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第48話  マイシカ

「マイ・・・。俺の事、お、覚えてる・・・?」

「・・・・・・っ!」

「良かった、無事でっ! ん? 俺は平気だよ?」


 テオはマイシカちゃんをナデナデして大切そうに抱きしめた。マイシカちゃんは、真っ赤な顔でテオを見つめた。大きな瞳が、だんだんと潤んでくる。


「あれ? どうしたの? やだなぁ、俺は元気だって。こーんな良い主人に仕えてるしねー」

「て、テオっ! 私の何処が・・・っ?!」

「ね? ほら、いい子だからさ、安心して、俺たちの仲間になってよ」


 マイシカちゃんはこくっと頷いた。テオはそれを嬉しそうな顔で見ていた。

 まさか、こんなに早く見つかるなんて、思ってもいなかった。なんか、置いてかれちゃった気分だな。嬉しいんだけど、でも、でも・・・。


「あれ? シュリちゃん?」

「何でも無い。なーんでも無いよ!」

「ああはいはい。で、どうするんだい?」

「一応、朱璃がドラゴン鎮めてくれたから、私たち、もう帰るわよ」

「え、あ、じゃあ、エリー」

「んー? 家? じゃあ、みんな、集まって、かいもーん」



 家に入ろうとすると(ちゃっかり花凛と咲耶もいるけど)、ポストに何かはさまっているのが目に入った。手紙だ。それから、下に何か置いてある。どうやら、大きな箱のようだ。

 手紙をポストから取り出して差出人を確認する。悲鳴をあげそうになった。


「・・・っ! ま、魔王様」

「えっ? もう、ですか?」

「ちょ、ちょっと待ってね」


 まず、中を読んでみる。

『朱璃ちゃんへ

 こんにちは! はじめまして、朱璃ちゃん。魔王です。

 ・・・っていう自己紹介もおかしいけどね。

 まず、聞いてるとは思うけど、一回集まって貰おうと思うから、仲間集めはやりたいなら急いでね。

 此処で逃しちゃうと、暫く出来ないからね。まあ、朱璃ちゃん、だいぶいい感じみたいだから、平気かな。

 えぇと、日時は別に紙を入れてあるから。そっち見て。送った時と届いた時、タイムラグがどれくらいあるかわかんないけど、まあ、時間は結構ある思うから。まあ、一応、だからさ。

 服装は、朱璃ちゃんは送ったドレスでね。他の子は何でもいいよ。ちょっと早いと思うけど、大きさとか確認して欲しいからさ。もし合わなかったら送り返して。

 で。こっちは個人的なようなんだけどね・・・。終わってから、二人きりで話したい。もしかしたら、時間ないかもしれないけれど、出来ればね。

 じゃあ、あとは会って話そう。』


 で、箱を拾い上げてみる。中には・・・。え?


「えっと、ドレス・・・?」

『・・・は?』

「い、いや、だって、これ・・・」


 箱に入っているのは、何処からどう見てもフリフリの赤いドレス。え、これ、何?

 それを見て、花凛と咲耶が顔を見合わせる。私たちにも届いてるかな、って感じだろうか。

 で? これ、私の分だよね。この子たちは? 何でも良いっていうけれど・・・。何でもっ知恵うのが一番難しいんだよ。


「心花、この、期限までに、みんなの分、メイド服と執事っぽく見えるようなスーツ作れる?」

「あぁ、その方が合いますかね・・・。問題ありませんよ。お安いご用です」

「じゃ、それでいいね。で、二人はいつ帰るわけ?」

「ちゃっかりお昼ご飯食べて行こうかと!」

「だろうね・・・。でも、まだ時間あるじゃん」


 つまり家に居座るわけだ。これ、なんだよ。だんだん増えてくんだもん。あ、これ、フラグ?

 え、まずいかな? 増える・・・かな? そう言えば、ティーナの時も・・・。

 ああもう! 大急ぎで買い出し行かなきゃ! いや、行くのは私じゃないけど。


「シアンちゃん、マイシカちゃん、家はこの通り人数が凄く多い。結構適当だけど、許してね?」

「あ、ひっ、はい!」

 マイシカちゃんも頷いた。


 家が狭い、っていうか、人数が多いのか。今だってもう、お城の晩餐会みたいになっちゃうし、だいたい、大皿を真ん中に置いたところで届かない。一人ずつ分けておいてる。

 けど、シアンちゃんやマイシカちゃんは得意苦手が分かんないし・・・。まあいっか。


「で、二人は何が食べたいのかな?」

「あはは、朱璃はやっぱり優しいね。けど、心花ちゃんの料理なら何でも良いよ」

「私も同じく」


 あ、そう。心花を見ると、「まかせて!」といった風にウインクを打った。問題ないな。

 兎たちは心花の言ったものの買い出しに行くようだ。ぞろぞろと家を出ていく。みんなで行く必要ないのにな。


「さて。シアンちゃん、苦手な物とかある?」

「えっ、苦手な物?」

「食べ物」

「いや、特には・・・」


 テオを見ると、多分ないよー、なんて言っていた。まあ、テオがそう言うなら、マイシカちゃんは問題ないか。

 で、次。さっきのは別にたいした問題じゃなかったしね。


「一応、みんな、家の子は私の奴隷。二人も、それでいいのかな?」

「わ、私は大丈夫です!」

「・・・。マイも問題ないよ」


 じゃ、あとで奴隷商行かないと。ちょっとお金かかるけどね。それくらいどうってことない。

 あと、もうひとつ。さっきから、颯也が待ってるし。


「此処ではね、みんな、好きに呼んでるんだけど・・・。私、二人の事、呼び捨てでも平気かな?」

「あっ! 良いですよ、お願いします」

 マイシカちゃんも頷く。じゃ。

「シアン、マイ、よろしくね」


 で、一応みんながなんて呼ばれているのかは説明。分かっていないかもしれないので、名前も伝えておく。

 二人は頷きながら聞いてくれた。熱心で良い事だ。テオとは違うねー、なんて言ってやる。


「シュリちゃん、午後はどうするの?」

「レベル上げに行こう。けど、その前にほら、つけて貰わないと」

「あ、そっか。うん、じゃあ、行こう」



 奴隷の魔法陣をつけて貰って、私たちはいつも通りレベル上げに行く。二人にはさっさとお引き取り願った。シアンとマイは、次々にレベルが上がっていく感覚に驚いているかのようだった。

 もう随分上がったな、というところで引き上げる事にした。今日は二人の為に、ちょっとウォーミングアップ程度しか戦っていない。エリーなんかは戦い足りないみたいだけれど、二人の事を考えて、きちんと言う事を聞いてくれた。


「・・・。ねえ、みんな、先帰ってて」

「? なんで、ですか?」

「い、いや、ちょっと・・・」


 何となく、あの、雅さんに起こされちゃった、あの時の夢の景色と、よく似ている。もしかしたら、って思った。

 ゆっくり歩いていると、日が沈んでいくのが随分早く感じられる。キラキラと光ってとっても綺麗。

 目を細めて眺めていると、急に少しクラっとした。あっと思った時、誰かが私をそっと抱きとめた。


「?! あ、テオ?」

「もう、シュリちゃん、何やってるの?」

「え、あ、いや・・・」

「気づいてないんでしょ? 熱あるけれど。それとも、無視してる?」

「・・・。そうかな、とは思ってても、口に出したら、みんなが心配するもの」


 テオははぁ、と溜息を吐いて私の隣を歩きだす。私も順従にそれに従って付いて行く。

 ずっと、私を見張ってたのかな。私、気付かなかったけど、馬車から降りた時、あの時すでに私の事をつけてたんだよね。


「シュリちゃんは無茶し過ぎだよ。見てて怖い」

「そう・・・。そうかな。私、そんなつもりはないけれど」

「嘘だ。みんな、自分より小さいから、心配かけないようにしてるでしょ」

「・・・。そうかもしれない。でも・・・」

「もう! シュリちゃんはほんっとに馬鹿だなぁ」


 ?! え、嘘! ちょ、ま・・・。いきなり馬鹿ってないでしょ!

 私がぐるぐるしていると、テオは笑って私の背中を軽くたたいた。


「みんなの方がもう強いんだよ? 無茶しちゃだめ。その方が、みんなも安心するよ。

 シュリちゃんが体調悪い時、みんな、気がついてるからね? 気が気じゃない、って感じだったもん。だから、はっきり言って休んで!」

「テオ・・・。そう、だったの? ・・・。みんな、何時までも子供じゃない」

「そうそう。だからね、今日からはそうして。で。早く帰ろうか。みんな心配するからね」



「・・・あれ? みんな、どうしたの?」

「いやぁ・・・。ちょっと、朱璃姉ちゃん待ってた方が良い状況で・・・」

「? どういう事?」

「ちょっと・・・。まずは、これ見てくれますか?」


 ええと、これは何? 手紙、かな。今日は随分良く手紙が届く。

 花凛からか。手紙を開けてみると、中には、こう書かれていた。


『朱璃へ。

 家に帰ったら、同じく、ドレスと手紙が入っていました。十ヶ月後、ですね。幾らなんでも早すぎますが・・・。まあ、とにかく一緒に行きましょうね。当日、迎えに行きますから』


「これの何処が、待ってる必要あるの?」

「違うんだ・・・。玄関、よく見てくれないか?」

「ん・・・。え、えぇ?!」


 まさか・・・。いや、そうとしか考えられない。

 どうやら、花凛は全員分のドレスを届けてくれたらしい。何が起きているのか分からないけれど・・・。そうだろうね・・・。


「えっと、これ、流石に悪くない?」

「花凛さん、きっと、マスターに、本気で謝りたいって思ってるんですよ」

「いや、でも、やり過ぎだよ・・・」

「ま、まあ、受け取っておきましょう。着ないのも悪いですし」


 な、なんだかなぁ・・・。花凛っていろいろ変ってるよね・・・。



 もう魔王様と会うのか・・・。ずっと後の事だと思ってたのに。早いなぁ。

 いざ、こうやってその時間が迫っているとなると、楽しみというより、恐怖の方が大きくなってくる。

 もし、魔王様が、全く別人だったら? 望みが、無くなってしまう。それが、怖い・・・。


「・・・」

「・・・マスター? 怖いんですか?」

「え?」

「いや、そんな気が・・・。あの、何か、心配事が?」

「ううん、大丈夫だよ。ただ、魔王様、どんな人かなって」


 はぁ・・・。そうか。こうやって、いつも、みんなを騙してきたんだ。やっぱり、不自然だ。気づかれてもおかしくない。まして、毎日一緒に居るのだから。

 テオをちらりと見ると、困ったように笑った。それから、視線に気づいてマイを撫でた。



 でも、本当に、魔王様、蒼泉くんなのかな。雰囲気とか、喋り方とかは、似てる気がする。それみ、あの、二人きりで話したいっていうのも、そうなんだろう、って、思う。けど。

 私、こんなに経って。蒼泉くんを見分ける自信が無いよ・・・。あんまり、はっきり顔も思い出せないの・・・。

 それと、最近気がついたんだけれど、両親の顔を、一切思い出せない。そこだけ霞んでしまったかのように、顔だけ思い出せない。思い出そうとすると、酷い頭痛に襲われるから、これ以上、どうする事も出来ない。


 なんでなんだろう・・・。お父様もお母様も、大好きだったんだよ、私。なのに、なのに・・・。

 あんまり考え過ぎると、涙が零れてしまう。寝てしまおうと思ったけれど、それも出来ない。

 結局、この日は、全く眠れず夜が明けた。

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