苦笑いするしかない。
難しい課題ばかりだった。でも、全てクリアしてきた。御蔭でレベルもどんどん上がる。
そんなこんなで、五年なんて一瞬だったよ。でも、楽しかった。
「この後支援受けるとか、仲間増やすとか出来るけど、どうする?」
そう。最後の一年は、仲間にしても良いんだったね。でも、私たちの結論としては『これ以上増やさない』ことにした。今のパーティで、十分バランスが良いんだもの。
という事で、一足早く家に帰って来た。すっごく久しぶり。とりあえず家中大掃除をしてから、リビング集まる。
「そう言えばマスター、この前レベルマックスになったんですよね。解放行きましょう」
「うー、でも、プラスするスキルが決まって無くて」
一つだけ。私にピッタリのものがある。でも・・・。それを取るとなると・・・。正直怖い。
「俺たちは、朱璃姉ちゃんを守りきる自信、あるぞ?」
「大丈夫です、マスター」
なら・・・。私は捜操作して、そのスキルを選択する。
指導者。
自分のパラメータを大幅に下げ、奴隷、使い魔のパラメータを上げる事が出来る。
大幅に、という部分が不安だったけれど、どうやら自分で下げるパラメータを選べるらしい。その分だけ他の子の好きな物を上げられる。しかも、例えば私が合計千下げたとしたら、全員に千ずつ振り与えられるというものだった。
じゃあ。力と守備を最大まで下げる。魔法はいざという時の為に仕えるようにしておきたいからマジックパワーと魔法はそのまま。速さも、最悪それで逃げられるから。ダメージとスタミナを少しずつ下げよう。これで良いか。力と守備はもともと低いから、それだけだと全然他の子に振り分けられないんだもん、だからダメージとスタミナも下げた。
さて、次は振り割だ。
「じゃあ、マイはマジックパワーと魔法」
魔法使いのマイにはマジックパワーと魔法が一番良いだろう。よいところを伸ばす。
「シアンはダメージと守備、それからマジックパワー」
シアンはダメージと守備がとにかく低い。回復役なのでマジックパワーも少しだけど上げる。
「テオはスタミナと力」
スタミナは怪我をした子を戦場から連れ出してくれるテオに向いている。力は槍のため。
「セレスは速さと力」
弓使いのセレスは、命中率は異常なまでに高いが、早く撃てないのが難点だったのだ。
「ティーナはスタミナと速さ」
戦闘中、ずっと走りまわって攻撃をしてるティーナにはスタミナと速さだ。
「エリー。攻撃を頼むよ。全部力に」
攻撃力はエリーに託す。
「心花。作戦の指示、頼むよ。全部スタミナに」
何時でも余裕を持って戦場を見渡せるように。
「颯也。素早い攻撃で圧倒させて。全部速さに」
強い力を、圧倒的速度で相手に送る。
「そしてシルシィ! 魔法攻撃、頼んだよ!」
「お任せ下さい!」
全て魔法に振る。マジックパワーはもう余るほどある。
あと、兎はローリに振れば良いらしい。魔法と速さに振っておいた。猫はティーナに振ったから同じ分受け取ったらしい。
あとは、レベルあ上がった時、私のパラメータを私のものにするか、みんなに振るか。半分ずつにしておこう。
じゃあ、これで完了。ボタンを押すと。
「うわ、朱璃姉ちゃん!」
「全く、危険だなこれ」
「え?」
「急にダメージ・スタミナが下がったから、マスター倒れちゃったんですよ」
あ、そう言うこと・・・。って、あれ?! もうずいぶんレベル上がってるんだけど・・・。
「朱璃姉ちゃんが寝てた一時間三十分、俺たち魔物倒しまくってたから」
どんな速度で・・・。びっくりだよ。
まあともかく。ちょっと元気になったので私は起きあがってシルシィ、颯也と共に下に降りる。分かっていた。下から甘ぁい香りが漂って来ている事に。
セレスがそっと笑いながら、私にお皿を差しだした。
「マカロン、出来ましたよぉ」
「ありがとう」
一つ摘まんで齧る。さくり、という心地よい音。綺麗な歯型が付く。
マカロンって、なんでこんなに美味しいのかなぁ。周りはサクッと、中はふわっとしてる。そして、あの、クリームのねとっとした感じ。ふわっとした軽い甘み。ああ、堪らない。セレスが柔らかい笑みを浮かべる。
「本当に、好きですねぇ」
「うん、大好き。セレス、ありがとう」
「いえぇ。帰ってきたら真っ先に作るつもりでいたんですぅ。喜んでくれてなによりですよぉ」
セレスの笑顔は幸せに満ちている。あと一年で起こるであろうことについて、全部きれいさっぱり、忘れちゃったみたいだよ・・・。もちろん、そんなはず、無いけど。
向こうからエリーが飛んで来て、一つマカロンを摘むと、ニコッと笑う。
「うん、ごしゅじんさまの好きな味だー。間違いないの」
「だね。・・・ほんとは、蒼泉くんがいれば、よかったんだけど」
『・・・』
ああ、こんなこと言うんじゃなかったかな。みんな私の事を心配したように見つめている。
「ううん、いいの。その内、会えると思う」
私が呟くように言うと、みんな安心したように微笑んだ。
『もちろん』
なんだか・・・。確信があるかのような言い方だった。
私はベッドで、一人、考える。全てを繋ぎ合わせるには、まだいくつか足りないピースがあるようだ。とはいえ、だいぶ埋まっている。そろそろ思考を開始するのも、悪くない。
お母さん、お父さん。恵さん、潤さん。蒼泉くん、魔王様。それから養母の事もある。
もうちょっとで何か分かりそうなんだけどな。そう思った途端、今までにない頭痛。私は思わず声を漏らす。
「・・・、マスター?」
「し、シルシィ? 一体、どう、して」
「だ、大丈夫ですか? 顔色が悪いです」
シルシィは私の部屋に入って来て、頭に手を当て、「熱は無いです」という。
「ちょ、ちょっと待ってね。休めばすぐ落ち着く。でも、一体、どうして?」
「いや、何となく、気になったんです。なんでか、分かりませんが。それで、開けてみて・・・」
勘が鋭いようで。いつも通りだけど。あぁ、シルシィと喋ってたら落ち着いた。
「マスター、最近よくありますね、その頭痛。でも、思えば昔からあった様な・・・」
――?!
その瞬間だった。全て分かった。それだ、それなのだ。私の探し求めていたピース。
「ありがとう、シルシィ、全部分かった」
となれば、あれも・・・。なるほど、分かった。こういう事だったんだ。全部全部。最重要の鍵はこの『頭痛』。いつもいつも、私を悩ませた、これ。そして、『魔王様』。これで堂々と、魔王様に会えるよ!
「朱璃姉ちゃん、草原行くけど、ついてくるか?」
「え、何で草原?」
「ん、何となく。いつも行ってたから、かな」
そういう事で、全員で草原に行く事になった。今日は遊びに来ただけ。
ああ、なんだろう。すっごく落ち着く。自分の場所、って感じがする。そしてこの、弱い魔物ばかりというのが良い。攻撃されても何の問題もないくら・・・、指導者とったからダメだ。
そこで、ふと気が付いた。私、魔物使いを取ってるから、魔物だったら結構操れるはず。地面の生えてるそいつを一匹(?)引き抜いた。
「相変わらず、無駄に美少女だよね」
「ん? ああ、マンドラゴラもどき。でも、マスター、どうしたんですか、急に」
「いや? ただ、使えるのかな、って思って」
使い魔にしてみる。この子自体に戦う術はない。つまりレベルを上げられない。けど、私なら。使役スキルでこの子にも経験値が入る。その辺に居る魔物を魔法で倒した。
うん、問題ない。何にも出来ないけど、ちゃんと魔物なんだね。で、パラメータを確認。滅茶苦茶弱い。けど、スキル手に入ったし、これで問題ない。
「うん、じゃ、擬態スキル。うわ、必要スキルポイント高いなぁ。ねえシルシィ、沢山抜いて来て、今すぐ!」
「え? あ、はい。あ、シアンちゃん! 手伝って下さい!」
「? 何をですか?」
十本集めた。その子たちを抱いて、魔物を倒して回る。颯也たち、何処まで行ったんだろ。手伝って貰おうと思ったのに、って、わ。この経験値の入り方、ドラゴンだ。ドラゴン退治に行ってたのか。
スキルを振り分け、擬態できるようにし、それでもまだ弱いから変身させないで、レベル上げを行う。解放も出来る。けど、まだ弱い。あ、ドラゴン二体目。颯也たち何処行っちゃったの・・・。
「よし、もう良いかな。みんな、おっきくなって!」
『はーい!』
元々人型だもんね、そのまま大きくなったような感じだ。声はマンドラゴラもどきの時から出せた。
「可愛い。じゃあ、魔物倒していこっか」
『はい』
すっごく弱いけど、魔法が使える。何とか戦えるね。それと、良いところ。弱いからか、一瞬でレベルが上がる。レベルだけなら一瞬で私たちを超えちゃいそうだ。
「朱璃姉ちゃん! なんか急に経験値の入りが悪・・・、あ、なるほど」
「あ、颯也。ドラゴン三匹倒したでしょ?」
「うん。みんなで行って来たのー」
私とシルシィ、シアンちゃん以外はドラゴン狩りに行って来たらしい。今帰って来たところだ。
で、マンドラゴラもどきの美少女達を見て驚いたようだった。
「え、これ、あの、えっと」
「マンドラゴラもどきですよ、心花ちゃん」
「凄いにゃ! こんなことを思いついたシュリ様、流石にゃあ!」
他の子の経験値の入りが悪くなっちゃう事が難点だけど。結構使えるかも、これ。




